2021年2月20日土曜日

九眼長城(名品紹介)



貴船石 銘・九眼楼長城
間口8.5×奥行き6.5×高さ7.0㎝

本来ならば春の植替え準備に取りかかる時期なのに、最近巡り合った素晴らしい水石を皆様にご紹介したくって、パソコンの前から離れられないでおります。
親しい同業者が持っていたこの茅舎石が欲しくって、オネダリシテやっと譲ってもらった汗の結晶です。 それにその時点では命名もされていなかったのです。


正面やや右側面より

二層の構造の高楼と四方に狭間を備えた堅固なイメージから万里の長城における最も規模の大きな九眼楼から命名しました。


正面やや左側面より




台座は嵌ったままめったに外れません


正面やや上方より




後ろ正面より

産地は京都の貴船石で、養石されて随分と年月が経っています。古色感に申し分はありません。


正面やや左側面より


台座と石の底面
九眼楼は万里の長城の中においても最大規模の大きさと重要な戦略的な意味をもった要衝の楼閣で、二層の展望台と周辺には各々九つの狭間をもった堅固なつくりになっています。
 

2021年2月19日金曜日

黄梅(迎春花)


他の木々にさきがけて咲く様があたかも春を迎えるような趣であるところから、迎春花とも呼ばれる黄梅です。


盆栽屋.comのネットショップに載せてある黄梅の古木が、気がつくとまだ色彩の少ない盆栽棚で鮮やかに自己主張しているではありませんか。


黄梅の魅力はなんといってもこの可憐で清楚な小輪の花と、白色に輝く幹枝の古びた風情でしょう。


花は咲いても実の成らない黄梅は、挿し木や取り木から繁殖する他はありません。
春爛漫にさきがけて庭の片隅で可憐に咲く黄梅の色彩が陽に映えて光っています。
まさに、春近し!

 

2021年2月14日日曜日

名工・日比野一貫斎


盆栽を飾る台は卓台(しょくだい)とか花台(かだい)と呼ばれ、飾る盆栽や鉢の形との組み合わせより様々に選択されます。
卓台の材料にも、紫檀、黒檀、花梨などの唐木をはじめとして、桑やその他の雑木類までが用いられます。
形も長方形、正方形、丸形、六角形や天然の形を模した根卓(ねじょく)など多岐にわたります。まさに、この卓台の世界も盆栽の内の重要な一つのジャンルとして名工や名品が存在する魅力溢れる世界なのです。


間口48×奥行き30×高さ15cm

花梨甲玉透平卓(かりんこうだますかしひらしょく)と呼びます。この形の卓台は大正、昭和に渡って活躍した日比野一貫斎の名品の写しです。


故に、花梨甲玉透一貫斎好み平卓などと記述されることもあります。




天板の中央に反り止めの養生が施されていますね。


シンプルでありながら緊張感あふれた造形美が感じられます。
(手前の足の爪先に僅かなカケがあります)


足の側面も見所、肉厚の材料を削った職人の手練の技の力が伝わってくるような感じです。


側面を見る。この形の卓は側面の足の部位が見所であるため、造形美に優れた杢(もくめ)を張り合わせている細工によく出会います。

 

2021年2月12日金曜日

唐木舞葡萄地板


旧くから東南アジアやインドなどから中国を経由して輸入された紫檀、黒檀、花梨などを唐木と呼んで珍重しました。中でも原木の根元に近い部位は葡萄が空中を舞いながら渦を巻いたような天然の紋様に魅了されます。


この花梨の舞葡萄の地板はほとんど人の手が入っていない天然もの。間口54×奥行き36×厚さ3.5cmで、木肌のイボイボの紋様の面白さは格別です。


洋上に浮かぶ島のようなイメージもあってなかなかの天然の造形美があります。


地板の魅力と見どころはいろいろあります。
凹凸の変化にとんだ形や色彩や質感も大切ですね。



反対正面より。


見る角度によってかなり違ったイメージになります。色彩と質感もことなります。
こんなに激しい天然の地板に、お気に入りの小鉢や小さな壷でも飾ってみましょう。

 

2021年2月10日水曜日

箱書き見本


盆栽だけでなく盆栽で使う道具類(鉢や添えの水石など)は繊細で傷つきやすいものがおおい。挙げたものの他でも添配(てんぱい)と呼ばれる人形などの添え物も普段から丁寧に扱う必要があります。


広東釉外縁切足丸

傷をつけないためには第一に丁寧に扱うことですが、それとともに、そののものの価値に相応しい入れ物を用意することです。


瑠璃釉反縁切立雲足正方

これらの8つの桐箱はすべて古銘鉢を収納するために新調した桐箱です。ごらんのように上質の柾目板を使って端正で丁寧な仕上がりです。


天目釉外縁切足長方

箱には作家名や鉢の形状や釉の名前を墨で記してあるので、中身は一目瞭然というわけです。


南蛮外縁陽刻文切足丸

この8つの鉢の中で、この南蛮だけが支那鉢でした。あとはすべて日本鉢です。


焼締反縁獣面足丸

箱の上部に嵌め込んである黒いものは黒檀の爪掛け、つまり開閉のときに使うところ。


鉄砂釉窯変渦巻文撫角長方

お好みにあわせて、楷書、行書、草書などさまざまな字体を用います。中身のイメージと字体をあわせることも楽しみの一つですね。


白釉外縁切足正方


橙釉窯変反縁切立切足長方

長い年月の持込により桐箱も狐色に焼けてきて時代感が滲み出てきます。