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2018年4月17日火曜日

台師・鈴木広寿師の思い出

月並みですが、業界人として、また日本盆栽協会や日本盆栽協同組合などと関連団体である日本水石組合の役員同士として、かなり長い年月親しくお付き合いしていただいた鈴木さんが亡くなって、私自身ずいぶん寂しい思いをしています。
その寂しさは友達としての愛惜の情からくるところの、いわゆるセンチメンタルな感情的な面ばかりでなく、もう水石の台座の製作を頼むことができなくなってしまったし、先輩として教えを請うことも敵わなくなってしまったという現実的な必要性からも私を困らせてくれます。

さて、今日載せた瀬田川のこの虎石の台座は鈴木さんの「広寿」の彫落款が記されています。先日水石のオークションで落札したものですが、やはり鈴木さんの作品は石を微妙に引き立ててくれていますね。その作風の特徴として、石と台座が一体となっている感じにあふれています。全体に肉薄であることも特徴のひとつです。

足は小さめで縁を形作る線は緊張感を保ちながらも柔軟で繊細です。

鈴木さんの台座は、石の全体もしくは部分の変化の動きのリズムを捉えるセンスが抜群なため、台座そのものにリズミカルな動きが感じられます。技巧を超えた品格もその特徴でしょう。まさに現代を代表する名人と呼ぶにふさわしい腕前でした。

亡くなる一年ほど前、あれは国風展の売店でひとしきり馬鹿話をしたおりに、「この期に及んで命は惜しはないけれど、なあ、宮ちゃん、もおちっと仕事がしたいや」と真顔で言った鈴木さんの顔が今更のように思い出されます。
さようなら、広ちゃん!

でもやっぱり鈴木さん、もおちっと仕事をしてもらいたかったですね!




2016年12月1日木曜日

水石の手入れ(磨き方)

親しくしている関西のある老舗盆栽園の園主から聞いた話です
その方が修行中の丁稚小僧時代に教え込まれたことが面白いのでご紹介しましょう

ある日、その丁稚に向かって師匠が一個の水石をあてがい、小遣いが欲しかったら他に何にも考えなくていいから
亀の子タワシで一日中この石を磨け、と言ったそうです

言われた丁稚小僧は訳のわからぬままに、とにかく頑張って腕が痛くなるまで
一日中亀の子タワシで石を磨き続けたそうです

すると不思議なことに、今まで誰も見向かなかったその水石がお客様の目にとまり
思いの他の高値で売れ、親方からたくさんのご褒美をもらったそうです

まさに、油よりタワシ千回、と昔の人言った通りで
人目を惹くほどに品のいい光沢が出て、グーンと見栄えが上がったのですね


那智黒石を磨いてみよう、道具は亀の子タワシ
鉢の艶出しに使う椿油もあるけれど、水石の場合は我慢しましょう

ひたすら根気よく亀の子タワシで擦り続けます
油よりタワシ千回、ですぞ!


亀の子タワシで磨くと
落ち着いた鈍い光沢が出ていい感じ


くどいようですが、油よりタワシ千回

それでは!!

2016年6月30日木曜日

明治神宮

すでに56回目を数えた日本水石名品展

日本でも最高峰の水石展示会の一つで
場所は明治神宮の東回廊と本殿の斜め裏側の社務所が陳列場所です

都会のオアシスともいえる神宮の杜での水石展は
深緑の季節であるがゆえに、なお一層の清涼感に包まれていい雰囲気です

さらに外人の観光客が多いことも
日本の伝統文化にとっては張り合いのあることです

昨今の盆栽ブームが話題になっていますが
それ以前から日本古来の文化を真剣に学んでいる海外の愛好家さんたちもたくさんいますよ

参照ページへどうぞ2002年9月10日


今年の出品作品の中で、私のもっとも気に入った恩田さんの遠山石
変化に富んだデリケートな稜線、いい姿でした

水盤で飾ることが少なくなった昨今
卓台の選定にまで周到な配慮がいきとどいて、みごとな飾り席となっています


松戸市の浮ケ谷弘子さんの一席
静岳石です


私の親しい友人の真嶋誠一さんの幸太郎石


東回廊の飾った浮ケ谷勝利さんの安部川石
姿も時代も素晴らしい逸品でした

2015年9月16日水曜日

佐治川石が改めて教えてくれた「光陰矢の如し」

今日のつれづれ草のこの長い題名の理由は
先月の末に、顔知りのセミプロさんから水石を三点譲ってもらったところからお話しなければなりません

さて、それらの商談の中で話を聞いてみると、その三点はある方から販売を委託されたものだということです
そしてそのある方とは、私とも顔知りでそこそこの交際ある隣市のSさんだというじゃありませんか

「じゃあ宮本さん、Sさんに携帯して直に相場を交渉すれば」
と言ってくれたので、Sさんと電話で交渉して話がとんとん進んで譲っていただいたわけですが

翌日から我が家の座敷に置かれた幸太郎、佐治川、貴船の三点が目に入る度
なんか以前どっかでお目にかかったことがあると思えてならなくなったのです

思い出せないけど、どっかでお目にかかってる気がするな
最初はそんな気がするな程度だったんですが、そのうちにだんだん確信に近くなってきました

でもはっきりした記憶にたどりつけない以上は
ただただ漫然とながめているだしかできませんでした

そして数日の後、名石の採れる鳥取県の佐治川付近とは
どのような環境なのだろうかと、「佐治川石」と何気なくキーワードを入れてググってみたんです

すると検索の10位くらいに、「佐治川石の鑑賞」というページが出現しています
うーん、こりゃしめた、と思ってクリックして見るとなんだか見たようなページが現れました

よく見ると、2004/2/27の盆栽つれづれ草のページで
何と、この佐治川石を教材にして水石鑑賞の解説しているじゃありませんか

こりゃ、驚いた!びっくりした!

この佐治川石は以前私の所有物だったんだ
それも11年も前に!

ということで、私の気のせいは本物だったんですね
もちろんその証拠は出ましたが11年前の記憶は戻りませんがね

まさに「光陰矢の如し」
時間を大切にしなくっちゃ!

ということで、11年前と今の画像を見比べてみてください
気のせいか現在の方が時代感と色つやがよくなっているようですね


佐治川石正面


佐治川石正面


主峰あたりの拡大図


主峰あたりの拡大図


右の裾野あたり拡大図

今日はたいしたお話でなくて申し訳ない
ただ、11年という予期しなかった年月が

あまりに造作なく過ぎ去っていたことに
ちょっとばかりショックを受けたようです

そのきっかけを与え、時間の大切さを気づかせてくれた佐治川石に感謝して雑感のメモとしました

よろしく

2014年9月12日金曜日

佐治川掌上石(しょうじょうせき)

現代でいうところのミニ水石のことを、近頃はあまり使われなくなりましたが
それらを一昔前の私らの先輩たちは、「掌上石・しょうじょうせき」と呼んでいました

サイズ的には数センチのミニ(豆)から10数センチくらいまでの
掌に載るくらいの水石をいいます

伝統的に日本人には、小さなものを掌に載せて愛でるという文化があったようで
それらが脈々としてミニ盆栽やミニ水石となって、現代へ受け継がれているのでしょう

小さな小さな一個の石を、とても持てないような大きな山や滝や茅舎などの景色に見立て
掌に載せて愛でて楽しむなんて、おもしろいじゃありませんか

そのときの水石愛好家にとっては、その掌の一個の石はすでにもう一個の石ではないんですね
雄大な山であったり郷愁をおびた里山の茅舎など、そのものに見えているですね

さて、理屈はこのくらいにして
今日ご紹介する掌上石は、↓の佐治川石

10数年前にお亡くなりになった、ある有名なミニ水石蒐集家のご遺族から
まとめて譲っていただいた旧蔵品の中で、特に私が気に入ったのをしまっておいたもの

今回、親しくお付き合いしている台座作りの名人・鈴木広寿さんにお願いして
ご覧のように台座が付きましたので、みなさまに自慢する気になったのです


鈴木さんはこの佐治川を見るなり
「みやちゃん、引き受けるけんど、あんた、注文はつけんなよ」

左右が対称形に近いきれいな稜線で、しかも片方だけが大きく裾を引いている
このような水石の景色をバランスよく見せるための台座は、非常に難しいそうで

それに対して依頼者があれこれ希望を加えると
台座作りの最中にいろいろな雑念がはいってしまい、いい仕事ができた試しがないそうです

私としては、名人がおっしゃることなら従わざるをえない
「すべてお任せするよ、鈴木さんの見立てを信じてまーす」

というわけです


佐治川特有の石肌が渋いまったくのウブ


石底


2週間ほどして鈴木さんが送って下さった台座付となった佐治川石
同封されていた鈴木さんのお手紙には、「ムズカシイ石デシタ」と添え書きされていました

右の大きな裾野が左へ向かう線が急にクビレ上がっていますね
このつながりの線をきれいに表現しながら、さらに景色左右の傾きを自然な感じに仕上げるのがポイントでしょう

ありがとう、鈴木さん、大満足でーす!


やや上からみた姿
左右の裾野の形とボリュームの対照が見どころです


縞紫壇の上々台座


鈴木さんの落款「広寿」

というわけで、今日は自分の勝手な自慢話でた
それにしても、台座名人の腕前には、まさに感謝、感謝ですね

よろしく

2012年11月7日水曜日

スクール速報・水石台座

トリクンはフリースクールの最年少で、参加するようになってまだ1年半くらい
とはいえ、その人なつこく素直な人柄からごく自然に仲間にとけこみ、急激な速度で進歩をみせている超新人です

特に水石の台座作りでは、試作品第一号を見せられたときから
「この子は才能あり」と強く感じました

その後は、紫檀の本格的な材料で4から5作くらいの段階ですが
私は彼には、高いハードルのプロ並みのアドバイスをと心がけてきました

彼は現在の段階においても、早くもすでにアマチュア作家としては十分な制作力を持っていますが
ただ、彼の潜在的な能力からすると、この段階で合格点をやってしまうのはまことにもったいない

もちろん、プロの台師になれとは勧めませんが、プロ、それも達人並みのセンスと技術を持った
アマチュア名人になってもらいたいと期待しています

これからたくさんの水石に出会い、いろいろな経験を積んでいけば
必ずそれは達成されるでしょう

では、実際に彼の最新の作品をご覧に入れましょう


佐治川の山形石小品(間口8.0×奥行き3.0×高さ3.4㎝)

以前に付いていた台座の画像

トリクンはこの佐治川石の彫り込みが中途半端であるため、台座から石が浮いて見えるので
練習のために紫檀の台座を新調させてくれ、と言ってくれました

この台座もアマチュアの作品とは思われ、紫檀や花梨ではなく
雑木類のありふれた材料ではありますが、石の映りはよく仕上げもまあまあ


後ろ姿
確かに彼の指摘のようにちょっと浮いた感じですね
もう少し台座を彫り込めば、据わりがよくなり落ち着いた感じになるでしょうね


さて、↓でトリクンの紫檀の台座をご紹介する前に従来の台座をよく観察しておいてください


左側半分の拡大図


右側半分の拡大図

台座作りはセンスのほかに非常な集中力と根気の要る作業
これくらいのものができれば、アマチュアの台座師としてはかなりイイ線いってるんですよ

さあ、これからがトリクンの作品ですよ
↑の従来の台座とよく見比べながらご覧下さい


トリクンの紫檀台座(間口8.0×奥行き3.0×高さ3.1㎝)

約3.0㎜ほど深く彫り込んだため全体の高さが3.0㎜ほど短縮され
石と台座に格段の一体感と落ち着きが出ました(とにかく0.5㎜がものをいう世界)

このように水石と台座が吸い付いたように感じられることが肝腎
石を引き立てながら目立ち過ぎないように、地味にしっかり自己主張する台座が優れた作品といえます

また、正面に2本あった足が1本除かれたため
左右の広がりが演出され景が大きく感じられるようになりました


やや角度をかえて正面より

周囲の側面にやや変化をつけたデザインにより
変化と動きが巧みに演出されています


従来よりも深めに彫り込んだことがわかります

右側、至近距離に足が2本配されています
台座の足の本数や位置は制作者がかなり神経を使う箇所です


仕上げの研磨も大切
木のぬくもりと硬質で精緻な線の融合が紫檀台座の魅力です


正面より


台座内部の彫り込みのようす
トリクンの精緻なノミの痕跡をご覧下さい


ノミの痕跡が美しく感じられるようになってきましたね


後ろ姿


足の数、足の位置
石との一体感を演出するためには、非常に大切な要素です


内部のノミ跡をもっと見る


内部拡大図


内部で石が安定するように石底の凸凹を正確に捉えています


足の形や大きさ、高さも重要な要素

みなさん、トリクンの台座、いかがでしたか?

トリクンはもっともっと上手になりますよ
またご紹介します

ご意見お待ちしていますよ

2010年1月27日水曜日

四万十川ミニ水石の思い出

きょうは先日頒布コーナーでご紹介した四万十川のミニ水石です
約20年も前のことですが、思い出も交えてお話ししましょう


約20年も前、ミニ水石として見込みのありそうな石をーそうですね、おおよそ500個もあったでしょうかー自採した同業者がいました
もちろん四国の方ですが、その水石を国風展の売店に並べて目玉の商品にするつもりだったんですね

当時、国風展の売店(上野グリーンクラブ)の常連であった私が、会期前の商品搬入の時にそれらのミニ水石に目をつけたというわけです
ひとつひとつ指先でつまんで眺めてみると、それぞれに個性があるし、数は少ないながら、中には特別な素質のもありそうでした

無鉄砲といえばそうですが、若くて元気もよかったんですね
それに根っから水石好きときちゃあたまらないですよ

「オイ、○○さんよ、オレがそっくり買うから安くしとけよ!」
なんちゃって、しぶる彼氏を値切り倒してぜんぶ買っちゃったんですね

さあそれからの何日はかなり大変でしたよ
なにせ500個からの膨大な数のミニ水石を、一個一個品定めしてABCと3ランクにわけたんですから

そのAランクの中から、さらに特Aランクの30個ほどを選び抜き
さらに最後に、その中から◎の特Aランクを5個選び抜いたのです

選び漏れのないように、ランク分けの作業も何度も何度も根気よくやり直し
絶対と自信を持てる5個に絞ったんです

茅舎石の特別いいのがありましたね
ともかく、豆石らしく素晴らしく愛嬌のあるのばっかりで、満足感たっぷりだったのを覚えています

そのはずでよね、みなさん、100個に1つですよ
それも心得のある業者が、一応商品として通用しそうなものを採集した中からですよ

まあ、水石が好きだったから出来たんだし
楽しみと欲との二人づれだったんですね(笑)

そして、その特Aの◎の5つに友人の鈴木広寿(台座名人)に頼んで台座をつけたんです
鈴木さんはチッチャクッテやりずらいかって、ずいぶん渋ってましたっけ

というわけで、私の手元に残った最後のひとつも先だってお嫁に行きましたが
きっと新しい持ち主さんにしっかり可愛がってもらっていることでしょう


ところで、20年前のランク分けのときに、最後の特Aに選ばれながら台座をつけられなかった20数個ほどの石たちも
やはり大切に保管したしたつもりでしたが、気がつくといつの間にか二つが残るばかりとなっていました

その一つがこのミニ茅舎


どうです、いいでしょ、かわいいでしょ
まるで日本昔話に出てくるお百姓の家みたいですね


こんど鈴木さんに会ったら台座を注文しようと思ってるんですが
彼、引き受けてくれるかな、小さすぎるので面倒がって断られるかもしれませんね(笑)


最後の5個の中には遠山石はありませんでしたね
たった一つだけ気に入ったこの遠山石だったんですが、やはり台座組には選ばれなかったんです

それで気が残ってたんでしょうか
こうやって最後まで手元にあるんですね

これも今度の機会に台座を頼むつもりです

さてさて、長い思い出話でした
それでは、また

2009年8月18日火曜日

水盤と水石 2

砂敷きを楽しめましたか?

水盤にきれいに敷きつめられたしっとりと湿り気を帯びた砂を見ただけで
いろいろな連想が働いてくるのは、あながち水石愛好家だけではないでしょうね


峻険な感じの連山石を据えてみましょう
据える位置、つまり左右だけでなく前後の間合いにも注意をはらいながら、慎重に

据えたあとに下方に向って両手でしっかりと圧力をかけ
砂にやや食い込むくらいにします


圧力をかけたので石の根元が盛り上がってやや乱れる場合があります
これもヘラでしっかりと均して整えます


完成

裾野に湖水を控えた峻険な連山、もしくは海上遥かに望む絶海の孤島の姿と見立てるか
それはあなたの連想が働くままに楽しめばよろしいのです


舟形石を据えてみましょう

このようにただ置いただけでは据えたとはいえません
石の根っ子が露出したままで不安定ですね

先ほど申し上げたように、両手でしっかりと押さえ下方に向って圧力をかけましょう


石と銅盤に一体感が出ました
詫びた銅盤の古さとしっかり時代の乗った多摩川の船形石の調和が最高です

これで完成
このあとはたまに霧水をかけて砂の水分を保ちながら楽しみます

では