2006年6月16日金曜日

真柏の重心移動

たった1年間の、ちょっとした工夫と努力で盆栽はこれくらい変ります


昨年秋 整枝前の姿 現在の姿

唯一最大のポイントは、左方向にあった頭の位置(赤印)を思い切って右に移動したことです

つまり、「盆栽の重心の移動」を行ったのです
これって大切なことですよ

整枝前の画像だけを見ていると案外に気がつかないでしょが
やはり左方向に張り出した幹の流れに緊張感が足りなかったのです

いかがですか?

これにより

・整枝前より幹の力が強調され迫力が出た
・左右の幅が詰まり空間の緊張感が増した
・向かって右側面から後ろ枝がのぞいき奥行きが出て、より風格が感じられるようになった

もし以前の姿のままで右に後ろ枝をのぞかせたならば
全体の姿がダレタ感じとなり緊張感が失われます

枝葉末節よりも骨格の強調、そして緊張感と迫力のある構図
これを見抜く力を養いましょう

「盆栽の重心の移動」
この言葉、覚えてください

なお、真柏の鉢については、濃い緑の葉との調和のいい朱泥の鉢が好まれます
盆栽の写真帖などを参考にしてください

2006年6月10日土曜日

鉢の傷について

インターネット取引の時代になり
「鉢の傷」についての認識にかなりの個人差が出てきました

「もの」を目の前にした以前の取引では
「ここにチョットしたホツレがあるけど、あまり気にしなくてもいいでしょう」くらいの

盆栽屋一流の雑な説明で済みましたが
画像を通じてはそう簡単にはいきません

どこまでを傷と表現すべきかの判断
さらに、画像ではわかりにくい大きさや深さなどの補足説明、これも案外難しいものです

微妙な欠点の場合、プロ同士であれば、「実物を見て自分で判断してください」などと
買い手側の判断に委ねてしまう「無責任な方法」もあるんですが・・・

まさか愛好家さんに向かってそうはいきません
納得のいく認識と説明はプロの責任として絶対に必要なことです

それについて、ある若手の業者が言いました
「中古車の査定のようなマニュアル作りをしたら、より正確な評価が出るんじゃない」

確かに欠点について細かく減点方式で定めを作るのは、一つの方法ではありますが

盆栽鉢は時代を尊び古さを愛でる総合美の世界であって
出来立ての新品が価格の出発点である車とはかなり性質が違いますね

「業界に鑑定委員会を作りましょうよ、宮本さん、まとめてよ」
と言われたこともあります

しかし、仮に親しい人の依頼品であったら・・・
万全の自信はありませんね、正直言って、自分の品に厳しい姿勢で臨むことの方がより容易に思えます

ともかく、傷についての正確な情報を伝えられる努力と研鑽を摘むことによって、盆栽界がより成熟し
その先に新しい約束事が築かれることを願っています


大正時代に中国で製作された紫泥袋式楕円鉢


側面よりの全体図


一方の正面の縁にホツ(大きさ深さとも1ミリ以内)が1箇所見られます
ニューはなし


足にも少々のホツが見られます
ごく古くにできたもので傷の上に時代がのっているほどです
(足の傷は縁などの傷よりも軽微とされます)


大正時代に中国で製作された紫泥袋式楕円鉢


土目の輝きを拡大してみました


側面の縁にホツ(大きさ深さとも1ミリ以内)が1箇所見られます
ニューはなし

製作から1世紀を経てこれほどに使い込まれた鉢には
たいていの場合、これくらいの微細な欠点が存在します

ただし、欠点は欠点ですね
これら以上に時代感があって無傷完品の鉢は存在します

しかし、現代鉢と異なり100年の歳月を経た時代ものです
鑑賞を主たる目的とせず、その風格を重んじ実用鉢として再評価をしていきましょう

2006年6月9日金曜日

一石五彩鉢鑑賞

一昔前、一足違いで買い逃がした懐かしい一対鉢を手に入れることができました
機嫌は上々!

同じ寸法、同じ形、さらに同じ図柄の五彩と呉須の一対とは
ほんとうに珍しいですね

他の作家でもこのように同じ図柄の一対鉢は記憶がありませんが
ともかく、一石はしゃれた趣向を思いついたものです


一石独特の柔和な感じの乳白色のボディーに鮮やかな色彩で描いた山水画
構図も一石らしく大胆で筆致も繊細で端正です

この小さな、それも、木瓜式の曲面に絵を描くことはとても難しいと聞きますが
さすが名人・一石は画面に少しの乱れもありません

大胆な構図と繊細なタッチに加え
遠景から中景そして近景へと、巧みに描き分けた技量はみごとです




正面の拡大図

黒の輪郭線が強すぎず弱すぎず、繊細でしかも凛としているために
緑、青、赤、黄などの色彩が尚一層鮮やかに見えるのです


反対正面
のどかな牧歌的雰囲気が感じられるのも一石画の特徴です


側面も手を抜いていません


反対の側面は余白をとり巧みに画面のつながりをつけています

いいですね、一石は!!

では

2006年6月5日月曜日

均窯の魅力

支那鉢の中でも特に人気の高い「均窯」についてのお話です

盆栽界において長年の間、「均窯・きんよう」という名で呼ばれてきた鮮やかな空色の釉薬

近年では「均窯」とは中国の特定の窯の名であることがわかり、「均釉・きんゆう」と表現されるよう改められていますが
やはり長年の慣習に従い盆栽屋の多くは「きんよう」と発音しています

私も「均窯・きんよう」派ですが
あまりこだわる必要はないでしょう



北京の故宮博物院展が日本で開かれたときに「宋均窯・そうきんよう」の小鉢を観ました
それも堅牢な感じのする、光沢あるの鮮やかな空色でした

現在盆栽界で珍重されている均窯の鉢のほとんどは
清朝末期に日本からの製作依頼により焼かれたもので100年ほどの年月を経たものです

「均窯」と一口に呼ばれるものでも色調により区別され
空色の「均窯」、黄色の「黄均窯・ききんよう」、草色の「草均窯・くさきんよう」、白色の「白均窯・しろきんよう」

さらに、椿の葉のような深い緑色は「椿窯・ちんよう」
お月様のような青味がかった白色を「月白均窯・げっぱくきんよう」などと微妙な表現をします

やはり日本人の自然に対する感覚とその表現はデリケートです



土目によっても発色がやや異なります
この均窯のように固い朱泥の場合がもっとも発色が鮮やかです

拡大図を見ると釉薬の表面が堅牢なガラス質に覆われてるのがわかりますね
均窯の光沢のある色彩はここからきます

長年の使い込みにより表面のガラス質に無数の細かい磨り傷がつき
渋みが雅味となり風格を高めていますね

このように長い年月の使い込みに耐えうるだけの焼きの固さと釉薬の堅牢さと光沢
これが支那鉢の凄いところです



鉢裏にも釉薬が施され、一層の高級感がありますね
ちなみに、このように鉢裏にも釉薬が施されている場合は、裏釉(うらぐすり」が掛かっている鉢と表現されます

支那鉢の均窯鉢の魅力
少しは分かっていただけましたか?

では

2006年6月2日金曜日

作る・出猩々もみじ(途中経過)

4/23の時点ではチクンとほんのわずかな紅い点に見えていた、新しい芯に予定している新芽

一ヶ月の間に順調に数cm伸びてきました


少しずつですが肥料もやりました


拡大図です
将来は不要になる頭の部分は勢いを抑えるため葉刈りをします
これで頭へ向かっていた養分が下の新芽へと廻っていきますね


もっと拡大

頭のごちゃごちゃした箇所は切りたいのはやまやまですが、じっと我慢
新しい芽がまだ木質化していませんね

今年一杯はぐんぐん伸ばして来春に切り戻す計画です
それまで精一杯に樹勢をつけます