2011年8月28日日曜日

秋肥(液肥)のやり方

今年はまさに節電の夏でしたね
なにせ、昨年があの通りの超酷暑日の連続で、おまけに2ヶ月も雨が降りませんでした

ですから、夏が来る前から、もし今年もだったらと恐々としていましたが
日本国民が総力をあげての節電努力により停電もなく、どうやら秋風が心地いい季節までこぎつけた感じですね

さて、盆栽の方は、春から芽摘みや葉切りなど忙しかった作業も一段落して
じっくりした整姿などの本格的な手入れが近づいてきました

そこで気を付けなければならないのは
これからの9,10,11月の肥培管理です

春から入梅頃の肥培管理は、芽の伸びや葉の色つやに結果がすぐに現われます
ですから、張り合いがあり気合いも入りますが

この時期の管理は結果が目に見えにくいので
どうしても肥料が少なめになってしまう傾向が見られます

しかし、夏の間は忘れていますが、これから厳しい冬の寒さを生き抜かなくてはならないし
樹勢がいいものであっても、針金かけや剪定の激しい整姿作業の洗礼が待っているのです

そのためには、この数ヶ月の間にみっちりと体内に栄養を蓄えておく必要があります
盆栽人は今だけを見ていたんじゃだめですね、少なくとも半年先までの行程を頭に入れて行動を起こしましょう

この秋の肥培管理の結果は
少なくとも来春の芽出しにも間違いなく強い影響を与えるわけです

さあ、みなさん、厳しい夏は終わりに近づいていますが
ここでもう一度改めて気合いを入れて秋の肥培管理に精を出しましょう



秋一番の施肥は液肥から始めるのが秘訣(その理由は最後にお話しします)
液肥はハイポネックスが使いいいです

10リットルのバケツに5㏄
つまり2000倍液を作ります(濃すぎないように)



水やりの要領で如雨露でやってもいいし
小品やミニならこのように、鉢ごと浸してもいいでしょう

ちなみに、この真柏はフリースクールの生徒さん・イシくんの愛樹
この秋には、古葉とり、小枝の剪定、部分的な針金かけなどの手入れが予定されています



こちらは、やはりスクールのマユちゃんが可愛がっているミニ杜松
今年は樹格が大幅に前進したので、来年も一気に突っ走りたいものです

8月のはじめにあげた固形肥料はもうすでに効いていませんね
ですから、この杜松もドボンです



液肥へドボンのあとには油粕の玉肥を2個

あれれ!液肥と玉肥を同時にやるなんて、やり過ぎじゃん?

いえいえ、ここに肥料のやり方の秘訣があるんです
以下箇条書にまとめますから、忘れずに実行して下さい

1 固形油粕(遅効性)は吸収されるまでに10日ほどかかりますから
  それまでの空白期間がないように、1~2回ほど即効性の液肥を施しまます

2 固形肥料は、効き始めてから約10~15日でその効力が失われます
  施肥後1ヶ月経過したら、いつまでもそのままにしないで、カスは取り除いてやります

3 そして次にも、今回のように固形肥料をやりながら液肥を1~2回やります
  つまり、空白なく肥料が効いているようにするわけですね

おわかりですか、効果はてきめんです

それでは、ソク実行しましょう

では

2011年8月23日火曜日

くちなし・青虫出現

盆栽を悩ませる虫害は数えればきりがないほどありますが
蝶の幼虫(アオムシ・イモムシ)も、これは始末が悪いですね

特に気をつける樹種はクチナシとキンズ(柑橘類全般)です
夏も終わりに近づいた今ごろに、葉が丸刈り状態に食べられてしまうと

新しい葉が出そろわないうちに秋が深まり
冬の寒さを葉のない状態で生きぬかなければないのです

これは、寒さの苦手なクチナシやキンズにとってはまことに厳しいことです
私も以前クチナシの名木を丸刈りにされたことがあって、、冬中心細く管理したことが忘れられません

対策は言ってみれば簡単なのですが、日頃からの定期的な消毒はもちろん
盆栽の棚場で蝶を見かけてから一週間くらいは、ピンセットと消毒スプレーを持ってクチナシやキンズなどをよく点検することです

蝶の幼虫は成長が早いので、一週間も気がつかないでいると
たちまちタバコの太さくらいの堂々たるた大きなアオムシ様となってしまい、盆栽は葉刈り状態になってしまいます



一週間くらい前に棚場すべての消毒をしたばかりなのに
あれあれ、今朝気がついたらこの通りです

卵の段階では消毒が効かないのでしょう
消毒後にと孵化して幼虫(アオムシ)になったわけですね

それにしても保護色なので見つけにくい
3匹捕獲しましたが、念のために所毒もしておきましょう



部分的な消毒用に500㏄くらいの小さな専用スプレーを常備しましょう
小型の計量スポイトも便利です

それでは、今日はごく初歩的なお話しでしたが
ベテランの盆栽棚にも蝶々は飛んできますからね(笑)

2011年8月11日木曜日

くちなしの芽揃え

昨年並みの超猛暑を予感させる入梅明けの陽気だったのが
台風6号の襲来を境に、一転涼しい日々が続き随分と仕事がしやすい感じでしたね

その過ごしやすい気候のせいでしょう、積年の課題であった棚場の拡張(たった畳3枚分だが)と
今や不要品と化したと思われる、物置いっぱいのガラクタの山を片づける気になったわけです

(ちなみに、畳3枚分だと10㎝クラスの小品が100鉢はらくにおける)

ところが、普段からの心がけの悪い怠け者には
天はそう易々とは味方をしてくれなかったようです

まずは、物置のガラクタを処分したまでは順調でしたが、その余勢で盆栽置き場の片付けをしながら棚場の拡張をという段階で
またまた殺人的な猛暑がぶりっ返して来たではありませんか

しかし、途中で頓挫するわけにもいかず、ともかくやり過ぎないことを心がけながら
遅々とした進み具合ながら、棚場の拡張にとりかかっているこのごろです

さて、余談はこのあたりにして本番の盆栽のお話しになりますが
こんな猛烈な暑さの中で元気のいいのは、やはり暖地を好むクチナシやキンズなどですね

強烈な夏の日射しをあびても、葉やけなどいっさい心配なしで
人間はおろか、盆栽たちでさえも暑がっているのは目に見えているのに

クチナシやキンズに限っては
太陽の下で濃い緑の葉をかがやかせ、元気いっぱいに夏を謳歌しています


さる5月19日のつれづれ草で葉刈りと病気予防をしたクチナシ(当時の画像)


ご覧下さい

夏の暑さが大好きなクチナシは肥料もよく吸収し、このように葉の色つやも好調です
またこの状態は、病気予防の殺菌消毒の効果の現われでもあります


このクチナシのように骨格を作り上げている段階では、各枝の伸び具合にまだムラがあります
まだ8月の中旬ですから、少々深めに芽を摘み、葉の数を減らしておきましょう(結果として葉刈りに近い作業になりました)


強めに伸びた芽は1~2芽で摘み、葉も刈っておく
普通の勢いの芽は下のように葉を刈らずに残しましょう


ちなみに、くちなしの葉は対生ですが、このように3枚の葉がでることもありますね
このような葉の出方を三輪性というらしい


やはり5月19日のつれづれ草でご紹介したくちなし(当時の画像)
こちらはかなりの持ち込み品なので、各枝の伸び具合にも落ち着きがありますから


ご覧のように、かなりの樹勢であっても基本の輪郭線はさほど乱れません
やはり持ち込みの古い木はちがいますね


各芽の伸びをよく観察しながら、ていねいに飛び芽をさぐります
そして、飛び芽は原則1芽残しで摘み取りましょう


これから8月いっぱい、好調な樹勢であっても9月中旬くらいが摘みおさめの予定です
それまでに、飛び芽が目につきしだい繰り返し摘み込みます

では

2011年8月2日火曜日

けやきの芽摘みと葉切り(重要ポイント3)

雑木盆栽として不朽の人気を誇るけやきですが
やはり代表的な雑木樹種の山もみじや楓などのように、持ち崩した場合のやり直しが難しい

もみじや楓などであれば、枝が荒れてしまっても
いちど素材にもどしてボディーの骨格からの再出発がききますね

ところがけやきの場合は、まったくの不可能時ではないけれど
素材にもどしての一からの再出発は、かなり難しいことになります

ですから、けやき盆栽の場合は、育てる途中での停滞や曲折はなるべく避けて
そのかわり、いっぺんに急激な飛躍も望まず、冒険もせず、安全第一の培養管理を心がけるのが最大のコツであるといえましょう

そんなわけで、けやきの芽摘みと葉切りについては5月30日に詳しくご説明しましたが
みなさんが失敗のないように、さらにクドク念を押しておきましょう



程よく伸びて、芽摘みと葉切りの時期がやってきたようです

春の植替え後の生育が順調なので、平均して月に2回くらいの割合で芽摘みと葉切りを繰り返してきました
このけやきの前回の芽摘みと葉切りはちょうど2週間前でした

前回5月30日の項で、芽摘み葉切りは月に1回ほどと申し上げましたが、順調な樹勢のものにはとても足りませんね
樹勢のいいものでは月に2回くらい、とここで訂正しておきましょう


芽摘みと葉切り作業が必要になったけやき、上部から見ます

どの枝先からも平均して芽が伸びていますね
根がどの部分においても、平均して順調に活動していることを示しています



芽摘みと葉切りのポイント1

伸びた新芽をよく観察すると、枝元のすそ(元)にやや小さめの葉が1~2ツついています
芽摘みをする場合に1~2節残して切る」といわれますが、初心を脱して中級になった方は

少なくともこのすその葉(元っ葉)の1節目は
その勘定に入れない方がよろしい

というのは、新芽の1~2節のすそ葉(元っ葉)の部分は、節間が極端に短いので
教科書通りに1~2節残しで摘むことを繰り返しいると、同じ場所に芽がたくさん吹きすぎて、そこがゴツクなってしまうからです



ですから、1節残しで摘むという場合でも、最初のすそ葉(元っ葉)は勘定に入れずに
図のように2節を残します



最初のすそ葉(元っ葉)は全部切り取る
1節目(じつは2節目なのだが)で切り、残された葉の面積を3~4分の1くらいに葉切りする

そこまでご説明すると、かならず以下のご質問を受けます
「1節目(じつは2節目)で摘んでいくと、一年間ではかなり伸びてしまい、樹髙はどんどん大きくなっちゃいますが、どうしたらいいんですか?」

これは当然の疑問ですね

その回答は、樹髙の短縮は落葉時の剪定で本格的に調整すると覚えて下さい
その時に具えて、活動期に新芽摘みや葉切りによってフトコロ芽を元気にしておくわけです

よろしいですね



芽摘みと葉切りのポイント2

芽摘みはハサミだけで行なわず、必ず空いた片方の手指も使って行なう
新芽は真っ直ぐに上に伸びているとは限らず、横や下を向いている芽もあります



空いた片方の手指も使って
もぐった新芽をフトコロの奥から引っ張り出して、ていねいに行ないます



芽摘みと葉切りのポイント3

ちなみに、このように各枝先によって伸び方が不均衡なものは、根の強弱が激しく各部署が均等に発達していない証拠なのです
来春の植替え時に、強い根は制御し、弱い根は発達を促すように、しっかりとして根さばきをしましょう



さて、一箇所に芽が混んで、おまけに極端な徒長枝があり、落葉後の剪定まで待てません
そんな時にはハサミを使わず必殺技!

ハサミを使うと切り口が盛り上がって瘤状になることがありますから
下に向かって裂くように力をいれて皮ごとむしり取る(傷口が凹みますね)



現在の姿

5月から8月までにどのくらい成長したか、培養の成果を画像で見比べてみましょう



5月頃の画像

芽摘みと葉切りの成果は顕著ですね
芽と葉の数が圧倒的に増えています



最後に、芽摘みと葉切り作業前と作業後の姿を並べて比較してみます

葉の量がかなり減りますね
ということは、芽摘みと葉切り作業によって、樹勢がかなり制御されていることがわかります

ですから、作業のいろいろなポイントはもちろんですが
水やりと施肥を中心にした適切な培養が一層求められます(安全第一の培養管理)

けやきの芽摘みと葉切りはおおよそ9月の中旬まで
あと1ヶ月とちょっとですね

落葉後の大きく出世した姿を楽しみにして
もうしばらく頑張りましょう