2019年10月30日水曜日

獅子頭もみじ

 ある名の売れたベテラン愛好家さんが、ご病気のため引退されるについて、その愛蔵品を盆栽屋.comが一括まとめ買いしたことはこのブログでお話ししましたね。ところがそのご本人と盆栽の何点かが、15年ほど以前に発行されたある有名盆栽雑誌に紹介されていて、その雑誌も盆栽たちと一緒に松戸の「みやもと園」へと引っ越してきています。


そのうちの1点、文人風の獅子頭もみじです。15年前の雑誌に載っている姿も現在の姿もほとんど変わりなく、わずかに太った感じが異なるくらいで、飄々とした文人風な自然体はそのままです。


15年前の鉢と同じ鉢に入っていて、足元が発達しているのでギツギツな感じです。もっとも、根が可愛そうだからなどと鉢を緩めたりすると、急激に木が太ってしまって、年月をかけて作りこんだ雅味が失われてしまいますから、くれぐれもそれだけは注意しましょうね。


後姿。
この獅子頭の他にも15年前の姿から、間違いなくこの木だろうと想像できる盆栽が数本ありました。
盆栽って、気長に根気よく育てるものだとつくづく思いますね。
みなさん、がんばりましょう!

2019年10月26日土曜日

くちなし(枝ほぐれ)

今回のまとめ買いの中にあったくちなしは私の好みの樹形でした。
かなりの持ち込み品で足元にはかなりの力があるし、幹はわりと芸が細かくよく曲がっているし、枝順も小枝のほぐれもかなりの完成度です。そして何よりも、幹に傷っけのないのがいい。また長年の持込によって木肌がいかにも古色蒼然として貫禄十分です。


夏、遅めに葉刈りをしたのでしょうね。その後の天候不順のため芽の伸びが不十分です。この分だと今年の冬は寒さ対策をきっちりやる必要がありそうです。


古い持込を感じさせるよくほぐれた枝先がみごとです。


正面やや上方より。


正面より見た足元。いわゆる腰の低い安定感のある姿です。


後ろから見る姿にも安定感が感じられます。


まんべんなく小枝の先はよくほぐれています。来春になれば、もう一回り輪郭線を追い込むことも可能です。そうすれば幹筋はさらに力強くみえてくるでしょう。
楽しみです。

2019年10月25日金曜日

石田祥石

先日のまとめ買いの中に入っていた二代平安東福寺の他にも、幾つかの知られた作家の作品が混じっていました。その中にいずれも初期作品と思われる陶器と磁器の「石田祥石・いしだしょうせき」が2鉢ありました。

この2鉢は特別の珍品貴品ではありませんが、じつは祥石の息子さんが盆栽屋で、東京上野のグリーンクラブの一員でもあり、まあ、まんざら知らない顔の仲ではなかったので、取り上げてみたわけです。(息子さんは残念ながら数年前にお亡くなりになられました)


泥もの(陶器)で正方鉢となると、磁器でロクロ製法が主流の祥石作品の中ではまったく珍しいといえましょう。


推測ですが、おそらく作陶をはじめたごく初期の作品と思われます。


こちらは祥石の定番である磁器ものですが、絵付けのされていない青磁です。祥石は伊万里で修行をしたと聞いていますから、この作品は初期ではあっても伊万里の地での修行後の作品の匂いがします。


すっきりとしたボディー、控えめな足のバランスが秀逸ですね。


青磁釉にデリケートなな濃淡があり、使い込みの味もあって秋の実物盆栽などによく似合うでしょう。

まあ、石田祥石といえば唐子や山水の絵付け鉢で知られていましたが、鉢の作家では男性作家が圧倒的に多く、女流絵鉢作家となるとこの祥石をおいて他には思い当たる作家がちょっと出てこないほどに少ないですね。

石田祥石が元気に活躍しているころには、陰では男勝りの祥石を「石田のばあさん」などと呼んでいましたが、上記のように女性の絵鉢作家として質量ともにあれだけの仕事を残したのですから、さすがにたいしたものだと今更ながら感心しております。

2019年10月22日火曜日

二代目平安東福寺

先日まとめ買いした中に、サンザシのミニが入った10cmくらいの二代目東福寺の長方鉢を見つけました。支那鉢でいえば均釉(きんよう)の外縁雲足長方です。出来栄えとしては上々で、初代の初期作品かと見まごうほどのレベルです。


ところで、東福寺の評価鑑定をするときには、まずは初代か二代の作品であるかを見きわめる必要があります。そして二代目であっても各々出来栄えはピンキリですから、作柄に順じて区分けをしておいた方がよろしいでしょう。
これはどの作家にも云えることですが、特に二代東福寺の場合、作品によってかなり優劣の差がある場合が多いと思えるからです。


二代東福寺の本名は水野勇といいますから、「水野勇作」とか「ゆう作」などの落款も見受けます。作柄は上々と申し上げましたが、土目を見ると間違いなく初代の用いたそれとは異なり、二代目の土目です。



二代東福寺には作品の優劣が著しい、と申し上げましたが、その理由として昔から言い伝えられている逸話があります。


代々モノづくりのを業とする家系の場合、未だ次の代の評価が定まらないうちには、当代は自らの作品に次の代の落款を捺して市場へ売り出し、世間の評価を維持しようとすることがある、などとまことしやかに云われます。
東福寺・水野喜三郎も二代目かわいさのあまりその例にもれず、自らの作品に二代目の落款を捺した作品と思えるものが存在する。そのように断言する権威ある大家・研究家も大勢います。

土目と落款は二代目そのもののですが、作柄と作風においては初代のイメージが濃厚ですね。大切に使い込んで時代感さえつけば、風格のあるいい感じになるでしょう。

2019年10月19日土曜日

真柏懸崖復活へ

ベテランの愛好家さんが長期入院ということで、残されたたくさんの小品盆栽たちのほとんどを、今月のはじめごろに譲っていただきました。


糸魚川真柏(上下18cm×左右21cm)の、細身ではあるがけっこう古い懸崖。立ち上がりや幹筋の捩れを見ればその古さはお分かりになりますね。

持ち主の愛好家さんは長い闘病生活にもめげず、盆栽を生き甲斐というか伴侶というか、うまく形容できませんが、とにかく盆栽大好き人間です。


が、しかし、今回の長期入院にはさすがに参ったらしく、ごらんの通り下垂した懸崖の利き枝の先端も日照不足で、やや弱り気味です。


こんな時には、まず枯れ葉や枯れ枝をきれいに掃除して、小枝の隅々まで日差しが入るようにしてやることが第一番のお仕事です。


雑草が生えていればきれいに抜いてやり、肥料も切れているようなので、即効性の液肥の薄いのをやっておきました。切ったりはったりの荒仕事はまだ先のことですね。

秋から冬にかけてはしっかり日光に当て、冬はムロの中で養生して、来春に植え替えます。鉢は現在とても映ってますね。間延びした枝先を少しずつ詰め込んで作り込みましょう。針金での整姿作業は来年の秋以降でしょうね。

2019年10月18日金曜日

けやき箒作り(急性水切れ)

強力な台風19号が関東以北へ去って行った10月13日の朝、盆栽棚の被害状況を点検していて驚いた。つれづれ草にも何度も登場したことのある、我が盆栽屋.comでいちばんの古株であるけやきの葉っぱが、ご覧のとおり丸坊主ではありませんか!

2019年10月15日撮影



前に来襲した15号の被害が千葉県に集中した感があったので、それよりも勢力が強いという触れ込みの19号対策には、4~5日前から真剣に取り組んでいました。

ああ、それなのに、それなのに!
強風にあおられて、全部の葉が吹っ飛んじゃうとは!
なんという酷い姿!

今年のこのけやきの培養管理が十分でなく、樹勢もやや痩せ気味であったのですが、それにしても考えられない惨状です。きっと早くから棚下や小屋などの風当たりの少ない場所に囲い入れたために、十分水が行き渡っていなかったのでしょう。つまり水切れ状態で葉がいくらか萎れていたところを、強風に煽られてために葉が吹っ飛んじゃったでしょう。
まったくの私の不注意としか言いようがありません。

それにしても、これが11月に入ってからのことであれば、葉柄の元の冬芽も充実しているので、来春の芽出しにはたいした影響はないのですか・・・・

葉をすべて落とすにはちょっとばかり時期が早過ぎました!
参った、参った!
この大災難を乗り切ることができるでしょうか?





2019年10月15日火曜日

石化ひのき

何時頃に石化ひのきが盆栽界へデビューしたのか、はっきりした記憶はありませんが、いずれそれほどの年月は経ってはいないと思います。どこの盆栽屋の棚にでも幾鉢の在庫が見られるようになったのは、せいぜいこの10年くらいでしょうね。


ところで、先日まとめ買いをした中に小鉢に窮屈そうに入った石化ひのきを見つけたんです。鉢の間口はわずかに10㎝、樹高はひょろひょろと30㎝にもなりそうな背高のっぽです。


一見なんの変哲もない徒長した苗木しか見えませんが、よくよく眺めてみると足元がしっかりしているのと、自然体の幹筋に何んとない魅力があります。


これから寒くなる時期ですからあまり強い切り込みはできません。飛び芽の先端だけを摘まんでさらっと輪郭を整えておきます。植替えも来春暖かくなってからです。


枝分かれの自然さも魅力ですね。この柔らかさを特徴にしてコツコツとハサミ作りで行きたいとおもっています。


今は大雑把に輪郭線を整えておきましょう。寒さに向かっての強い切り込みは可愛そうですから。


木の裏表も正式には来春に決めることにします。


裾のたかい柔らかみのある自然樹形を目指します。鉢は長方でも楕円にしても、もっと薄手のものを考えています。ちなみに現在の樹高は23.5㎝です。文人調の洒落た雰囲気を目指して、がんばりましょう!

2019年10月4日金曜日

山もみじの改作(続)

前編で取り敢えずは幾つかの画像と解説をしてみましたが、やはり見どころのある素材ではあるし、好みの樹種でもあることなので、もう一歩踏み込んでこの種木の魅力を解析しておくことにします。


昨日の正面と反対側から見ると、前方の根張りがやや弱い感じがします。ただボディーの模様はかなりいい感じになって、変化と奥行きが感じられます。


そして模様もさることながら、幹のコケ順もよくなって、全体に優雅な雰囲気がでてきますね。つまり、もみじらしい柔らさが滲み出てくるということです。


こうして足元をじっくり観察すると、どちらの正面もいいところがあって、なかなか一発では決まらなそうです。


正面の根張りのやや弱いところは、貫通式の呼び接ぎ法で3本くらいの根接ぎをします。三年もすると落ち着いた根張りになるでしょう。この根接ぎはどちらを正面に選んでもやる必要がありますね。


昨日の正面を裏にしてみます。


こちら側は完璧の根張りです。ただこちらの正面では幹模様にやや物足りなさがありますね。柔らかさというか優雅さというか、雑木らしい雰囲気がイマイチです。
来年の春先に根洗いをして本格的な改作を始めます。それまでにじっくりと考えておきましょう。あなたならどっちを正面にしますか?

では!







2019年10月2日水曜日

山もみじの改作

地元の盆栽会で年に数回開催するお楽しみの交換会で落札した山もみじ。今までの持主さんの管理不適切からでしょう、ご覧のようにひどい葉焼けと枝枯れで見る影なしです。

樹高18.5㎝

 だが、枝は見た通りのひどい状態ですが、幹筋の模様や時代感あふれたボディーは優れた素質を秘めており魅力いっぱいです。まさに、掘り出し物の匂いがプンプンです!


 もみじ特有の縦縞の入った木肌から推定すると、樹令はゆうに30~40年を上回っているでしょう。雑木の大好きな盆栽人はこういう持ち荒らした素材を前にすると、とてもじゃないが我慢できなくなるものです。


山もみじ特有の真っ白で美しい縦縞の入ったようすは、優美でなおかつ渋さ満点です。


ボディーを後ろから見てみます。こちらの正面の方が幹模様に奥行きが出る感じがしますから、根洗いをしてきちっと木作り計画を建てる来春までは、一応保留にしておきましょう。


山もみじの場合、呼び接ぎで欲しいところに枝を作れますから、まずはボディーの姿が一番よく見えるところを正面とします。

続く