2020年2月21日金曜日

佐渡雷光石

朝からホームページの更新に追われので、夕方の3時ごろにはさすがに疲れが出て、今日はこのあたりでストップだ。それで数キロ先の市内の親しい同業者のお店まで、ちょっとばかり息抜きにお出かけした。こんなときは盆栽の友人はプロアマ問わずにありがたい。


あれ?お店の片隅に何時ものように何時ものところに埃にまみれて無造作に置いてある山形石が、何のせいか今日は何となく新鮮に見える不思議な現象!


地肌の質も識別できないほどに埃にまみれているので、特別の関心をもって見たのは今日が初めての感じです。ところで???この石はどこの産地でしょうか???


よく見ると台座は紫檀の上作です。むーん!
謎は深まるばかりです。

そこで、

「この石、○○円で売るかい?」
「うーん、なんだかわからないから、買ってもらうか!」

というわけで、あまりに迅速で雑な取引成立。


早いついでに、すぐに家へ帰って、乾いた雑巾で乾拭きの埃落とし。次は同じく乾いた亀の子タワシでゴシゴシと磨き上げました。こんな時は、決して水に濡らしちゃいけませんよ。


厳しい肌目が見えてきました。私の当初予感したとおり、やっぱり佐渡の石でした!


佐渡の雷光石ですね。雷光石といっても、このように地味な渋い感じのものから、鮮やかな緑や赤、黄土色などの混じったものまで様々ですね。


主峰のあたりはまるで貴船石のような紫がかった落ち着いた色調で、山水景情石としても十分に通用します。


2020年2月20日木曜日

藪椿

日本人にとって桜や梅に次いで親しい樹種である椿ではありますが、さて盆栽の名木となると、そう簡単にはお目にかかれないものです。現に私なども、この数十年を振り返って満足のいくような優品を記憶の彼方に探してみても、そのような椿の盆栽は僅かに2~3本しかありません。


そんな中で、10年ほどまえに山取りから仕立てた半懸崖樹形の藪椿がいたく気に入って大切に何年も愛倍していたことを思い出します。幹の太みはさほどではありませんでしたが、灰褐色の古い幹肌と野生的な自然模様に、とっても魅力がありました。


その薮椿も親しい業者仲間のIさんに請われて手放すことになり、そのうちに買い戻そうと思っているうちに、次の持ち主が現れて、とうとう買戻しのチャンスは永久に失われてしまいました。


何時かまたあのような野趣味あふれた趣の椿に出会いたいものです。


ちなみに薮椿の場合、自生する地方によって葉っぱや花の個性がことなります。そんなことも椿盆栽の面白さの秘密の一つでしょう。

2020年2月12日水曜日

市川苔洲



大正の末期から昭和の初期にかけて東京で活躍した市川苔洲。その作品には小豆釉(あずきゆう)とも呼ばれる独特の辰砂釉をはじめ、蕎麦釉、瑠璃釉などに独特の玄人好みの渋さで知られています。


形は鬼面足の鉄托(てっぱつ)型などが有名ですが、小品鉢から中品鉢まで作品のレパートリーは豊富です。


その作風は、小野義真の影響を強く受けているといわれています。
釉薬においてもボディーの成型のおいても、確かに義真の影響が感じられますね。
ただし、小野義真には苔洲のような長方鉢は見たことがありませんが・・・


辰砂釉が窯の中で表と裏では発色が変わって、緑色に変化しています(↓)


(↓)こちら側も緑色に変化しています。










(↑)(↓)とも辰砂釉が赤と緑に変化している様子がわかりますね。
じつに渋くて個性的です。


なお、苔洲鉢には無落款の作品が多いことで知られています。個性の強い作風なので見まちがえる心配は余りありませんが、初心者の方は勉強を怠らないよう、がんばってください。

2020年2月11日火曜日

月之輪涌泉(青磁撫角長方)

現代小品盆栽絵鉢作家の最高峰と云えば、それは誰が何と言おうと月之輪涌泉をおいて他にはありません。それはみなさんもご存知ですね。
ところで、涌泉の凄いところは、絵付けから成型まで超一流であったところです。


今日ご紹介する涌泉作(間口11.2cm×奥行き9.6cm×高さ4.3cm)の青磁長方鉢。並の作家ではこのボディすら大変ですが、涌泉は光り輝く美しい青磁釉で仕上げています。


向かって右の縁に沿って茶色の筋が見えますが、これは傷でなく釉薬が飛んだ釉飛び(くすりとび)です。


輝くような青磁釉です。ほどよく外へ出た縁の強さ、大きめながらじゃまな感じのない足。美しく安定したフォルムですね。



その安定間の秘密はこのソフトな線にあるのでしょう。あくまで上品で優美です。


実用を考慮して水穴は多めに開けています。そのせいか赤点に沿ってカマキズが走っていますが、この傷がさらに拡大する恐れはほとんどありません。


ところで、涌泉の青磁鉢は絵鉢に比べて価格評価ははるかに低いものでは在りますが、実用という面からは高い評価をうけています。松柏はともかく雑木や花もの実ものであれば、たいがいの樹種に映るからですね。



2020年2月6日木曜日

寒グミ株立

まだ30代のお客様から、盆栽の数を制限するために差し上げたいと意外にもご指名をいただいたので、1時間半くらいの道のりをお訪ねしました。そして遠慮なく頂いてきたのが、大型の岩シデと中型の寒グミの2鉢の盆栽です。
買取の看板も出しているので、盆栽屋が愛好家さんから買うことは決して珍しい経験ではないのですが、さすがに無償で頂くことはめったにないことです(笑)

寒グミ株立 樹高22×左右32㎝

そんなわけで、今日はそのうちの中型の寒グミの株立がいたく気に入ってしまった私なので、この喜びをみなさんにもおすそ分けしたくて、パソコンの前に座っているわけです。


木質の硬い寒グミは、梅などと同様に株元が朽ち果てるまでにはかなりの歳月がかかります。その過程で野趣にとんだ味わい深い姿を鑑賞することができるわけです。


早春の発芽前や入梅期に葉刈りと芽摘みを実行すると、枝先がほぐれて雑木らしい興趣を味わうことができます。


白骨化したジンは石灰硫黄合剤を塗布して腐食しないように保護します。このジンの様も見どころの一つですね。


現在の正面よりやや右に振った角度がこの木の見付けでしょう。そして、培養のために木箱に入っていますが、やや薄型の楕円鉢が似合うでしょうから、心がけておきましょう。
いかがですか?この古色感あふれた寂びた雰囲気は。