現代でいうところのミニ水石のことを、近頃はあまり使われなくなりましたが
それらを一昔前の私らの先輩たちは、「掌上石・しょうじょうせき」と呼んでいました
サイズ的には数センチのミニ(豆)から10数センチくらいまでの
掌に載るくらいの水石をいいます
伝統的に日本人には、小さなものを掌に載せて愛でるという文化があったようで
それらが脈々としてミニ盆栽やミニ水石となって、現代へ受け継がれているのでしょう
小さな小さな一個の石を、とても持てないような大きな山や滝や茅舎などの景色に見立て
掌に載せて愛でて楽しむなんて、おもしろいじゃありませんか
そのときの水石愛好家にとっては、その掌の一個の石はすでにもう一個の石ではないんですね
雄大な山であったり郷愁をおびた里山の茅舎など、そのものに見えているですね
さて、理屈はこのくらいにして
今日ご紹介する掌上石は、↓の佐治川石
10数年前にお亡くなりになった、ある有名なミニ水石蒐集家のご遺族から
まとめて譲っていただいた旧蔵品の中で、特に私が気に入ったのをしまっておいたもの
今回、親しくお付き合いしている台座作りの名人・鈴木広寿さんにお願いして
ご覧のように台座が付きましたので、みなさまに自慢する気になったのです
鈴木さんはこの佐治川を見るなり
「みやちゃん、引き受けるけんど、あんた、注文はつけんなよ」
左右が対称形に近いきれいな稜線で、しかも片方だけが大きく裾を引いている
このような水石の景色をバランスよく見せるための台座は、非常に難しいそうで
それに対して依頼者があれこれ希望を加えると
台座作りの最中にいろいろな雑念がはいってしまい、いい仕事ができた試しがないそうです
私としては、名人がおっしゃることなら従わざるをえない
「すべてお任せするよ、鈴木さんの見立てを信じてまーす」
というわけです
佐治川特有の石肌が渋いまったくのウブ
石底
2週間ほどして鈴木さんが送って下さった台座付となった佐治川石
同封されていた鈴木さんのお手紙には、「ムズカシイ石デシタ」と添え書きされていました
右の大きな裾野が左へ向かう線が急にクビレ上がっていますね
このつながりの線をきれいに表現しながら、さらに景色左右の傾きを自然な感じに仕上げるのがポイントでしょう
ありがとう、鈴木さん、大満足でーす!
やや上からみた姿
左右の裾野の形とボリュームの対照が見どころです
縞紫壇の上々台座
鈴木さんの落款「広寿」
というわけで、今日は自分の勝手な自慢話でた
それにしても、台座名人の腕前には、まさに感謝、感謝ですね
よろしく
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