2012年9月23日日曜日

初級・中級盆栽集中講座(3):雑木類葉刈り

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。

  • 時期:5月中旬から6月中旬頃まで(春の新芽が固まってから)
  • 適用樹種:もみじ類・楓類・けやき・姫しゃら・ブナ・赤芽ソロ・カナシデなど(花や実よりも主として枝先の細かさを鑑賞する樹種)
  • 目的:短期間に小枝をふやす・徒長させない・内側の枝(ふところ枝)を守る
  • 道具:剪定小鋏・ピンセット
  • レベル:超初級から達人まで絶対必要な盆栽技術(葉刈りなくして盆栽なし!)
  • ここがポイント
    • 内側のふところ芽は力をつけるために葉を残してもよい
    • 作業後日陰で管理してはいけません、普段どうりの日当たりの良い棚に置きます

PARTⅠ 実技教材・山もみじ


春の芽だし前の姿です


春の芽摘みをして5月中旬以降になると、このように葉が生い茂って木姿が見えなくなります
触ってみて葉がしっとりした感じから、カサツイタ感じになれば、葉が固まっています
ところで、作業をする予定の前日に大風が吹いて、棚から落ちて鉢が割れてしまいました


さて、葉刈りバサミで葉を一枚ずつ刈り取ります
葉柄の部分を切ります、決して手でむしったりしてはいけません
葉柄の元の部分に隠されている次の芽も引っ張って取れてしまうからです
丁寧、丁寧!
根気、根気!


こんな要領で一枚ずつ刈り取ります


おおよそきれいに刈れました
ところで、春先に掛けた針金がはこの時期にはずしましょう
雑木類の場合は今はずさないと、たちまち食い込んでしまいます


よけいな芽をかきとり
徒長枝をつめ
必要な個所に針金を掛けます(これは秋落葉後にはずす)
今は植え替えの適期でないので、間に合わせの鉢に、根はほごさずに入れておきます
作業終了

PARTⅡ 実技教材・ケヤキ


養成中のケヤキの箒づくりです
かなりできあがっていますから、本鉢へ移すはずでしたが
今春はやりはぐってしまいました


さて、作業開始です
ところで、もみじと違って、ケヤキは葉柄が短いですね


面倒くさいのでハサミを捨てて、指で引っ張り始めました
おっととっと・・・・
さっきはハサミでていねいに、といったばかりなのに!
ご心配なく
ケヤキの場合は次の芽が葉柄の脇にあるので、引っ張っても大丈夫
次の芽は葉柄と一緒には取れません
小枝を折らないように気を付けて
指先を使いましょう


こんな程度でいいでしょう
まだふところの葉はかなりついていますが、これ以上踏み込むと
小枝を痛める恐れがあります
葉刈りの目的は充分に果たしています
全ての葉を刈りたい方は、ピンセットで一枚ずつ小枝を痛めないようにします


ハサミで軽く伸びすぎた小枝を剪定します
これで作業終了です

2012年9月22日土曜日

杜松芽摘み納め

長く厳しかった残暑も九州を襲った大型台風の通過前後から
やっとやわらぎをみせ、過ごしやすい気候になってきましたね

さて今日は、杜松の今年最後の「納め」の芽摘みについて勉強しましょう

盆栽のジャンルとして、杜松は黒松や赤松、五葉松などと同じく松柏類に入りますが
本来はヒノキの仲間に入るために性質は違っていて、培養的にもやや異なります

暖地に自生するため、整枝剪定などは真冬を避けた方が無難であり
植替えの時期も、春先よりも4月中旬から5月にかけて行ないます

培養的に念頭に入れておくことの主なことは、杜松の根は黒松や五葉松に比べてやや細根なので
根元の根の塊に水が通らないことがあって、衰弱の原因になることが多いことがあります

ですから、植替えの間隔があいている場合は、根元の芯の部分が乾きすぎないように気をつけて
たまには鉢全体を水につけて、たっぷり水がいきわたるようにするのも一つの方法です

それでは


8月15日撮影

8月22日に古葉掃除と芽摘みを行なった杜松
日光と高温を好む杜松にとっては、今年の猛暑はかえって追い風になって、培養は順調です

8月22日  8月24日


わずか20日ほどで順調に芽が吹いて、次の芽摘みの時期がきています

杜松の秋の芽摘み納めは、だいたい9月中旬から彼岸ごろにかけて行ないます(関東地方)
この時期に最後の芽摘みをすると、次の芽が吹いてちょうどいい長さで止まってくれます


作業途中経過

まだ各枝の隅々には摘み残しの芽が残っていますね
また、差し枝の先端は、勢いをつけるためにワザと伸ばしっぱなしにしておき、芽摘みをしません


特に勢いのいい樹冠部は丹念に摘み込みます
まだまだ摘み残しがあるようです


差し枝の先端を残して、芽摘み作業完了


作業完了の樹冠部


摘み込みを控えた差し枝の先端


作業完了後の後ろ姿


★ さて、これより付録の隠し技

なんだこりゃ!

さて、これは

1 部分的に勢いがよすぎるので、その部分の勢いを抑制し
  その部分の勢いを他の枝に行き渡るようにしたい

2 晩秋から冬の展示会に出品予定なので
  枝棚を薄く維持するために次の芽を伸ばしたくない

などの目的をお持ちで
しかも全体に樹勢のいい杜松の場合は、これから紹介する付録の隠し技で解決してみましょう


伸ばしたくない部分を遮光率30~50%くらいの寒冷紗で覆います
極細の針金でヘアピンのようにして固定します


この杜松の場合は、下枝に比べて樹冠部の勢いがよすぎるので
その部分を制御するのが目的です

しばらくするとj寒冷紗の下でも胴芽をかけますが
その芽は遮光されているので、伸びが制御されるという寸法です

作業後を施した場合の注意点

1 鉢そのものは日当たりのいい置き場所で培養すること
  決して日陰や寒冷紗下においてはいけません

2 10月の中旬頃になって、芽の動きが止まったころに寒冷紗を外し
  その後は十分に日光に当てるようにします

3 その他の培養は、作業を施さない杜松たちと同じにします

チャレンジするひとは、実験的に部分からはじめて
要領をよく飲み込んでから始めるとよろしいでしょう

では

2012年9月5日水曜日

篠竹の盆栽

夏になると草物盆栽が目を惹くようになります
笹や竹や、それに水辺に自生する葦や石菖なども涼しげですね

さて、春あたりから棚のすみにあったこの篠竹も、ズーッと気になっていて
目に入るたびに手入れをしてやろうと思うのですが、ついつい延び延びになっていました

そう言うと、みなさんのなかには、「草物盆栽って、手入れすんの?」と思う方も多いでしょうから
手入れによってどのくらい鑑賞価値が高まるか、実際にご覧に入れてみましょう


高さは15㎝ほどありますが、鉢の間口はわずかに4.0㎝のミニサイズ
おそらくこの小さな鉢に入って5年以上は経っていると思います

ところでみなさんは、これ以上どこへ手をいれるのかな、と思うでしょうね
ここでまず、草物盆栽の手入れの基本は、「掃除」であることをしっかり肝に銘じて下さい


第一番目にやることは、枯れた篠をもとから切り取ります
全体で眺めていると気がつきませんが、この枯れた篠が案外にたくさんありますよ


篠竹の皮は棹(かん)が成長しても自然には落ちませんから
この皮を丁寧に剥いて取り除くのが主な仕事です

棹(かん)は粘りがあって丈夫ですが
折らないように気をつけます

小さなピンセットや薄刃のカッターなども使いましょう
しかし、何と言っても人間の指先にまさる道具はありませんね


こんな感じです
伸びかけた竹の子が棹(かん)になりかけているのが目立つようになりました

もう一息!!


これくらいきれいになるまで徹底してやり抜きましょう


「掃除」を主な仕事として、手入れが完了しました
枯れた皮がすっかり取り除かれたので、むさ苦しさがなくなってすっきり

持ち込みにより地表に露出した地下茎のからみもおもしろく
納涼の風が感じられるようになりました


盆栽の下草としての役割が一般的ですが、このように舟形石や滝石などとの取り合わせも一興があります
葦や紅ちがやなども裾の枯れ葉をこの要領で掃除してやれば、鑑賞価値は抜群にあがりますね


ちなみに、笹と竹の区別は、棹(かん)が成長したあとまで皮がついているのが笹で
竹は棹(かん)が伸びきると自然に剥落します

よって、野山に自生する篠竹(しのだけ)は
小さい竹とはいえ笹の一種です

ではよろしく