2009年2月27日金曜日

山もみじ取り木素材2

盆栽素材ゲット方法の中で、実生法や挿木法も大切ですが
特に小品やミニの場合は取り木が最も有効な手段です

わずか1~2年の辛抱で、太みと古色を具えた迫力のある幹筋をゲットできるのは
取り木ならではの醍醐味で、お得感も格別です

小品やミニの優良素材が不足気味の盆栽界においては
もっともっと取り木と接木(枝や根)の技術を磨かなくてはいけないと考えています

さて、作業を続けましょう


底網でフェンスを築きます
この場合、フェンスの高さをあまり高くしないように、削り口の上部より5.0mmくらい高ければ十分


赤玉土を入れます
最初にやや荒めの赤玉を半分、上の半分は小粒にします(水はけを考慮)


赤玉を入れすぎてはいけません
土の表面の高さは、削り口がやっと隠れる程度にとどめます(これが重要)

土を入れすぎると、発根の位置が高すぎてたりして
将来に均衡のいい根張りを作ることができなくなります

★ 土の表面は削り口がやっと隠れる程度で我慢すること、取り木成否の原因にはならない!


赤玉に水やりをしてから、よく揉んで細かくほぐし水に浸して絞った水ゴケを表面に敷き詰めます
この場合も怖がって厚めに敷いてはいけません、くれぐれも(赤玉の場合と同じ)

★ 表面を保護する水ゴケはごく薄めに敷くこと、取り木成否の原因にはならない!


こんな感じ

この段階で作業を完了するひともけっこういますが
やっぱりフェンスの上からビニールを巻いてやったほうがいいでしょうね

このままでは少々保水が不十分なようですね


こんな感じで、作業完了

作業終了後は植替えた雑木類と同じく、ムロに保護し
その後のムロ出しのタイミングなども同じでけっこう

ただし、この山もみじの場合は芽数が少ないので剪定は行いません
芽の数が多いほうが発根率がいいからです

順調なら入梅ごろに発根し、秋には切り離しが可能です

★ 芽数の少ない素材は剪定を行わず、できるだけ枝葉を多く残す

それでは、みなさんも優良素材をさがしてチャレンジしてください

2009年2月26日木曜日

山もみじ取り木素材

数日前、懇意な同業者の棚で取り木素材にピッタリな山もみじに出会いました
ご覧のとおり、幹の途中が徳利のようにくびれていて、なんとも不思議な形状です

おそらく、取り木に失敗して剥皮した上下がつながってしまい
そのまま何年も放置されていたので、このような異形になってしまったのでしょうね

しかし、コケ順もおもしろいし傷っけなし
枝順もなんとかなりそうです

交渉の結果、思い通りの格安でゲット!!
ウズウズしながら家に持ち帰り、さっそく取り木作業にかかりましたので

その様子をご覧にいれましょう

★ 2月中旬から3月初旬あたりが雑木類の取り木の最適期


くびれの一番太いところ、つまり新しい足元予定の直径が8.0cm、足元から白点までの高さも8.0cm
ですから、樹高は10cm以内でゆうゆうと仕上がります


裏から
こちらも溝のところどころで上下から肉が巻いてつながっています


古い幹肌のうえくびれているので、いきなり切り出しナイフでは無理
丸ノミで削ります、慎重にやりましょう

★ 青味がかったところは生きている形成層、下方の茶色に変色しているのは死んでいる木質部


側面から見ます
くびれているので削りにくいですね


剥皮した箇所がつながらないように、十分に削ります

★若木での剥皮の幅は、幹の直径の1.0~2.0倍が理想、青味のある形成層は完全に取り除きます
 

上部の切り口を鋭利な切り出しで仕上げます
下方はその必要がありませんよ

★ 剥皮する上部の組織を損なわないよう、よく切れる刃物を使いましょう

つづく

2009年2月20日金曜日

楓サイズの短縮2

前回で新しい芯を決め、枝の上部から徐々に剪定をしてきました
その手順にしたがい、常に全体のバランスを崩さないように気をつけながら剪定作業を続行します


上部の剪定が一段落したので、引き続き中間の枝に移ります


この段階ではまだ剪定が全体に及んでいません
各枝によって粗密があり、全体のバランスがとれていませんね


剪定が下枝にも及び、各枝の粗密のバランスも整い
作業が完了に近づいてきました


頭頂部のようす


枝の部分の拡大図


剪定が8割りがた完成した時点で、新しい鉢に植替えました

間口のサイズはピッタリ、奥行きもタップリ、ちょっと深い感じもしますが
改作後の培養面を考慮してこの鉢を選びました

ところで、剪定を完成させてから植替えた方がいいのでは?
という疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょうね

このお答えは

盆栽とは、木と鉢が一体となって美しさを表現するものですから
鉢によって正面や幹の傾き角度、枝の長短などが微妙に変化してくることが多々あるのです

ですから、最後の仕上げは新しい鉢に移してからにするべきなのです
これはしっかり覚えておいて下さいね


後ろ姿

それでは

2009年2月14日土曜日

ムロ出し準備

昨年の12月初旬から中旬にかけてが冬囲いの時期ですが
節分から立春を過ぎたら「ムロ出し」にむけての心の準備をしておくのも盆栽人の務め

ムロ出しの準備として心がけることは、冬のもっとも寒い間に保護されていた盆栽を
徐々に外気に慣らすことから始めます

ムロ出しへの準備は次のような手順で行います

1 寒中でも昼間のムロ内の温度が上がり過ぎないようにするのは当然ですが
  この季節には陽射しがかなり強くなってきているので、さらに気を使ってやりましょう

2 ムロの扉を開けておく時間を少しずつ長くして外気に慣らします

3 昼間は常時外気に当て、夜間のみ扉を閉めるようにする

4 比較的気温の高い日が続くころを見はからって、夜間も扉を開けっ放しにする

5 3月の中旬ごろまでは、雪や強風、遅霜など、天候の変化が激しい日々が続きますから
  その時々に柔軟な対応をして、盆栽たちの無事なムロ出しの日々まで気を緩めないでください

私も立春を過ぎたあたりで、(4)のチャンスがくるのを狙っていたんですが
寒い日々が続いたり、風の強い日があったりでうまくいきませんでした

ところが、今日の関東は20℃をこえるバカ陽気、ちょっと動くと汗ばむほどでした
このチャンスを見逃してはいけません!



向って右側のムロの扉は、今夜から閉めずに開けっ放しにします



このムロは雑木専用のムロで、奥の方に植替えたての盆栽も入っていますから
もうしばらく(3月中旬ごろまで)は夜間には閉めっきりにします

以上がムロ出し準備の心がけですが
ここで注意点

1 ムロの屋根や側面の風除けを取り外してはいけません

2 構造的に密閉できないムロの場合は、そのままにします

3 昼間の乾燥には、ますます気をつけましょう

4 地方の気候によって管理の時期に多少のヅレがあります

では、くれぐれも盆栽管理に怠りなく

2009年2月10日火曜日

楓サイズの短縮1

国風展の小品棚飾りのサイズはおおよそ17~18cm
天に飾る主木でもぎりぎり20cmどまりでしょう

この17~18cmというサイズがどこからくるかというと
間口が約80cmの箱卓(はこしょく)のサイズに理由があります

箱の中にいれてちょうどバランスのいい盆栽サイズが、おおよそこのくらい
それで盆栽界では、このサイズの小品盆栽を「国風サイズ」と呼んでいます

ところで、10cmのミニサイズでも国風サイズでも、長年維持し続けるのは大変なことで
ベテランの愛好家さんほどこの苦労を味わってきています

思い通りのサイズで完成させて喜んでいるうちに
心がけてもちょっとずつでも大きくなるのは仕方のないこと

何年かにいちどは思い切ったサイズ短縮の作業が必要になるので
怖がらすにしっかりと計画を建て、実行あるのみです


かつて盆栽カレンダーの表紙にもなった経歴を持つ楓の名品
現在の樹高は17cmと国風サイズぎりぎり

現状で思い切った剪定を行わないと樹高はさらに大きくなり
樹冠部に勢いが集まってバランス下崩れてしまい、取り返しのつかないことになります


剪定の前に正面の角度をいろいろ観察検討しておく
ここに至って作業を急いではいけませんよ、ともかくよくよく観察することです


頭の部分

新しい芯となるべき芽当りがあることをしっかりと確認することが第一番
いくら胴吹きしやすい楓という樹種であっても、この作業だけは欠かしてはいけません


樹高短縮の剪定の手順は、まず樹冠部から剪定を開始します(高さ15cm地点)


徒長していた芯を切る
その下の左右の小さな芽が新たな芯になります


付近の徒長枝も芽当りを確かめながら荒切りしておくと
新しいサイズの全体図が予想しやすくなります(重要・基点作り)


荒切りにより樹冠部付近をザット剪定しました
この新しい樹冠部を基点にして、上部の枝から徐々に追い込んでいきましょう

つづく

2009年2月3日火曜日

楓根の接ぎ(貫通式)

さあ、根接ぎ作業もいよいよ佳境に入り
穂木を貫通した二つの穴に差し込む段階になりました

くどいようですが、ここまでの復習も兼ねて注意点のオサライをしておきましょう

1  作業適期は雑木の植替え時期(1月~3月中旬)
2  親木の根は十分にほぐし、必要なら水洗いしてもよい
3  根張りの欲しい箇所を確かめ、穴の入り口(根の欲しい箇所)と出口をしっかり見極める
4  穂木は根をほぐしてゴボウ根は切っておきます
5  穂木の根元の直径を計り、それよりも1~2mm太めのドリルの刃先を使用する
6  穂木の先端の芽を汚したセロテープで保護

以上用意できましたか?



第一穴のようす、穂木の先端の芽を傷めないようにソーット差し込みます
穂木の根もしっかり整理してありますね

7  その前に、穂木の足元の片面の皮(上面)をナイフで薄く剥いておきましょう(形成層が見えるくらい)
   肉が盛り上がってきて、穂木と穴の形成層がお互いに接着しやすいためです



左の第二穴にも挿入しました
ここでも穂木の根にご注目、将来の根張りになることを想定し、形よく剪定しておきます



出口の拡大図
クッション付の細い釘で軽く止めておきましょう



入り口と出口の傷口はカットパスターで保護
根接ぎの作業はこれで一応完了です



また植込みの作業が残っていますが、出来具合と植込み角度を確認します



8  穂木がしっかり元まで挿入されているので、すでに根張りがあるような気分です



植込み完了です

9  親木は小枝のほぐれを重視した普通の管理をしますが
   穂木は先端の芽をできるだけ徒長させ肥大を促します

10 入り口部分で親木と穂木が接着する時期の目安は、夏以降です
   接着が確認できない場合は、来年の夏まで我慢、決して焦ってはいけませんよ
   出口の穂木をやや凹むように切断し、かっとパスターで保護して傷口の完治を目指します

それではみなさん、大手術をやってみましょう!!

盆栽整形外科医になったつもりです!!