2005年11月11日金曜日

楓甲羅吹き

盆栽屋にとって、仕入れた盆栽がすぐに売れるとことはもちろん嬉しいことですが
もっと嬉しいことは、手塩にかけた盆栽がみんさんの目にとまって求められたときです

やっぱり同じ嗜好の愛好家さんがいらっしゃったんだ!
この盆栽のよさをわかっていただけたんだ!

価値観を同じくする方に巡り会えたという感じでしょうネ
盆栽屋が冥利に尽きるのは、そんなときです

盆栽を商品として鑑定する冷静な目と、自分の好み
盆栽屋はそれらを共有する趣味性の強い職業です

自分の好みが強すぎて、愛好家のみなさんに理解していただけない場合だって多々あるし
趣味性が強くなりすぎて、売りたくない、なんて言い出す業者さえいる世界です

もっとも、「売りたくない」なんて、商売の駆け引きに使うふとどきなな盆栽屋もいますが
これはもっての外のことです

ともかく、盆栽の胸中はなかなかに葛藤の多いものなのです

さて



板状の甲羅から細幹が何本も立ち上がった、独特の風景です

どのような生い立ちでこのような樹形ができたのでしょう?
不思議な感じがするほどです

主幹の足元だって直径やっと3mm
なのにこの幹肌の古さ、甲羅から立ち上がって何年くらい経っているんでしょう?

少なくとも私の棚に3年くらいは居たでしょう

どこで求めたのものか思い出せないのですが
この甲羅吹きの楓を手にしたときの、ひ弱くて、繊細で、それでいて一種の神秘的な力を秘めている
それらに強く魅かれた瞬間の記憶は、しっかりと胸に残っています

ところで、この甲羅吹きの楓も求められ嫁入りすることになりました
ともかく、末長くこの細幹の繊細さと神秘的な魅力をいつまでも失うことのないよう、祈っています

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