涌泉の落款の多くは「月之輪・涌泉」と釘彫で記されていますが
「月輪山・涌泉」という落款もあり、「月輪山」の方がより初期作品であるとされています
そして、「月輪山」の作品はやや小さめのものが多く
平均すると作柄も優れたものが多いのも事実です
さて、その「月輪山」の赤絵長方鉢の優れもを手に入れました
そこで何時もの悪い癖で、みなさんに自慢のご披露をしたくなりました
どうぞごゆっくりご覧下さい
月輪山涌泉作 赤絵山水図外縁下紐長方鉢 間口10.8×奥行き8.3×高さ3.4cm
月輪山の落款を有する作品としては大きい方でしょう
四面の絵柄は繋がってはいませんが、すべて山水図です
ボディーは「たたら作り」といって、板状の粘土を組み立てる方式、つまりツーバイフォー工法
涌泉は掘り抜きやロクロによる作陶も行いましたが、端正な外縁長方鉢はこの方法で作っています
正面の拡大図
絵の出典は、中国宋代に蘇軾(そしよく)が流刑地の黄州で長江に遊覧して詠んだ「赤壁賦・せきへきのふ」からで
流人の身の上の憂いを忘れるために明月と江上の清風とを楽しんでいる図、船上の人物は蘇軾(そしよく)と従者と船頭です
涌泉はよほどこの画題を好んだようで、やや構図を変えながら他の作品に用いています
一般的に、赤絵は呉須と異なり線の繊細さを出しやすいがぼかしの技法が難しいとされ
並の作家では「線」に頼ってしまうところを、さすが名人・涌泉です
情緒タップリの表現で遠近感もしっかり表現しています
側面をのぞく角度より
たたら作りの格調のあるボディー
側面には文様を描いたものが多いのですが、この鉢は四面とも山水図、うれしいですね
反対正面
岸辺に立つ高士と従者、舟を操る船頭の躍動する動き
静と動がみごとに表現されています
拡大図
棹を操る船頭の姿態の動きを的確にとらえています
近景の樹木は繊細でしかも凛とした線で表現さているため、構図全体がしまって見えます
側面の図
側面は面積が小さい分だけ繊細な線とまとまりのある構図で描いています
このあたりも涌泉が名人といわれるゆえんでしょう
側面拡大図
近景と遠景の対比がみごとですね
側面の図
側面拡大図
樹木の枝の線が美しい弧を描いた
涌泉ならではの筆致の冴、凄味さえ感じられます
鉢裏と足の様子
掘り抜きのボディーのイメージとまったく異なって、小さな足
たたら作りにはこれが似合っています
落款
いかがでしたか?
名品は何度も何度も見てください
イメージが心に染み込んであなたの鑑賞眼を高めてくれます
ちなみに、この長方鉢は涌泉の赤絵作品群の中でもトップクラスの出来栄えの作品です
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