2003年8月31日日曜日

竹本辰砂

竹本隼太は幕末の人で、4千石の旗本であったそうです
維新後陶芸の世界に入りました
かなりの変り種といえるでしょうね

さいわい我が盆栽界にも、小鉢を中心に幾多の名品を残してくれました
今日はその作品を見ながら陶芸の世界でいう
「釉溜まり・くすりたまり」の魅力についてお話します


竹本作
辰砂釉正方樹盆(しんしゃゆうせいほうじゅぼん)
(間口6.7cm×奥行6.7cm×高さ3.1cm)

濃い赤紫の釉薬が足元すれすれのところで止まっていますが
ころあいを見計らって窯の温度を下げなければ
釉薬は足元を覆い隠すほどに流れてしまいます

陶芸家にとってこの瞬間の判断が難しいそうです


このように上のほうから熱に溶けた釉薬が足元の手前で止まって
ぽってりと溜まった箇所を「釉溜まり・くすりたまり」と呼びます

釉薬の量感が感じられてとても魅力的で
鉢の愛好家にはたまらない景色です

みなさんもこれから焼き物をみるときには
この釉溜まりに注目してみましょう

2003年8月29日金曜日

涌泉鉢絶品


久しぶりにある盆栽界の古老を訪ねました
もちろんお目当てはこの湧泉鉢です

親子ほど年の違う間でも友達です
盆栽が人間関係をそう導いてくれるのです
これがこの世界のいいところ

ひときり昔話に花が咲きました
「宮ちゃん、子供大きくなったろ、なに、もうおめえもおじいちゃんかい、孫はかわいいだろ」

もーッ、おれをいくつだと思ってんだよ、孫の話は前にもしたのに
古老の頭の中の私は、駆け出しのころの私なのです

そのうち話が月ノ輪湧泉鉢のことに及ぶと、古老の目がさらに輝いてきました
目の奥には隠そうとしても隠し切れない、商売人独特の厳しさがチロチロと見えるのです
(私も商売人ですからわかるんです、プロを相手にしたときのプロの目が)

この厳しさがいいんです
これのないプロはやる気のないファイターみたいで魅力がありません
この目の輝きがある以上、この古老はまだまだ長生きしますよ

古老は気に入っているこの湧泉鉢は、とうとう言い値から一円も負けてくれません
よほど気に入っていたのですね
とはいえ何十年の長い付き合い、他のものは破格の相場でわけてくれました


間口はたったの5.8cm
実物より大きく見えます
線が端正でゆるみがありません


スキャナーで画像を取り込んでみました
繊細なタッチ、しかも線に力があります
この二つが大切です
精密なだけではつまらない絵になってしまいます


裏面の絵
まさに月ノ輪湧泉の円熟期の作品です

2003年8月28日木曜日

盆栽の生い立ち


この山もみじの盆栽はどのような生い立ちをもっているのでしょう
誕生したのは実生、挿し木、取り木、接木、それとも山採り?

生まれた場所は?
年齢は?
今までどこに住んでたの?

盆栽に聞いても直接答えてはくれませんから
姿形や鉢や雰囲気から推測するほかはありませんね

まず出生の秘密からいきますと、、取り木によって生まれた可能性が大です
一の枝が足元の低いところにあります、これが見分けのポイントです
実生苗から育てると、このように低いところに枝はできません

挿し木も考えられますが、もみじは挿し木の活着率がわるく、あまり普及していません
実生か山採り(おそらく実生)のかっこうのいい箇所に取り木をかけた素材から仕立てたものでしよう

樹齢も推測するほかありませんが
おそらく25~30年くらいでしょう
樹齢のはっきりしている他の山もみじの盆栽との比較や長年の経験から、推測します
やせ気味に作っているので、思ったより年はとっているようです

今まで育った場所は?
これも長年の経験からくる勘に頼ります
ずばり、愛好家の棚で長い間丹精されてきたものです

そのポイントは鉢です
はっきりいって映っていませんね、強すぎます
力のある松類に使う鉢です

プロでしたら売ることを考えてもっとやさしい感じの鉢を使うはずです
もちろん愛好家も鉢には神経を使いますが
もともと売り物ではないので、普段着でのんびりしていることもけっこうあるんです

長くなりましたが、山もみじの出生の秘密を推理してみました
おもしろかったですか?

2003年8月27日水曜日

雄山鉢鑑賞2

さて、今度は角度を変えて眺めてみましょう


右側面からの図です
絵がつながって描かれていますね
これを回り絵と呼びます、作家としては面倒な作業だといわれています

ボディーのわりに足が小さいことに気がつきましたか?
全体の姿がすっきりしているのはこのせいです
ボディー、足、縁などの調和はかなり難しいと思います
みごとな統一感です


裏面を同じ角度から見てみましょう
絵の向きが反対に描かれています
これは盆栽を植えた場合に、盆栽の向きによって両方を使い分ける為です


雄山は鉢裏に凝ります
中央の部分を一段掘り下げてあります
こういう底を押し底と呼びます

落款は雄山としてその周り線で長方形に囲っています
この落款は比較的古い時代のものです




両側面の絵です
側面といえど手を抜いてはいません
みごとに描ききっています

2003年8月26日火曜日

雄山鉢鑑賞1

藤掛雄山をかの月の輪涌山の再来と称する向きもあります
それは少々誉めすぎとしても
月香と並び、現役絵付け鉢のトップであり
やがては盆栽小鉢作家として古典の仲間入りする存在であることは確実です

その雄山鉢の五彩(ごさい)の名品をご紹介しましょう

この長方鉢は6~7年前に私が親しい愛好家にお譲りしたものですが
皆さんにお見せしたくてお借りしてきました

サイズは間口12.7×奥行10.5×高さ4.2cmで
雄山の初期から中期にかけての油の乗りきった時期の作品と思われます


重厚な形状とすっきりとした足元
白磁の色も純白で光沢があり、雄山独特の淡い色彩の色絵を引き立てています
的確な筆図使い、構図の巧みさ、遠近感など
雄山の熱い情熱が伝わってきます


淡く押さえた色調がここまで鮮やかに人の眼を引くのは
澄み切った純白の白磁の効果であり
また雄山の筆力によります


縁の四隅に菊の文様
雄山はあくまで隅々に神経を行き届かせています
もしこの文様が描かれていなければ
鉢全体の色彩の統一感は減じることになったでしょう

2003年8月25日月曜日

山採りの傷


ならの山採り
半懸崖式の迫力ある樹形です

これは富士山麓で山採りしたものです
あの辺の厳しい自然環境でなくては、このように小さなならの素材は無理でしょう

これらを採取するときには、富士砂と呼ばれる砂利状の地面に自生しているため
スッコップが利きにくいので、チェーンソウも併せて使うそうです

そのチェーンソウで誤って幹に傷をつけてしまったのですが
あまりに骨格が優れているので、鉢に入れて育てたそうです


見えますか?
立ち上がりからやや上の部分に幹を横断する直線の傷
これがチェーンソウのものです
もう少し深ければ幹は切断されていたでしょう

無残ですが時間をかければ肉が巻いて
かなり目立たなくなるはずです

すんでのところで命拾いしたならの盆栽君でした

昔、断崖絶壁に自生する糸魚川の真柏の山採りに挑み
幾多の尊い命が失われたそうです

そんな盆栽史が頭をよぎりましたが
富士山麓なので
チェーンソウで幹を傷つけてたくらいで済みました

2003年8月24日日曜日

盆栽用語の2

私らが無意識に使っている盆栽用語も
こうして思いつくままにならべるとけっこうありますね

[ふところ]        内側、なかがわ
              ふところ枝、芽ー輪郭線より内側の枝や芽のこと

[ききえだ・利き枝]   構図を形つくる重要な枝のこと

[こやす・肥す]      肥培すること肥料をやって太らせること

[こまる・困る]      弱ること、樹勢がおちること

[ふっこむ・吹っ込む] 小枝が細かく密になりふえること

[さばく]          整理すること  根さばき・枝さばき

[ニュー]         割れ傷のこと

[ホツ]          ぶつけた傷のこと

[カマキズ]        窯のなかで焼いている最中に火の加減でできた傷のこと

[さく・作]         培養のこと 作がいいー培養管理がうまくいっていること

[やまい・病]       病気のこと 

[ねむる・眠る]     冬眠するなど活動しれいない状態のこと この盆栽は眠ったままだー冬眠から醒めずにいること

[かぜ・風邪]      寒がっていること この木は風邪をひいている

[しょうき・生木]     実生木のこと

[つぎ・接]        接木で仕立てた木のこと

今日のところはこのくらいにしておきますが
まだまだ出てきそうです

2003年8月23日土曜日

ネットで盆栽講評

新企画[ネットで盆栽講評]のトップバッターは山梨県の今再さんの真柏です
毎回掲示板に盆栽の画像を投稿していただいており
その力まないおおらかな人柄は掲示板のカキコの文章からも読み取れますね

さてそれでは盆栽のほうを拝見するとしましょう



挿し木の苗を、人工的にぐりぐりと捩じるように針金を掛けて仕立てたもののようです
葉は細かく色もきれいで、いわゆる葉性(はしょう)がいいです

1 将来目指そうとする樹形がはっきりしていません
  模様木はわかるんですが、芯の部分がうつむいているのが、いかにも無目的です

2 芯と枝に針金をかけて、目指す樹形の基本の図柄を出しましょう

3 その際、根元から捩じれた幹の味が、芯に行く部分で平凡になってしまっているので
  芯に近い箇所にも強い屈曲をつけてください、寸法も短くなり、一石二鳥です

4 葉は細かく色もきれいで、いわゆる葉性(はしょう)がいいので楽しみです

5 また足元からの曲がりがおもしろいので、ここを強調するような樹形を考えましょう
  芯の部分の幹、樹冠の輪郭はおおよそ赤線で示しました
  かなり追い込んで小さくします

6 以上の改作を試みて再挑戦してください

2003年8月22日金曜日

町直鉢


今岡町直作
辰砂釉切立正方樹盆(しんしゃゆう・きったて・せいほう・じゅぼん)

私が盆栽をやるようになって初めて接した小鉢が町直鉢でした
当時、東京は洗足池の風致会館という場所に
中村是好、明官俊彦、佐野大助、田代与志、岡田晃などそうそうたるメンバーが集い
講習会や展示会を催していました

その集いに、ひよっこの私も何度か参加しました
そこで今岡町直氏が自作の鉢を販売していたのです

背の高い上品でハンサムな中年の紳士で
なんでも学校の教師をされているということでした

その頃の今岡さんの鉢には
500円から高いもので3,000円くらいの値段がついていたのを記憶しています

欲しかったけれど3,000円の小鉢は買えませんでしたね
せいぜい500円から眼いっぱいで1,000円くらいまでの小鉢を10個くらい買ったでしょうか

いま思い出すと、そのときの3,000円の小鉢は素晴らしい作品でした
町直得意の青磁に辰砂の釉薬が縁にかけられ、それが劇的に垂れていました

今では町直鉢もコレクターが手放さないため、いい作品を市場で見ることも稀になりました
もっと買っておけばよかった思いもしますが
35年も前の私にはそれだけの鑑賞眼もなかったし、先を見通せる経験もありませんでした
だいいち買ったとしても今まで持っているなんてことは、考えられませんね

2003年8月21日木曜日

山もみじ素材

足元の根張りと幹筋が抜群の再生用の山もみじの素材です幹肌も縦縞が入って、バカ古です

こういう好素材に巡り会うと、ついついこの盆栽の生い立ちを考えてしまいます
どういう持ち主に育てられてきたんでしょう

こんないい素質を持ちながらろくな面倒も見てもらえなかったのでしょう
世が世であれば、名木とほめちぎられているはずです

でも今からでも遅くはありませんよ
盆栽の一生は長いんです
適切な培養と技術により脚光を浴びる存在になることが可能です



根張り、幹模様、木肌など申し分ありません

向かって左の一の枝は不要です
その下の丸印の箇所に一の枝があれば理想です

二の枝は間延びしていますが使えます
矢印のところに芽があります、その芽を大事にして将来の二の枝にします

向かって左の上部の矢印が三の枝です

裏枝も適切な箇所にありません

来春にきちっとした根さばきをしてやや大きめの仕立て鉢に植え替えます
同時に不要枝は元から切ります

有用な枝は約1cm残して切ります
残した枝元から芽が吹きますから、その芽を伸ばして枝にします

枝のないところには、呼び接ぎをして枝を作ります
そのためには、不必要な箇所の芽を徒長させる必要があります



2~3年計画で枝の基本を作っていけば
将来は立派な山もみじの小品になります

そのためには、つれづれ草で呼び接ぎの技術を紹介する必要がありますね
適した素材を確保しておくことにしましょう
呼び接ぎの技術を習得すると、雑木盆栽作りの幅がグーンとひろがります

2003年8月20日水曜日

盆栽用語

盆栽界には特有の用語があります
用語辞典を作るほどではないけど、中には解説しないとわかりにくいものもあります
今日はそのなかから思いつくままに幾つかとり上げてご紹介します

[からい] 少ないこと
      水がからいー水やりの量が少ないこと
      
[がれる] やせること・弱ること
      この木はがれているーやせて弱っていること

[たっぱ] 背の高さ・寸法・サイズのこと
      たっぱが高いー背が高い

[きせい・樹勢] 木の元気さのこと
          樹勢がいいー元気がいいこと
          樹勢がわるいー元気のないこと

[追い込む] 切りつめること
        枝を追い込む・一の枝を追い込む

いかがですか?

ちょっと紹介しただけでも幾つかわかりにくいものがあります
こんな盆栽界にだけ通用する言葉を使うと、ベテラン気分ですね
機会があればもっとまとめてと紹介しましょう

2003年8月19日火曜日

隠れたおしゃれ


藤掛雄山造
染付撫角長方樹盆(そめつけなでかくちょうほうじゅぼん)

鶉(うずら)は絵付けの題材として好まれます
周り絵で5羽の鶉が描かれていますが、
それぞれに異なった動作をしているのが印象的です
小さい鉢ですが力作です

撫角(なでかく)とは、丸みのある角のことです
また、周り絵とは、4面の絵がつながっていることをいいます

ところで、盆栽鉢は、盆栽の引き立て役という大前提があります
雄山はその点を配慮して、やや淡い呉須(青い釉薬)を使い
ほどよく余白をとり、繊細なタッチで描いています

そして、ある面制約された作者の真情が思わず表面ににじみ出ているのが
鉢裏の装飾であると私は考えます
みなさんそうは想いませんか?


内側に文様を描いて透明釉を施し
またその内側を、木瓜型(もっこがた)に一段低く削り取り
雄山と独特の字体で落款を書いています
じつにお洒落ですね

雄山がときどき見せる技です
絵付けをする作者が、もっと描き込みたいとの欲望を抑制し
鉢底の文様にその気持ちを吐露しているような気がしてなりません

題目は「隠れたお洒落」としましたが
「隠された欲望」とでもした方が適当かもしれませんね

2003年8月11日月曜日

二重鉢で夏対策



富士桜のミニを手に入れましたが
小さいので二重鉢にしてありました
春に出た根がけっこう長く伸びています

根を傷つけないようにそっと持ち帰って
同じく二重鉢にします
夏が過ぎるまでこの根を切らない方が無難です


別に難しいことはありません
二周りばかり大きな鉢に粗めの植え土をいれます


そこへ適当な深さに富士桜の鉢を据え付けてます
周りに植え土を入れて出来上がりです


これで夏対策はバッチリです
集団でもっと大きな箱状のものに入れてもいいでしょう

ぜひ実行してください
盆栽たちも喜びますよ

2003年8月10日日曜日

台風一過

台風一過というと、高ーいさわやかな秋の空を思いだしますが
とんでもない、今日はギンギンの真夏日
強い陽射しに蒸し暑さも加わって、それはひどいものでした

ところで昨日は早とちりをしました
前の晩のテレビの天気予報は9日の午前6時の台風の予想位置を
東北地方に示していました

それを見ていた私は、朝の天気予報を確かめずに
台風はすでに通り過ぎた、と決め込んで仕入れに出かけたのです
ごていねいに、掲示板に台風お見舞いと関東はかすった程度でした、と書き込んで

家を出たのは午前9時ごろでしょう
幸いに上物に出っくわして余裕の出た私は、もう一軒と思い車を走らせました
ところが午前11時ごろ、突然に突風と激しい雨に遭遇、
なんだこりゃあと思ってハンドルにしがみつきました

目指す同業者のところへ着いても、車から出られないほどの大雨、大風
同業者も、よく出てきたね、とビックリ
それでも私はまだ正確な情報を知らずに、一過性の雨と風だと思い込んでいた始末

家に電話をかけると、うちのカミサンも例の天然ボケ
もう台風行っちゃったんじゃない
と、まったく感じてないんです
参った!

目ぼしい盆栽を避難させるように言いつけて
一目散に家に帰りました

幸い被害はゼロでしたが、盆栽屋にとって風ほど怖いものはない
のです

2003年8月9日土曜日

けやきの根張りについて

けやきの根張りも実生と取り木ではその形が異なります
このけやきは実生から育てたものです
幼苗の時代に移植の際、ごぼう根を切って根張り作りに専念してきたものです





根から幹として立ち上がる部分に肉がついて、もっこり盛り上がって
盤状になっています
これが実生の優れたところです

取り木では細い根が立ち上がりの部分から四方八方に出ますが
立ち上がりの部分になかなか肉が盛り上がらないものです

それそれの生い立ちによって根の形状も異なることを覚えてください

2003年8月8日金曜日

姫りんご取り木

姫りんごは、秋から冬の盆栽展示会シーズンの彩りとして、なくてはならぬ存在です
通常は接木から仕立てます

ところが接木ですと、ある程度の太さになった頃には台木も成長して
根が太くなり小さい鉢に入らないという悩みも生じてきます
そこでミニの場合、取り木をかけて小さい鉢に入るように仕立て直します

鉢に入ったものを取り木するのはけっこう難しいので
若木にうちに畑で施術します
畑で勢いをつけて針金で締め上げ方式で行います


取り木で仕立てた姫りんご
可愛い実が二つ
来年はもっとたくさんなります


取り木仕立ての姫りんご
根が異常に太らないので小さい鉢に納まります
これは便利
今までの取り木のよる方法より一段と進歩しました

2003年8月7日木曜日

けやき鑑賞


ちょっと自慢できるけやきを手に入れたので鑑賞しながら
けやき盆栽のポイントをお話しましょう


根張りを重視するのは盆栽全般にいえることですが
けやきの樹形は原則として直幹が本筋で
それ以外の樹形は認知されていないといってもいいでしょう

そのため、八方に張ったバランスのとれた根張りがふさわしいのです
その点からいっても満点の根張りです

立ち上がりの幹も真っ直ぐですね
これが理想の姿です


立ち上がりから真っ直ぐな幹、そして枝わかれの部分も大切です
急激に太らせたものはここに熱を持ち醜くふくらんでしまいます
芽摘み、葉刈りをマメにして常に木の勢いを制御します
野山のけやきの枝わかれの素直さ、参考にしてください

また木肌に時代感もにじみ出てきていて、古木然として雰囲気が感じられます


芯の行方と枝つきのようすを下から見てみましょう
傷や熱をもってふくれた箇所はないかな
大丈夫です

最後になりましたが、けやきの場合も、持って生まれた葉や枝の性質もポイントです
葉が細かく小枝が上に向かって伸びる性質が望ましいのです

2003年8月6日水曜日

鉢映り

にれけやきの名木が手に入ったので鉢映りの勉強をしてみましょう



瑠璃色の楕円鉢を使用しています、みなさんはどう思いますか?

鉢映りを検証するときには
鉢の形、色彩、間口、奥行き、深さ、そして培養面などを考慮に入れます

このにれけやきの場合は、幹の力に対してやや鉢の力が弱いようです
ちょと窮屈な印象を受けますね

左右1cmずつ間口の大きなものか
間口はそのままで、あと1cm深めの鉢くらいが適当だと思います

みなさんの鉢映りを見ていると、大きすぎることがほとんどですが
ベテランになると自信があるので、小さめの鉢に入れることが多いようです

その理由は
鉢を小さくすることにより、木が大きく力強く見えるからです
これは大切なことです

芽摘み遅すぎ

夏とはいえどウッカリしていると、けやきの新芽が伸びています
雑木の中でも特に気をつけなければなたない樹種なのに
これはいけません


さっそく指先の爪で欠き切ろうとしたのですが
すでに遅く、切れません

爪で切れないということは、芽摘みが遅いということです
芽摘みの適期は、指先の爪で切れるうちにやらねばなりません


爪で切れないので引っ張るような感じになる
けれど切れない
遅いんです
ハサミを使うようでは落第です

2003年8月5日火曜日

小鉢収集心得2








小鉢収集心得の1で次のことを申し上げました

1) 信頼できる先輩や業者などを見つける
   
2) 優れた作品に接する
   
さて次に心がけることは

3) 遊び心を持つ

以前紹介した松平伯爵をはじめとした戦前の愛好家は
遊び心に徹していろんなことに夢中になりました

小鉢収集の面でも、例えば「近江八景」などにちなんで
ある作家の小鉢を8個セットで揃え、「○○八景」などとして愛玩したことです
世上には「竹本十六景」が特に有名です

私も長い盆栽人生の中で「竹本十六景」と称するセットを二組所有したことがあります
すべて戦前にセットにそろえられたもので
竹本のそれぞれに傾向の違った小鉢を16個揃え、桐箱に入れたものです
じつに可愛らしいものでした

とはいっても、100年も前の作品を、たとえ8個でも揃えるのは大変なことです
私は現代作家の作品の小鉢セットを作ることをお勧めします

セットにする方法を月香鉢を例にとり解説します

1)は直径2cm、月香鉢としては一番小さい方でしょうから
これがセットの最小とします

次に3)ですが、直径6.6cmです、このあたりを一応最大のものとします
大きさは1~3の間で揃えることにします
そうすると2)は直径4.7cmですから大中小と3個セットになりました

3個とも形と傾向もそれぞれ違いますからグーですね
最低8個セットを目標にするとして
残る形は長方、楕円、木瓜式、、六角などが考えられます

また傾向としては赤絵、五彩絵付けなどですね

絵もそれぞれに傾向が違えばよりおもしろくなります
 






このように盆栽小鉢収集でも遊び心一杯の楽しみ方があります

要約すると

同一作家の作品で
小鉢(箱に入れる都合上小鉢がいい)
大きさ(大小さまざまがいい)
形(いろんな形がいい)
傾向(絵、釉薬ともいろいろ変化があるように)

などの違ったものを、先人の例に倣って

3個(三景・三態)
8個(八景)
16個(十六景・この数字はこじつけ気味ですが竹本鉢の前例があるので)
36個(三十六景・これは多すぎるけど)
揃えます

但し、急いではいけません
何年かかろうとじっくり集めます
その過程を楽しむのがほんとうの「遊び心」というものです

2003年8月4日月曜日

月香鉢の作風

月香の初期の作品と最近の作品を比べてみます


↑が最近の作品(推定10年)


初期の作品

初期の絵は細い筆で書き込んでいます
繊細な筆使いでありながら動きを感じる絵です
初期の初々しい作者の熱が伝わって来るようです

↑の最近の絵は落ち着いた静寂ともいえる雰囲気で
描きなれた様式美が見られます
月香独特の境地に入った感じともいえるでしょう

シゲシゲと眺めてみると同じ作家の絵とは思えないほどです
変れば変るものですね

もちろんこれは鑑賞する側の見方であって作者本人は
それほど変ったとは思っていないかも知れませんが

ともかく、絵付け鉢は絵が生命です
遠慮なく眺めて、遠慮なく批判して
より自分の好みの小鉢を見つけるための勉強に精を出しましょう

2003年8月3日日曜日

雄山鉢の絵

藤掛雄山作
錦手外縁隅入熨斗鮑図六角樹盆(にしきで・そとえん・すみいり・のしあわびず・ろっかく・じゅぼん)

錦手(にしきで)というのは金を使った絵付けのことです
まるで平安朝の絵巻物のように絢爛にして豪華
それでいてそこはかとない哀調も感じられます

隅入の六角鉢という技術的にも難しい技をさりげんく披露して
雄山鉢の水準の高さを示しています




ところで鉢に描かれた熨斗鮑の図ですが、みなさんは知っていますか?
おそらく知っている方は少ないと思います
じつは私も何が描かれているのかわかりませんでした
(自分が知らないことは、みんなも知らないと決めつけるこの傲慢さ)

しかし、それでは頒布コーナーに掲載しても、鉢の突っ込んだ解説ができません
弱りました、お手上げ状態です
絵の解説はなしにしてごまかそう、と思っていたところ

カミサンがニタニタしています
「なにニタニタしてるんだい、気持ち悪いぜ」というと
「おとうさん、その鉢の絵、なんだかわかんないの?わたし知ってるわよ」
自慢げに言うじゃあありませんか!

このオカチメンコが、簡単にいうじゃないかい
おれ様は専門家だよ、小鉢の!
内心ではそう思いましたが、藁にもすがる思い
ここは一応ご意見拝聴

という訳で見せられたのが↓の文様です


昔は、折り紙を六角形に折畳み熨斗鮑(のしあわび)を小さく切って張り
贈り物に添えたそうで、これはその熨斗の図案だそうです
(祝儀の袋には縦長の六角形のデザインがありますね、あれが熨斗だそうです)

また熨斗鮑とは、鮑の肉を薄く延ばし乾燥させたものだそうです

うーん、図案を見せられおまけにここまで説明されたんじゃ、くやしいけれど納得
それにしてもうちのカミサン、なんでこんなこと知ってるんだい
不可思議!!

ということでまたまた一つおりこうさんになりました


それにしてもこの散紅葉(ちりもみじ)の絵もいいですね


緑の葉が次第に色づく様が描かれています
デリケート!

2003年8月2日土曜日

夏の水管理

関東では昨日今日と本格的な暑さがやってきました
おまけに風が吹いているので乾くこと

ところで夏の管理ですが、、まず何よりも水、水、水ッー!
ですが、この夏は水やりの際一つの観察をしてください

人間の身体も夏には自然に省エネを心がけるように
盆栽達も真夏の盛りには根の活動を休めます

春の乾きは、蒸発だけでなく根の活発な活動によるのですが
真夏の乾きは、根から吸収されるより蒸発によるものが多いのです

ベテランの盆栽人は真夏になると「鉢が乾かなくなってきた、休みに入ったよ」といいます
毎日の観察によりそれがわかるのですね
ですからベテランは真夏の水のやり過ぎに気をつけるんです

そうはいっても現実は時間的にも余裕がありません
水切れ対策で精一杯ですね
ですから
植物の生理的なサイクルだけでも覚えておいてください
そして機会があったら観察してみてくださいね

さて今日は、毎日の簡単な手入れです


葉刈りしたいぼたの芽が伸びてきました
随時摘み込みをしてください


夏の芽摘みは日当たりや風通しをよくし
ふところ芽の成長を助けます


金露梅は水が大好き
水切れには十分気をつけて

芽もマメに摘みます
指先では摘みにくいのでハサミを使います


もったいないけど花芽も切る


床屋さんのように輪郭線にそって刈り込みます
こうすれば小さい姿を保てますしふところ芽や枝が元気になります


さっぱりしました