2008年1月28日月曜日

長寿梅太幹素材

長寿梅の太幹ミニ素材といっても
足元から単幹のまま芯まで上がっているの、まことに珍しい

ほとんどの太幹は、複数の根がとぐろをまいており
その根が太って足元を形成しているのがほとんど

今日ご紹介するこの長寿梅、稀少なミニ単幹素材です
さあ、じっくりと眺めて構想を練ってみましょう


株元に癒着した不自然な痕跡は見えないのですが
ともかくこれだけの太さなので、癒着してこれほどに古くなったものと考えるのが普通でしょうね

ふんばった足元にも力がこもり、幹筋の動きにも躍動感が感じられます
出会った瞬間に強い創作意欲に動かされました

ちなみに、長寿梅の植替えの適期は秋の彼岸ごろと言われていますが
冬の保護を考慮に入れると、やや早め(9月初旬中心)にした方がいいと思います

また仕方なしのギリギリ遅めの限界期は、寒中前までとします
植え替えてすぐに気温が上がって来る時期、つまり早春、そのころにはすでに遅いですよ(根瘤病のもと)

それと、植え替えたあとに、抗生物質系(マイシン)の殺菌剤液に
30分ほど鉢ごと漬けて根を消毒してください

以上のことはしっかりと頭に入れておいてくださいよ


正面の拡大図


早くて3年、完成予定図のように枝ほぐれをみるまでには、5年くらいの培養が必要となりましょうが
稀にみる素質は瞠目に値します


前方上方より

樹高5.0×左右9.5cm

2008年1月25日金曜日

けやき実生の成長過程


No.1 2008/01/25 撮影

か弱い苗だったのが、かなりしっかりと充実しほうき作りの基本形ができつつあります
No.2が特別に成長著しいので、比べると見劣りはしますが、木筋においては決して引けをとっていません

おおよそ半年分くらい成長が遅れていると見ればいいでしょう
盆栽の一生という長い目でみればわずかな差なので、遠からず追いつくことは間違いなし

この段階では、木の太りや枝の伸びばかりに気をとられないで
何よりも、ほうき作りの「筋」を見誤らないことが肝心です


参考までに、2007/05/25 撮影の姿です
いじらしいほどに、幼~い、ですね


No.3 2008/01/25 撮影

このNo.3もかなり太り、幹や枝の充実が著しいですね
昨年の夏以降に成績がよく、しっかり成長しました

植物にも人間と同じく、伸び盛りの時期があって
それが個々に少々ずれて訪れるので、目立たない奴が急激にゴボウ抜きに出世することがあるんです


ちょっと貧弱で頼りなかった昨年(2007/05/25撮影)の姿
驚くほどの成長です


さて、このNo.3には前項でご紹介した枝抜き作業が必要です

1 白点で印した枝分かれが蛙股になっていますね、これは外しましょう
2 緑点と赤点で囲まれた箇所には三つ又の枝分かれがありますので
  枝分かれが素直になるよう、二又に直します

2008年1月21日月曜日

けやき実生必殺技(続)

さて、昨年末に必殺技をご披露したけやき実生二年生
早くもお約束の一ヶ月が経ちました

大切にムロの中で越冬中ですが
さあ、はたして必殺技の効果はあったでしょうか


ていねいに針金を外します
針金は切ってもよろしい、ですかくれぐれも間違えて枝を傷つけないように


外したままの姿
なんと一ヶ月で癖がついてしまいました

このまんまじゃ、作りたての箒のようです(笑)


わずかに手を添えてほぐしてやりましょう
うん、よしよし、これくらいですね


枝分かれがしまって、天に向かってそびえ立つけやきの姿になりました
枝の分かれが、このように鋭角になると勢いが出るんですね

さあ、こんどは細部の検証です
天に向かう梢の線や空間を乱している枝を見つけたら取り除きます

ところで前の項で、枝抜きの要点は

1 放射状に伸びた枝を良とし、その流れを極端に乱す枝は不要枝とします
2 枝の芯からの別れの角度が大きいのも不要枝
3 不要枝を外すにはハサミを使わず、指先でむしり取るような感じで慎重に作業する

とお話しました

よく見ると、四つの白点で示した枝が流れを乱していますね
枝元の分かれの角度が蛙股で、きれいではありません


拡大してみます

この(白点)が枝元です
今のうちに取り除いておかないと、後々後悔することになります


ハサミを使わず、引っ張り加減に下方へ向かって力を入れる
むしりとる感覚でやるとうまくいきます


途中経過

皮一枚を残した途中経過、この状態から下方へ引っ張ってはいけません
傷口から下の樹皮を傷つけないよう、注意深く最後の皮を指の力で切り離します


途中経過の拡大図
最後の皮一枚を切り離すときが一番肝心ですよ


いかがですか?

針金もかけず、たいした手間もかけず
けやきの理想的なほうき作りの基本形の完成です

必殺技をかける前の姿と比べてください、まるっきり変わっちゃった!
 
けやき実生二年生のこのあとの作業は、春の植替えになります
そのときにもちょっとした工夫がありますので、またつれづれ草でご紹介しますね

では

2008年1月14日月曜日

真柏のお化粧(石灰硫黄合剤)

真柏や杜松のジンやサバに、腐り予防と化粧を兼ねて石化硫黄合剤を塗ります
成分の硫黄が腐りとめになるそうで、その昔は白粉(含まれる鉛がその役目をした)を塗ったそうです


石灰硫黄合剤を塗る前に、幹洗いをていねいに


ブラシや水圧ポンプでこびりついた汚れや苔を掃除します


ここでちょっとした裏技があるんですよ

石灰硫黄合剤の原液に、少々の白の水彩絵の具を混ぜるんです
原液だけだと、乾いた後で黄色っぽくてギラギラくどさが気になるんですね

水彩絵の具を混ぜるときれいな白色に上がります
どうぞお試し下さい


あまりいっぺんに液をタップリつけないで
ていねいに、ていねいに

注意点

1 水吸いの部分にはみ出さないように
  冬季なら害はありませんが、見た目がよくないですね

2 葉に液体がかからないように
  これは害有りですよ

3 鉢土に染み込ませないように
  根がヤケてしまい、大いに害有り


きれいになりましたね

お化粧完了後には日に当ててよく乾燥させましょう
乾燥前に水をやると流れてしまいます


拡大図

なお、雑木類の幹肌の化粧には水彩絵の具を混ぜてはいけませんよ

なぜって?

雑木類の表皮は生きているんです
おわかりですね

2008年1月6日日曜日

山ずみの魅力

ふつう盆栽界で、「ずみ」といえば山取りの黄色い実成りの「山ずみ」のことをさし
おなじ仲間の紅い実のかいどうは「深山かいどう」と呼び、きっちり区別しています

「深山かいどう」はもちろん「ずみ」にも改良園芸種がありますが
「ずみ」に限って盆栽人にはかなりのこだわりがあって、山取りものをわざわざ「山ずみ」とていねいな呼び方をします

このことは「山ずみ」の盆栽としての優れた特性が抜群であり
好素材が稀少である証拠なのです

さて、その山ずみの優れた特性を

1 鮮やかでありながらも通人好みの渋さも兼ね備えた小さい実成り
2 細かく分岐する優れた枝打ち
3 持込の古さととも寂びた野趣を感じさせてくれる木肌の荒れ
4 古木となっても元気で盆養に耐える強壮な樹勢
5 取り木や挿木、接木で多様な繁殖法

といいことばっかり並べましたが
たった一つだけ、なかなか実が成りにくいという、盆栽人によく知られた短所もあるんですね

この山ずみの実成りについては、おもしろい話がいっぱいありますよ

実を成らそう成らそうと何年も我慢辛抱したが成らないので、とうとう諦めて友人に譲ってしまったら
なんと翌年にはみごとに実が成って、じたんだふんで悔しがったがもう遅かった

私だって数年前に、同業者が長いこと丹精してがとうとう実がこない古い山ずみを2鉢買って(もちろんしっかり値切って)
1鉢は翌年、もう1鉢は翌々年と連続で実が成ったことがありました(大いに得した気分になる)

ですから、山ずみは実が成りにくいという先入感に支配されずに
「いいや、実が成るまでゆっくりと木作りしていれば、忘れたころに成るだろう」とゆっくり構える気持ちが大切です

山ずみには雌木雄木の区別はなく、いちど成ればその後は毎年花芽をつけるようになりますから
その点は枝性のいい野梅と同じなんです

盆栽は、根気、根気!!



愛好家さんが山取りの山ずみを取り木した好素材、完成予想サイズは樹高7.0cm

1 取り木予定の箇所をあらかじめ針金で1~2年間結束しておく
2 枝葉で作られた養分が針金でせきとめられて膨らんだ部分に環状剥皮の取り木をかける
3 さらに1~2年かけて親木から切り離す



赤点は将来の芯で、白点が枝の候補

萌芽力の強い山ずみにはあちらこちらに芽当りが見られるので、枝配りには不自由しませんし
枝の欲しいところ(青点)には呼び接ぎも容易です



枝配りの基本予定図

一度実がなっているので、ゆうゆうと木作り枝作りができますね
枝を作っている間に、根もしっかりと発達させて一歩一歩根気よく完成をめざします

2008年1月4日金曜日

紅千鳥改作計画・ミニ盆栽時代に挑む

小品盆栽の人気が高く、サイズもどんどん短縮されてくるいまや10cmクラス(仮にミニと呼びます)と以下のサイズ(同じく超ミニと呼びます)は,ますます隆盛の感があります

その人気の理由を、マンションに住む人が増えたとか、盆栽人口の平均年齢が上がって
大きな鉢は重たくって扱いにくくなったから、という専門業者が多いですね

しかし私は、盆栽に拘る者として
近年における「ミニ盆栽界の技術の発達」という視点を忘れてはならないと思っています

昭和30年代の後半から40年代に興った盆栽大衆化時代のミニ盆栽界にも
幾多の名人上手が活躍していたし、名品もあったことは事実です

しかし、この20年ばかりのミニ盆栽界における技術の発達は眼を見張るものがあり
それは、当時と現代の作品とを写真帖で見比べてみれば納得していただけると思います(次の機会に)

一言でいうと、昔は、小さな鉢に植えられた小さな盆栽の
精一杯に生きる健気なさや愛らしさを表現するのが精一杯だったようです

ところが、培養技術も整形技術も格段に発達した現代ミニ盆栽では
大物盆栽に負けない、堂々たる力に満ちた模様木の姿も可能になりました

ということで、今年も優れたミニの素材を探しまくり
みなさんにご紹介するとともに、その改作に邁進したいと思っています


さて、今日ご紹介するのは、先日に頒布コーナーでご紹介した紅千鳥の素材

最初に出会ってから約半年間、値段の折り合いがつかなかったんですよ
その間、持ち主と出会うたびに辛抱強く値切りました

いいですか、相手を怒らせないように、紅千鳥の素質を素直に認めながら
その上で、妥当な値段(こちらの希望値段)にまけてくれ!
としつこく交渉し続けたんです(笑)


足元の拡大図、足元の幹径は6.0cmです
丸幹で傷っけがなく模様を振りながらコケているのが嬉しいですね

この立派なボディーをうまく使えば
堂々たる模様木になりそうです


白線から上はコケ順もなく模様も甘くなって平凡ですね
白線で切り戻してコケ順とボディーになじんだ模様をつけることにします

赤点は、芽の出る可能性、また芽の欲しい箇所
希望の箇所に芽が出ないときには呼び接ぎにより枝を作ります

芯を立てる予定の箇所に芽が出ないときは、呼び接ぎをしてから切ることもあり得ます


完成予想図、予定樹高は約9.0cm

現在ある枝で使えるのは1本だけでしょう
あとの枝は、胴吹き芽か呼び接ぎで作ることになります

ミニ盆栽において枝順は、一、二、三の枝までが特に重要なので
しっかりとその位置を決めるようにします

それと、せっかく短く切り戻した芯は間延びのした模様にならないよう、しっかりと模様をつけます
芯の作りようでは、全体の構図に緊張感を欠くことになりますから要注意

基本の骨組みを作るのに3年
そんなつもりで辛抱強く作りこんでください