平安東福寺ほど盆栽界に名前が知られている鉢作家はいないでしょう
東福寺鉢の特徴はその土、釉薬、形、大きさなどの多彩さです
大きさは、指先ほどのものから、大きいものでは間口70cmくらいのものまであります
貧しいゆえ生涯自分の窯を持てなかった悲劇の人ですから
土も釉薬も「借りる窯」の特徴に合わせていろいろに使い分けたといいますし
師のない独学ゆえか作風もおおらかで、形も非常に多彩です
従来長く多作の人で作陶期間も長かったので、かなりの作品を世に出しています
そんなわけで複製品を作りやすい作家であり、作っても勘定がひきあうのです
没後から現在に至るまで複製品はかなりの数が出回っています
これが自分のスタイルが一定しており寡作の作家ですと
複製品を作るのが非常に難しいのです
複製品も様々で、笑っちゃうような稚拙なものから
一見本物と識別しがたいような出来栄えのものまであります
その点では愛好家泣かせの作家ですね
ともあれ、複製品が多いということは、人気が高く、高価で流通しているということです
盆栽小鉢の収集をしようとする愛好家の方は、平安東福寺鉢を避けては通れません
是非とも真贋鑑定を含めた鑑賞眼を養ってください、これは必須科目です
前置きが長くなりました、それでは本題に入ります
瑠璃色の手捻り楕円の複製品です(間口12.4×奥行11.5)
東福寺はこの瑠璃色を好んで作りました
本物に近い釉薬の色合いが出ています
素朴な手捻りのイメージもかなり似ています
縁のあたりに少し力がないかな?そう思います
正面から見た足のつけ方も正解に近い
この角度から見るとかなりの出来栄えで、本物に間違えます
この蕎麦色の楕円鉢も上の瑠璃と同じ作家でしょう
この角度から見ては本物に見えます
落款は両方とも同じです
楕円の中に東福寺とあります
業界ではまるで符丁のように「ワラジ落款」と呼びます
東福寺はいろいろな落款を用いたので、符丁で呼ぶと便利です
「東福寺のワラジ落款」、とくればベテランです
みなさんも使ってみてください(プロに一目置かれますよ)
また話がそれました!本題へ戻ります
落款は本物から型で写し取れます
ですから、これだけを見て東福寺だと思い込むのは失敗の元
東福寺本人の落款はほとんど圧力が一定できれいです
この鉢の落款もきれいに決まっていますね
ということで落款では見分けがつきにくいことがわかりました
足の検証もへ移ります
足は形、線、へらの使い方など東福寺本人の手の痕跡が色濃く残っている箇所です
さて、ここでしっくりとしない線に出会いました
足に沿った内側の曲線です
東福寺鉢は「手早く」仕上げた感じですが特徴ですが
この複製品の線はサット仕上げた感じがなく、ややもたついていています
これは注目すべき点です
下は拡大図
両方の足を比べると線の感じも異なります
東福寺本人と複製品を作った人の技量の違いが、意外なところに現れてしまいました
さて大切な土の検証をしてみましょう
陶芸において土は命です、そして焼き物の誕生の地の印です
ということは作家の名刺のようなものです
幾通りかの土を使う作家でも、経験を積むとそのパターンが飲み込めてきます
本物の東福寺は似た土は使っていますが、微妙に異なります
これは東福寺の土ではありません
総合的に判断して、この2つの鉢は複製品です
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