2003年7月31日木曜日

楓夏の葉切り

本格的な夏の到来です
この季節をうまく乗り切れば、楽しい秋がやってきます
反対に水切れで葉をボロボロにしたり
せっかく成った実を落としてしまうと、がっかりしますね

人間と同じで、夏場に体調を上手に維持して「天高く馬肥ゆる秋」を迎えたいものです
そのためには一にも二にも「水」です

冬に落葉する雑木や実もの花もの、鉢の小さなもの、しばらく植え替えていないものなどは
早めに西日の切れる場所に移したり
二重鉢や浅めの箱に砂を引いてそこに鉢を移すなど、水切れを防ぐ工夫をします

松柏類はその必要はありません
どんどん日に当てて力をつけてやります
過保護はかえってよくありません

水やり対策ができればあとはいろいろな技法で積極的な培養をしていきます
その一つが雑木の葉切りです


葉刈り後、再び新芽が伸びてきました


徒長した芽は一節か二節で切ります
節の数を目で数えながら、ていねいに


次に、大きくなった外側の葉の面積を減らします
つまりハサミで葉を半分くらいに小さく切るのです


葉柄の元に半分の大きさになった葉が残っています
形はどのようにしてもよろしい
これが葉切りです

葉切りの目的は
1 陽射しと風通しをよくして、ふところ枝や芽の生育を助ける
  (ふところ枝とは輪郭線の内側の短い枝や芽のことをいいます)
2 葉の面積を減らして木の勢いを制御する
3 水分の蒸発を制御する

ぜひ実行してください
雑木の小枝作りには効果抜群です


さっぱりしました
これで夏場対策はバッチリです
落葉後の小枝の充実にその効果を見ることができます

2003年7月30日水曜日

小鉢収集心得1

盆栽界には小鉢の魅力にとり憑かれた人がたくさんいます
それは愛好家だけに限ったことではなく業者でも同じです

私の周囲にも何人かの小鉢愛好家(アマもプロも)がいて
鉢の話になると何時間でも話がつきない
男同士だって鉢の話だと長電話をしますよ

さて、みなさんが小鉢の収集をするに当たっての心得をお話しましょう
ちょっとした心がけで道が通りやすく遠回りしないですみます

とっかかれば一冊の本になるほどの内容ですから
折に触れて書いていきます
今日はその第1編です


藤掛雄山作
錦手外縁隅入熨斗鮑図六角樹盆(にしきで・そとえん・すみいり・のしあわびず・ろっかく・じゅぼん)


月香作
亀甲紋入丸型樹盆(きっこうもんいり・まるがた・じゅぼん)

心得
 
1) 信頼できる先輩や業者などを見つける
   これはどの道でも同じですが、特に小鉢の道には真贋がついて回ります
   複製品として承知でそれなりの価格で購入するのは、かえって勉強になりますが
   掴まされたので気分的にもマイナスです
2) 優れた作品に接する
   先人の厳しい評価を潜り抜けて生き残った作者や作品は価値が有ります
   展示会や写真集で勉強しましょう

まず↑の二つを心がけてください
その上で目の前の小鉢がその作家の作品のうち
どのあたりのランクに属するかを判定できれば、一人前に近くなります
 
例えば頒布コーナーに掲載した上の2鉢ですが
おのおの作品群の中で

この寸法の作品は稀少だ
形も珍しい
色を使った作品は珍しい
出来がよい
品格がある
などの理由でAランクの作品です

あとは自分の好みも大切です
どんなによくったって、自分の好みでなければ何の価値も有りません
その感覚に素直に従うのが趣味の道です

随時お話していきますので楽しみにしてください
ご相談メールも遠慮なく!

2003年7月27日日曜日

懐かしのミニ盆栽


イボタのミニ盆栽(過去の頒布コーナーより)

過去の頒布コナーの画像の整理をしていたら、懐かしいイボタが出てきました
たしか東京の愛好家の方が放出されたものの中の一鉢です

25鉢ほどまとめて頒布コーナーに掲載した記憶があります
山もみじにもいいものが混じっていて、今でも私のPCのどこかに保存されているはずです

それにしても、力まず無理せず「自然体」に作りこんでします
ミニ盆栽のお手本のような木です

針金に頼らない時間のかかるハサミ作りですから
枝に自然の「ゆすり」があり、枝元から順に細い梢となりゆく様子は
ほんとうに味わい深いですね

鉢はやや大きめで映っているとは言えませんが
お仕事の都合で傷めないように、わざわざ大きい鉢に植えなおしたと聞きました
そうでしょう
これほどの腕前の方なら鉢映りの技も会得していたでしょう

この優れもののイボタ君、元気でいますかー?
そう呼びかけたいほど懐かしくなりました

みなさんの盆栽作りのお手本になります

2003年7月26日土曜日

鉢の正式名称


この鉢は平安東福寺のそっくりさんです
おっとそれは後にして、今日のテーマは鉢の正式名称の勉強です

鉢の名称の正式な呼び方を覚えてください

まず作者の名前からいきます
平安東福寺

次に釉薬の名前を明記
平安東福寺・高取釉(たかとりゆう)

鉢の形は上からです、まず縁の形
平安東福寺・高取釉・外縁(そとえん)

次はボディーの形ですが、このようにオーソドックスなものは普通は明記しません
それでは足の形にいきます、二段になった切足ですから
平安東福寺・高取釉・外縁・二段切足(にだんきりあし)

最後に全体の形です
平安東福寺・高取釉・外縁・二段切足・長方(ちょうほう)といきます

それをつなげると
平安東福寺高取釉外縁二段切足長方樹盆
(へいあんとうふくじ・たかとりゆう・そとえん・にだんきりあし・ちょうほう・じゅぼん)

と少々長ったらしくなりますが、慣れた人同士だとこれに寸法を加えれば
頭の中に大体の予想図が描けます

機会あるごとに正式名称を添付するように心がけますから
みなさんもしっかり覚えてください
専門家になったようで気持ちがいいですよ


福岡県の高取焼はあまりにも有名です
東福寺もよく高取風の釉薬を用いました

この鉢は複製品ですが
釉薬、形、足のつくりなど 東福寺の特徴をよく掴んでいて
一目ではそれと分からないほどそっくりです

よーく注意して眺めると、雰囲気にやや違和感があります
東福寺鉢特有の手触りやわらかさが不足気味で
角張った感じです

鑑定に際し、そんな直感めいた感覚も大切な武器になります
そのへん、分かっていただけるかな?


やや上方から


落款は楕円の中に「東福寺」
有名な「わらじ落款」です
きれいに捺されています

いいですか、落款だけを頼りに鑑定してはいけません
落款は鑑定の一要素に過ぎません
肝に銘じてください

2003年7月25日金曜日

仕入れは命

今日は朝早くから仕入れに出かけました
私は昔から仕入れにかけてはマメなほうです

仕入れを怠けていると腕(目)がなってくるような気がしてきます
仕入れは盆栽屋の命なんですね
筋のいいものに出会ったときは、何年盆栽屋をやっていても嬉しい

そんな日は帰路の車の運転も苦にならないで
信号待ちの間に盆栽や小鉢を手にとって眺めていて
信号が青になっているのに気がつかず
後ろからクラクションを鳴らされることもしょっちゅうです

幸い今日もそんな嬉しい日になったので、数回鳴らされました
それでは今日の収穫を紹介します


(獅子頭もみじ)
取り木して3年は経っていて、堂々とした幹筋です
枝の張り具合もいい
将来の大物君です

来春鉢を替えればもっと男っぷりが上がるでしょう
二の枝が弱いので2~3年徒長させれば勢いがついて太くなります
いい買い物でした
それに予想以上に値切れました

相手の言い値が安い時はどんどん値切れ!!
これは私の仕入れの鉄則です


(平安東福寺鉢)
青味がかった海鼠(なまこ)釉の出来のいい東福寺
東福寺の場合、小さい鉢は手捻り鉢が多いのですが
これは普通のタタラ作り、珍しい
使いやすい鉢です


(平安香山鉢)
香山の白い薬の長方鉢
銀色がかったこの釉薬は香山独特のものです
これはいける、少々ホツがあるけど、その分値切りました

香山は東福寺の鉢作家の先輩です
初期のころ、東福寺は香山から影響も受けています
「はやく香山さんのようないい鉢を作れるようになりたいものだ」と言っていたそうで
東福寺は香山を尊敬していました


(竹本隼太鉢)
好きなんだなー竹本が!
いまや竹本鉢は盆栽鉢の古典です

竹本鉢を見ると、30数年の間に私が手を触れた(売買した)竹本鉢の数々の名品を思い出します
盆栽屋は売らなきゃご飯がたべられないから切ないですね
今でも忘れられないものがたくさんありますよ
ぐやしィー


(平安東福寺水滴)
それにしても東福寺はいろんなものを作りました
抹茶茶碗、ぐい飲み、急須、一輪挿し
だけど水滴(硯の水差し)は初めてお目にかかります
いい出来です
デザインが斬新です

以上5点が今日の買い物
朝早かったので午後2時ごろには帰宅しました
ご機嫌よし!!

2003年7月24日木曜日

けやき葉切り

けやきの培養法で、芽摘みや葉刈りや一般的に知られていますが
葉切りの技法も、ふところ芽の保護や樹勢の制御として有効な手段です


葉切りをしたけやきの姿
芽摘みだけでは、外側の葉に隠れた内側のふところ芽が弱りますから
葉刈りをかけて、その後葉が出揃い固まった時点で、大きめの葉を半分くらいに切ります

けやきの場合は年に一回の葉刈が普通ですから
この葉切りの技法を併用しましょう

これでふところに日と風が入り、ふところ芽が元気になりますし
芽先に勢いが集中してごつくなるのを防げます

是非実行してください
なお、もみじやブナなどにも適用すれば効果があります


葉面の面積の約半分を切ります
切った痕が見えますね

2003年7月23日水曜日

中国古鉢


中国古鉢・黄均釉切立長方樹盆(ききんよう・きったち・ちょうほう・じゅぼん)

100年以上前に中国で作られた小鉢です
切立とはきったち、きったてなどと呼び、縁の形を表していて
縁が外側にも内側にも向かず、写真のように真っ直ぐなものをいいます

長年の使い込みで渋い時代が出ていて
100もの長い間使用され、よくここまで保存されてきたと思います

派手な黄色の鉢が、この渋さを帯びるまでは大変な年月がかかります
その間に傷をつけないように大切にしてきたんですね
先人の愛情に感謝しなければなりません

この時代感なら渋い盆栽を入れても違和感は感じないでしょう
盆栽をさらに引き立てる役目を十分に果せます

古いものはいいですね!

2003年7月22日火曜日

夜の交換会


(竹本隼太・たけもとはやた)作 飴釉下方鉢(あめゆうげほうはち)
間口2.8×2.8×高さ3.4cm

夜の交換会を夜会(やかい)といい
朝早くから始る通常のオークションと違って夕方に集まり
一杯飲んで夕食を食べてから始るので、遊びの雰囲気が濃厚です

みなさんがテレビでナイターでも観ながら晩酌している時間ですから
盆栽屋だって、浮かれて売ったり買ったりしてしまいます

今夜は東京で夜会でした
セリ人は私

通常は会費(食事込み)で¥1,000が通り相場ですが
この夜会は¥3,000で飲み放題、食事は特上のばらちらし寿司
いける人はけっこう飲んでご機嫌さん
(飲酒運転する人はいませんね、飲みたい人はそれぞれに工夫してます)

私はセリをやるときはアルコールはやりません
飲んで大きな声を出すと、商売道具の大事な喉がつぶれてしまうからです

遊びでの雰囲気ですから、相場もけっこうめちゃくちゃな時もあって
それがかえって楽しいもんです
冗談(ほとんど駄洒落ですが)と笑いが絶えません

盆栽屋もたまには採算を度外視して、道楽したいんですね
夜会の雰囲気をみるとつくづくそう思いますし
我々は盆栽や小鉢を愛しているんだなーと実感するのも、こんな時です

↑の写真の小鉢は今夜の夜会で買ったものです
竹本隼人は大身(4千石)の旗本で、維新後は陶芸家として活躍した変り種で
彼の作品は珍品として盆栽界の古典として非常な人気があります

夜中の帰宅でしたが、夜会の雰囲気のよさと
この珍鉢を買えたために、酒も飲まずにご機嫌さんの私でした

2003年7月21日月曜日

東福寺鑑定団

盆栽界で最も名が知れて人気のある鉢といえば
10人が10人、平安東福寺と答えるでしょう

さてその東福寺鉢の手捻り鉢の鑑定を勉強しましょう
落款は小さくてスキャナーでもはっきり読み取れないので
外見からわかるポイントを数箇所お話します


本歌(ほんか・本物のこと)以下同じ

A’
複製品

↑の二つは同じように見えますね
複製品もかなりよくできています
本歌にも似たような土目のものもあります

Aの方が手捻りらしい温かみと柔らかさが感じられること、がポイントです
しかし、この角度からは間違えそうです!



B’
↑の二つの鉢の内側にポイントあり!
Bの方は手捻りの一発仕上げ
B’はヘラで削った痕があります
ほとんどの東福寺の手捻り鉢は、指だけ使った一発仕上げです



C’
↑の二つの鉢裏を観察
ここにも重要なポイントがありました

Cの富士山のような山形の裾野の部分はヘラで手早く切り取ったもの
C’の裾野は切れ味がいまいち

それに裾野の元には横線がありますね
東福寺はCのように後から修正しないでそのまんま

C’は線の痕を撫でて消しています
ここは最大のポイントです!

みなさん、よく観察して覚えてくださいね

2003年7月15日火曜日

東福寺鉢複製品

平安東福寺ほど盆栽界に名前が知られている鉢作家はいないでしょう

東福寺鉢の特徴はその土、釉薬、形、大きさなどの多彩さです
大きさは、指先ほどのものから、大きいものでは間口70cmくらいのものまであります

貧しいゆえ生涯自分の窯を持てなかった悲劇の人ですから
土も釉薬も「借りる窯」の特徴に合わせていろいろに使い分けたといいますし
師のない独学ゆえか作風もおおらかで、形も非常に多彩です
従来長く多作の人で作陶期間も長かったので、かなりの作品を世に出しています

そんなわけで複製品を作りやすい作家であり、作っても勘定がひきあうのです
没後から現在に至るまで複製品はかなりの数が出回っています
これが自分のスタイルが一定しており寡作の作家ですと
複製品を作るのが非常に難しいのです

複製品も様々で、笑っちゃうような稚拙なものから
一見本物と識別しがたいような出来栄えのものまであります
その点では愛好家泣かせの作家ですね

ともあれ、複製品が多いということは、人気が高く、高価で流通しているということです

盆栽小鉢の収集をしようとする愛好家の方は、平安東福寺鉢を避けては通れません
是非とも真贋鑑定を含めた鑑賞眼を養ってください、これは必須科目です

前置きが長くなりました、それでは本題に入ります


瑠璃色の手捻り楕円の複製品です(間口12.4×奥行11.5)

東福寺はこの瑠璃色を好んで作りました
本物に近い釉薬の色合いが出ています

素朴な手捻りのイメージもかなり似ています
縁のあたりに少し力がないかな?そう思います

正面から見た足のつけ方も正解に近い

この角度から見るとかなりの出来栄えで、本物に間違えます


この蕎麦色の楕円鉢も上の瑠璃と同じ作家でしょう
この角度から見ては本物に見えます


落款は両方とも同じです
楕円の中に東福寺とあります
業界ではまるで符丁のように「ワラジ落款」と呼びます
東福寺はいろいろな落款を用いたので、符丁で呼ぶと便利です

「東福寺のワラジ落款」、とくればベテランです
みなさんも使ってみてください(プロに一目置かれますよ)

また話がそれました!本題へ戻ります

落款は本物から型で写し取れます
ですから、これだけを見て東福寺だと思い込むのは失敗の元
東福寺本人の落款はほとんど圧力が一定できれいです
この鉢の落款もきれいに決まっていますね

ということで落款では見分けがつきにくいことがわかりました


足の検証もへ移ります
足は形、線、へらの使い方など東福寺本人の手の痕跡が色濃く残っている箇所です

さて、ここでしっくりとしない線に出会いました
足に沿った内側の曲線です

東福寺鉢は「手早く」仕上げた感じですが特徴ですが
この複製品の線はサット仕上げた感じがなく、ややもたついていています
これは注目すべき点です

下は拡大図


両方の足を比べると線の感じも異なります
東福寺本人と複製品を作った人の技量の違いが、意外なところに現れてしまいました

さて大切な土の検証をしてみましょう

陶芸において土は命です、そして焼き物の誕生の地の印です
ということは作家の名刺のようなものです

幾通りかの土を使う作家でも、経験を積むとそのパターンが飲み込めてきます
本物の東福寺は似た土は使っていますが、微妙に異なります
これは東福寺の土ではありません

総合的に判断して、この2つの鉢は複製品です

リサイクル

「リサイクル」をカタカナ辞典で引くと再生利用の意味もあります

とすると、盆栽屋はリサイクルショップですね
一見不用になったものを再生して販売することもありますから

取り木はリサイクルのもっとも有効な手段です
勘所をおぼえると非常にお得です

おもに雑木類や花物実物類に施す手術で
5月中旬から6月中旬頃に行います

適応樹種は
もみじ類、楓、けやき、にれけやき、いぼた、ピラカンサ、えご、かりん、えのきなど
かなりの樹種に可能で、しかも簡単です

今回は山もみじの頭がごつくなってしまった素材に
挑戦してみます


頭に勢いがつき過ぎてごらんのように、始末がつきません
こんな素材なら安く買えますね

よく点検してみると
取り木で仕立てたもので根張り、幹筋、枝つきなど
頭の部分以外はかなりの素材

頭の部分は数本の角が出たように株立ち状になっている

そこで、下の幹の部分を活かして再生させ
頭の部分は取り木してミニの株立ちをゲットする

という欲張った前提で更に検証してみます


今までの正面からの検証

まともに取り木をかけるとミニの株立ちが作れますが
残された親木は頭の作りようがなくなります
新しい芯を作るための芽や小枝が見当たりません

そこでひとまず取り木の方はあきらめて、親木の改作後の姿を模索してみます
図のように切ることは可能です
幹の流れが左へ傾くのが気になりますが、ここなら芽吹きも期待できますし
出た芽を右方向へ誘導してまとめることも可能です


裏面からの検証

指で押さえた枝の枝元(幹から5ミリくらいのところ)に芽が吹きそうです
吹いた芽を二年くらい徒長させれば幹のコケ順も調和がとれるし、傷口の肉巻きも早まります
それに向かって右にも枝があるで、条件は最高です


頭のごつい部分を切った想像図
足元よーし
枝順よーし
傷口は大きいけれど、右の枝あるので肉巻きは心配要りません
左の枝の5ミリほど先に節があります
底に吹いた芽を徒長させて新しい芯にします

現在の樹高は14センチですが
完成時には樹高約8センチ、幹の直径2.5センチの
ミニ盆栽ができます


ところで頭の部分は事前に取り木をかけ、根元が甲羅状の株立ちをゲットします

来春彼岸ごろ親木を大きめの仕立鉢に移す
来年5月中旬に取り木
同6月下旬に親木から切り離し(次の春でもよし)
同時に親木を5図のように施術します(上に同じ)

1÷2=2です
答えの2が出世すれば5にも10にもなります
豊かな気分になりますねー!
(このままでは山もみじの樹格向上は望めません)
思い切って挑戦するっきゃない!

2003年7月12日土曜日

戦前の盆栽樹種2

同じく「第15回国風盆栽展記念帖」より国風盆栽会 副会長 伯爵 酒井忠正氏の出品作品の二席です
昭和16年11月27日~30日に上野公園東京府美術館で開催


向かって右より

上段
遠山石(とおやまいし)


中段
小蘗(しょうびゃく)
落霜紅(うめもどき)

下段
真柏(しんぱく)
黄金羊歯(こがねしだ)

この席も一般的に知られた樹種です


向かって右より

上段

杜松(としょう)

中段
紅山査子(べにさんざし)
縮緬葛(ちりめんかつら)
寒蕨(かんわらび)

下段
宮様楓(みやさまかえで)
五葉松(ごようまつ)

この席も一般的に知られた樹種ですが
山査子(さんざし)を漢字で表記しています

宮様楓は戦前から盆栽として仕立てられていたんですね
もっとも名前の由来は、どこかの宮家の庭に植わっていたことから
そう呼ばれるよになったと云われています

縮緬葛(ちりめんかつら)のかつらは今では桂の字を使いますね
ここが一番印象に残りました

ということで、半世紀以上昔の戦前と現代の盆栽樹種はほとんど同じでした
(安心したような物足りないような複雑な気持ちですね)

この二項の検証で、現代の盆栽界で愛培されているほとんどの樹種が
戦前にはすでに一般的に愛好されていたがわかりました

それと、植物名がかなり難しい漢字で表記されていて
今ではほとんど読めないような漢字が普通に使われていたんです

2003年7月11日金曜日

戦前の盆栽樹種1

「第15回国風盆栽展記念帖」より
国風盆栽会 会長 伯爵 松平頼壽氏の出品作品、棚飾り二席
昭和16年11月27日~30日に上野公園東京府美術館で行われたものです

この資料を参考にして
戦前にはどのような樹種が盆栽として仕立てられていたのか
調べてみましょう


向かって右より

上段
欅(けやき)
霊壁石(れいへきせき・中国産の鑑賞石)
五葉松(ごようまつ)
しもつけ

中段
梅花黄連(ばいかおうれん)
姫林檎(ひめりんご)
小蘗(しょうびゃく)
下段

山毛欅(ぶな)
落霜紅(うめもどき)
藪柑子(やぶこうじ・草物)

この中で中段の梅花黄連はどんな植物かわかりません
あとのものは現在でも盆栽として愛好されているおなじみの樹種です

現在の国風展の記念帖と違っているところは植物名がほとんど漢字です
私も藪柑子(やぶこうじ)は読めずに辞書を引きました


向かって右より

上段
常盤薺(ときわなずな)
小性梅擬(こしょううめもどき)
中段

錦松(にしきまつ)
瀧石(たきいし)
下段

黄金羊歯(こがねしだ)
杜松(としょう)

この席もすべて現在も培養されているおなじみの樹種です

ここでも薺(なずな)が読めずに分厚い漢和辞典のお世話になりました
薺なんて字を読めますか?

それと現在では小性梅(こしょうばい)と呼ばれているのに
昔は小性梅擬(こしょううめもどき)と呼ばれていますね

私は小姓梅と書いていましたがこうみると小性梅が正解のようです
また梅もどきを「落霜紅」「梅擬」と二通りの文字を使っています
おもしろいですね

こうしてみると、半世紀以上前の戦前も現在も盆栽樹種はあまり変っていないようです

この項つづく

2003年7月10日木曜日

黄梅の持ち主



この黄梅の元の持ち主がわかりました~っ!
やはり只者ではなかったで~すッ

夕方遊びに来た懇意な愛好家の方が情報をは運んできてくれました

それによると、この黄梅の元の持ち主は
2年ほど前に市内の盆栽会に入ったばかりの新人Yさんでした

しかし、新人といっても国風展の常連さんで、松戸市の隣の隣の町に住む
このあたりでは知られた盆栽愛好家です
今年の国風展にも入選しています

私も以前から挨拶程度はしていましたが
Yさんのお庭は拝見したことがなかったので、推理の範囲外にありました

Yさんは大物盆栽が主力です
今回放出したのも、新しい大物盆栽の購入のために
棚の整理をするのが目的だったそうです

Yさんが人に頼んで値段に構わずに放出したので
特価で手に入ったんですね
納得がいきました

Yさん、お安く分けていただいてありがとーう
ついでにもっと売ってくださーい
(今度お会いしたらお礼とおねだりをいいましょう)

灯台下暗し
正解は年中盆栽会で顔を合わせている愛好家のYさんでしたー!

関連ページはこちら

2003年7月9日水曜日

もう一人の伯爵

昨日紹介した松平頼壽伯爵の他にもミニ盆栽の愛好家の伯爵がいました酒井忠正氏です

同じく「第16回国風盆栽展記念帖」より
国風盆栽会 副会長 伯爵 酒井忠正氏の出品作品の一部です
昭和17年3月5日~7日に上野公園東京府美術館で開催


(画像を大きくしてみました、よく見えるでしょ)

上段 五葉松・小蘗(しょうびゃく・難しい字ですね)
中段 楓・紅梅
下段 錦松・杜松・ソロ

調べてみると松平伯爵は貴族院の議長、酒井伯爵が副議長をやっています
戦前はある面いい時代だったんですね

伯爵っていえば元大名のお殿様です
その方たちが手ずから野山で採取し愛培したミニ盆栽を
国風盆栽展に飾っていたんですよ

ゆった~りとした時間の流れと文化を感じますね
今じゃ考えられないー!

2003年7月8日火曜日

伯爵のミニ盆栽

「第16回国風盆栽展記念帖」より
国風盆栽会 会長 伯爵 松平頼壽氏の出品作品の一部
昭和17年3月5日~7日に上野公園東京府美術館で行われたものです



上段 落霜紅(うめもどき)
中段 迎春花(げいしゅんか・黄梅のこと)
下段 野梅(やばい)

太平洋戦争のしょっぱなッ真珠案攻撃から半年経たない
日本軍が破竹の進撃をしているころですね
元気よかったでしょうね、日本中が

卓台(しょくだい)は斑竹(はんちく)という斑点のある竹を材料にしたかわいらしい飾り棚です
梅もどきのことを落霜紅、黄梅のことを迎春花と表示しています
なんとも昔風、でも日本語っていいなーと思えますね

松平伯爵がご夫妻でミニ盆栽をこよなく愛されことは有名です
ご夫妻でですよ!
羨ましがってるご主人さまもいるでしょうね(せめて水やり協力が欲しいなんて)

松平家のミニ盆栽の特徴は
小さな鉢でていねいに長く持ち込まれた
かわいらしいしゃれた感じの木が多かった
旅行や散策の折に野山で採取したものが多かった
ようです

重量感や構図を重視する現代の盆栽を見慣れてる我々には
やや迫力不足の感はあるけれど
ともかく古さや素朴さがそれを補ってまことに趣が深いですね
実物は写真より魅力的です(カラーならよくわかる)

この松平公爵夫妻の愛したミニ盆栽の伝統は現代にも受け継がれています

過去の関連ページへどうぞ

 

2003年7月7日月曜日

だれが作った?



先週の土曜日(5日)に近隣の交換会で出会った黄梅です
私はこの黄梅を一目見て愛好家が長年丹精したものだと直感しました

やはり愛好家が友達から売却を頼まれて持ってきたそうです
その愛好家は古い付き合いのある方ですが

依頼主の名はあえて尋ねませんでした
もし知っている愛好家だと、割り切ったビジネスができにくくなるからです

10鉢ほどのなかでこの黄梅だけが際立っていました
でも幸いなことにこの黄梅に目をつけている人はいないようです

かなりベテランの愛好家でも、まあまあの盆栽が10鉢もあると、やはり目移りしてしまうんですね
これが幸いして、超安値でこの名品をゲットすることができました

ところで、なぜ私が愛好家の放出品だと直感したのかが今日のテーマです

私がおしゃべりをする前に皆さんのご意見も聞きたいですね
それらをお聞きしてから私の理由をお話しすることにしましょう
でも難しいかな?
正解のない世界です、感じるところを率直にカキコ下さい、よろしく

2003年7月6日日曜日

散歩とファミレス


(盆栽おばちゃんの作品より・桔梗他草物寄植え)

朝ふと思いついて、1km離れたファミレスへカミサンを誘ってみた
散歩兼用の朝食会のつもりだ

私は休業日を定めていない
自宅仕事は休日を定めにくいので、自分の都合や気まぐれでそのつど決めるのが
長年の習慣になっている
目が醒めたときから、今日は休みだ、と内心決めていた

カミサンは無類の散歩好きで、とにかく歩く
車はおろか自転車にも乗れないので、自分の足で歩くことを億劫がらない
散歩とファミレスのセットで誘えば、断るはずはない

日曜の朝は車が少なく、道が静かなのがいい
ファミレスへの道のりのあらかたはケヤキ通りで、歩道は加減よく半日陰が続く
歩きながらでもカミサンのおしゃべりはやむことはない
それを熱心に聞いてやるのが私の仕事
だが困ることに、カミサンの話に出てくる人々の名前と顔とが一致しない

ファミレスに入ると習慣的に喫煙席の方へ向かっていた
カミサンに注意される
そうだ、禁煙中だったけ、いけねぇ
だけど、喫煙席って煙たいねー、涙が出てくるわ

私は好き嫌いがないので、食い物ならなんでもござれで
同い年のカミサンも同じ
私は焼き魚の朝定、カミサンはパンと野菜スープのセットメニュー

食事をしながらもカミサンのおしゃべりは続く、延々と
ここが辛抱のしどころ
うそでもいいからだまし続けてーっ!(ある女性が亭主に浴びせた絶叫)
を教訓に、うそでもいいから、熱心に相槌を打つ
カミサンの機嫌は最高潮

一時間半の長~い朝食
これでカミサンの心中に溜まっていた一週間分のガスが抜けた~~っ

さてファミレスから国道6号線沿いに南下(東京方面へ)して
ホームセンターでちょっぴり買い物にお付き合い

その隣の友人のいる中古車センターに寄る
昔の私は、車は走ればいい派、であったが
息子が成人してからはやや反省、少しは知識を仕入れるようにしている

中古車センターはおもしろい
いろんな車種、ときにはクラッシックカーまであって、私にさえおもしろい
友人にお茶をごちそうになり、さようなら

帰路は桜通り、登り坂だが、健康だ、健康だ、と言い聞かせ
がんばりぬく
全行程4kmの散歩とお食事コースでした

それにしてもカミサンののどは丈夫である
全行程おしゃべりのしっぱなし
私は、ひたすら聞き役

家に着いたらもう昼ごはんの時間でした

2003年7月5日土曜日

盆栽おばちゃん

松戸市内の盆栽大好きおばちゃんのこと以前に紹介しましたね
おばちゃんが作った草物盆栽を紹介します



白花の桔梗とワレモコウの寄せ植えです
初夏の風情がみごとに表現されてますね

おばちゃん紹介の過去ログへ

2003年7月4日金曜日

ピラカン取り木発根す

6月14日の盆栽つれづれ草で実演したピラカンサの取り木が発根しました取り木をかけてわずか20日間です
早いでしょ!





白いモヤシのような根が3本見えますね
これが根です

今後の管理
もう5~6本根が見えたら親木から切り離すか
今の状態で網の外側にビニールを巻いて根を保護し
秋もしくは来春にに切り離す(どちらでもよい)

肥料はやりません

とにかく取り木は成功です
ばんざ~い!!

2003年7月3日木曜日

実どまり確認

梅もどきや姫りんご、深山かいどう、小姓梅、姫柿など実が大きくなってきました

春に花が咲き受粉して実が大きくなり始めます
その実が安定して落果する恐れがなくなったことを
「実がとまる」といいます

この梅もどきも実がとまりました

花後から実がとまるまでに気をつけることは
水を切らさないことと肥料をやらないことです


特に水の件は大切です
花が咲き小さな実が付いて喜んでいるうちに水を切らせてしまうと
実が黒くなって落果してしまいます

よく花が咲くのに実が成らないと相談されることがありまが
原因のほとんどは水切れです
(雄木はどうがんばっても無理ですよ!)


実どまりの時期の目安は一応6月中旬から下旬頃でしょう
ですから今ならまず大丈夫

きょうのことは頭に叩き込んでおいてくださ~い!