2019年1月30日水曜日

銀性八房五葉松(銀八)

銀性八房(ぎんしょうやつぶさ)五葉松は、通称銀八(ぎんやつ)と呼ばれ、昔から四国の鬼無地区を主産地として、広く盆栽界に普及してきました、そのほとんどが黒松の台木に接木をされた素材から培養されます。葉は濃い銀の霜降りが鮮やかに映えて丈夫で美しく、また枝振りも整えやすいので、盆栽樹種としての知名度は、江戸時代から揺るがぬ人気を保っているといえましょう。

樹高31.5cm×左右37cmの中品銀八

頭の部分の葉の乗りがイマイチなので樹が若く見え、しかも重量感がたりません。しかし細かい繊細な幹模様と樹肌の古色感は抜群。銀八は丈夫で小枝の吹込みが早いので、あと2年も心がければ、樹芯(頭の部分)に重みが出て見違えるほどになるでしょう。

樹勢が強壮なのが銀八の最大の特徴です。現在は葉が少なくて向こうが透けて見えますが、数年で密集した重量感が出てくるはずです。

この銀八の模様木の長所は、足元の動きと樹肌の古色感。さらには端正に整った枝順も魅力です。

すぐれた特性をもった銀八にも泣きどころはあります。そう、挿し木や取木が効かないので接木による素材のため、接ぎ口が目立たなくなるにはかなりの年月が必要なことである。
現在画像に写っている部分は台木の黒松であろうと思われます。その境目あたりから上の幹が銀八になるわけです。とはいっても既に樹齢は何十年、正確な接ぎ目は判別できませんね
という訳で、この接ぎ口のマイナス点が過剰に騒がれて評価をおとした一時期もありましたが、現在の盆栽界では、あくまで全体の木筋や木姿での総合的評価を重視する傾向にあります。

一、二の枝の下あたりの幹がややクビレタ感じがしますね。あのあたりが黒松と五葉松の境目でしょうが、正確なところは切って調べるほかはありません(笑)

後姿にも接木らしい雰囲気が見られますが、抜群の古さがあるのでそれほど感じません。安定した後姿です。

後姿の拡大図です。


後姿。




霜降りが美しい銀八の葉先。

2019年1月26日土曜日

舞姫もみじ本格派超ミニ

この舞姫もみじはわが家へ来てから、もうかれこれ6~7年になるでしょう。現在では足元の幹径が5.0cmほどで、超ミニサイズとしてはかなり迫力のあるほうですが、当時は中指ほどの太さで、舞姫としてもさほど目立つ存在とは云えないほどでした。

舞姫もみじ 樹高8.5×左右16cm

ところが、裏側の足元やちょっと上がった胴のあたりに不要な数本の枝と不定芽があったので、それを取り除いたところ、その付近の肉が急激に盛り上がってきて幹が肥大し始めたのです。そしてその部分が肉播きして落ち着いた頃には、樹格は段違いに出世しておりました。

太いですね、もっと拡大してボディーを眺めてみます

急激にコケた太くて短い幹が特徴の、いわゆる「竹の子幹」。肉まきのいいのが舞姫の特徴ですから、一箇所から出る小枝や不定芽を出る順につぶしていると、いつの間にか肥大しておもしろい幹筋ができてきます。

幹を太らせている過程では、ごらんのように枝先がゴツク感じるくらいに肥培するとよい。本格的な超ミニに仕上げるには、もういっぺん枝全体を追込んで2周りほど詰め込む必要があります。つまりもっとコジンマリ作るのが理想でしょう。

後姿

今春の植替え時と葉刈りの時期に思い切って追込むつもりです。







2019年1月23日水曜日

最近読んだ本

一昨年に右目に中程度の眼底出血が有って以来、読書量は極端に控えてきたけれど、最近ではこのままでは脳味噌の老化が心配になってきたので、たまに本屋へ寄ってみるようにしています。
そこで見つけてぱらっと読んでみて、ちょっと面白くて、ちょっと盆栽に役にも立つ本があったので、みなさんにもご紹介する気になりました。

本の表紙カバーの袖書きにはこんな文言がありました。

タネと花、虫たちとの関係、地中の世界、めぐる季節と天気・・・・・世界指折りのイギリス人庭師が、130の問いと答えを通して植物たちの姿をそっと教えます。見なれた草花のある風景が、秘密の花園に見えてくるかもしれません。

木はどうして大きくなるの?

どんな生物でもそうであるように、植物にとっても生きることは戦いだ。植物の場合、競争相手をしのいで生存競争に勝つには大きければ大きいほど有利になる。大きくなることで相手を自分の陰に追いやり、地中の水分と栄養を独り占めして、ほかの植物の成長を阻むことができるからだ。

その他130のアンサーにも、盆栽家に興味のありそうなものもたくさんあります。

・わが家の木は何歳?
・水は植物の体をどれくらいのはやさでいどうするの?
・木はどれくらいで大人になるの?


2019年1月22日火曜日

鉢持込みの効用(舞姫もみじ)

化粧鉢に入れて1年と、倍の2年経過した舞姫の超ミニを比較してみて、盆栽と云う角度からみてどのくらいの成長があったのか、じっくりと観察してみました。

a君 樹高4.0cm(化粧鉢に移して1年経過)

b君 樹高8.5cm(化粧鉢に移して2年経過)

並べて比較してみる

① a君の方が、冬芽を含めた小枝の先端が、やや強い感じがする。
② と云うことは、b君の方が細く柔らかい枝先といえる。
③ a君の枝は直線的で、上向きの小枝などが未整理でまろやかさが足りない。
④ 比べて、b君の小枝にはゴツイ箇所がなく円熟味が感じられる。
⑤ a君の木姿の特徴は、キリッとしまった緊張感と奇抜さだ。
⑥ 対照的にb君の木姿は、柔らかく風になびくような優美さが特徴だ。

みなさんは両者を比べて、どのような成長の相違を感じられましたか?いずれにしても1年でやるべきことはの2年かける。歳月は裏切りません。あとになって振り返ってみると、我慢と辛抱をした人には必ずなにがしかのご褒美を与えてくれるものです。
両方の姿をじっくりと観察して、たった1年間であっても鉢持込みによる風合いの変化と成長が可能であることを感じ取っていただければ幸いです。そこに盆栽趣味の深さと奥行きがあると思います。



2019年1月18日金曜日

舞姫もみじ・ミニ盆栽の作り方

2~3年前に素材から取木して、1~2年間は仕立鉢、もう1年は化粧鉢で培養した舞姫もみじのミニサイズ。樹齢は素材の時代から数えてもいろいろで、5年から6年ほどと記憶しています。足元は太いもので中指の先ほどで、細いものは小指よりも細く割り箸の先くらいのものもけっこうあります。

挿し木や取木苗を数年育てた素材を、さらに取木をかけて得た基本のボディーから、単幹、双幹、三幹、株立ちなど、持って生まれた個性を活かしながら盆栽への道を歩み始めます。

早く大きく育てたいため、どうしてもきな鉢を使ってしまいがちですが、ミニ盆栽を作るのですからそう焦ることはありません。やや小さめの鉢で育てた方が、盆栽の表情は早くに大人びた雰囲気を身につけます。大きな鉢で育てれば図体は大きくなりますが、盆栽の第一の重要要素である「落ち着いた古色感」はなかなか表現することが難しくなります。

単幹の舞姫もみじ。樹高は5.5cmで足元の幹径は2.0cmくらいです。頭を左方向へ振り模様木の曲を完成させます。あとは左右の枝をもう少し賑やかにして模様木らしい雰囲気が欲しいと思っています。
株立ち状の樹形です。樹高は6.0cmで主幹の足元の太さは1.0cmくらいで、案外に力強いですね。
左右にはね出した枝先に動きがあって構図もなかなかいいですね。

以上の2鉢をご紹介しましたが、これらは早くから小さい鉢へ入れたため、木姿にしまりがあり、余分な徒長枝はありません。そのために基本のボディーがすっきりと簡潔に見えます。

このように、仕立て鉢の年月をハショッテ早めに盆栽への道を歩み始める積極的な精神も大切です。
果敢で闘志溢れた攻めの盆栽作りも心がけましょう。








2019年1月12日土曜日

梅・一重咲きと八重咲き

いっぱんに日本を代表する花と問われれば桜と答えるでしょう。今ではこれは日本人の100人中100人に異論のないところです。ところがこれと同じ質問を盆栽人にしたとなると、梅と答える方のほうが多いのではないでしょうか。梅か桜かの好みは別として、盆栽に向いた樹種の素質から考察すると、これは圧倒的に梅に分があります。

まずは、①梅は寿命が長い②梅は桜と異なって、樹性が強壮で切り込みに強い ②木質部が堅いためサバ状になっても朽ちて崩れることはない③徒長しにくいので締まった盆栽樹形を作りやすい。

ところでその人気の梅には花が一重咲きのものとやえざきのものがあります。その見分けのポイントを知っていると思わぬ得をすることがあるので、ついでに教えて差し上げましょう。
膨らんできた蕾を1個黒っぽい紙の上でほぐす。蕾をくるんでいるガクを安全ピンやピンセットの先でていねいに外す。

花びらを一枚ずつ傷つけないように剥がす。一重なら 5枚の花弁ですから、この場合は八重咲の可能性が大きいということですね。

このように枝の細いものは花蕾も小さく一重咲の可能性がたかい。それでは↑でやったように花蕾をていねいにばらしてみましょう。

蕾が小さいのでうまくばらせませせんが、どうやら5弁の花びら、つまり一重咲のようです。

この方法で調べると花の色調も調べることができますね。知っていると得することが多いですね。是非是非蕾の検査をやってみましょう!

ついでに、盆栽の格言を一つ

桜切るバカ! 梅切らぬバカ!

2019年1月8日火曜日

しょうびゃく(鳥とまらず)根上がりミニ

小枝の先から中程にかけて細くて強靭な棘が生えているところから、ショウビャクと呼ばずに「コトリトマラズ」とか「トリトマラズ」などと呼ぶ人たちもいて、春に鮮やかな小さな黄色い花を咲かせ6月ごろに紅い実を成らせます。小枝はよく分岐しよく繁ります。

古くなった枝にはあの鋭い棘は生えなくなります。そして灰褐色の古い枝や幹には、次第に侘びさびが感じられるようになり野性味あふれた趣が滲み出るのもこの樹種の特徴です。
↑の写真は、秋の剪定を忘れていたのに気がついて、お正月に慌てて綺麗にしてやったばかりの姿です。

樹高17cm
根上がりの面白さと野性味あふれたショウビャクの根上がり。丈夫な樹種なので根上がり樹形でもよく育ちますしよく似合います。
枝先は無理な追込みをしなくとも自然な柔らか味が出てきました。

後姿。比較的に育てやすい樹種ですから、みなさん、ぜひチャレンジしてみてください。

2019年1月7日月曜日

いぼた根連なり

正月に市内のアマチュア主体の交換会へ出かけ、取木から仕立て中のいぼたの根連なりを落札しました。枝はかなり吹き込んでいてにぎやかだし、幹立ちのバランスにも何とない魅力があります。ただ、まだ細部に手が入っていないので、全体には未完性な素材の段階です。

背の一番高い主幹の手前あたりにじゃまな子幹があるので、幾本かを取り除いて風景に奥行きを出すようにしたい。

鉢はもっと浅目の小判型が似合うでしょう。今年の春に植替え予定。

前方やや上から見ると奥行きのある風景を覗くことができる。

裏側からの姿。

手前のゴチャゴチャした一叢を整理し、混み過ぎた枝を軽くしました。すると主幹を中心として左右に風景の広がりがかんじられるようになりました。

そこで、風景全体をやや右方向から眺めてみると、主幹にグーンと動きが出ると風景全体も、右に左に広がりを見せるようになりました。
3年を目安に強すぎる枝を抜きながら少しずつ姿を整えていけば、必ず出世は間違いありません。

2019年1月4日金曜日

日本盆栽大観(盆栽の歴史)・3


上田喜代松氏 五葉松 2尺 朱泥長方 昭和14年4月撮影

足元を小さ目の鉢を用いることでキリッとしめて、幹や枝葉の変化を協調しており、類稀なる盆栽美が具現されています。
しかし解説では、この樹形を「異端型」とで言い切っていますが、変幻自在な樹形に慣れた現代の盆栽人にとっては、この表現はきつ過ぎるような気がします。
まあ、ざっと100年の月日の経過が受け取る側の感嘆詞を変化させるのも無理からぬことといえますが・・・
萩原章佑氏 五葉松 2尺5寸(上下) 紅泥六角古鉢 昭和13年11月撮影

元は宇都宮方面に在ったものを氏が手に入れ、加藤東華氏の整形により現在の雄大な大懸崖の樹形に生まれ変わったものであると解説されています。

稲垣三郎氏 黒松 2尺5寸(左右) 朱泥6角 昭和14年1月撮影

この黒松は50有余年の間、いくつかの岡崎の名家の持ち物となったが、まだ岡崎以外の家の所有物となったことはないと、三河っ子は自慢の種にしている、と解説にあります。それほど筋の通った本格派の名品であると言いたいのでしょう。


2019年1月3日木曜日

日本盆栽大観’(盆栽の歴史)・2

この記念帖には、当時の国風盆栽展帖と比べても、質量ともに遜色ない盆栽が掲載されています。もちろん流行や嗜好の変化から、現代では盆栽としての範疇には?のつくようなものも数点見られますが、ご紹介するようにほとんどは、盆栽の造形に対する美意識の極端に発達した現代のレベルにおいても、十分に通用する優良品ばかりです。

萩原章佑氏 かえで石付 樹高(1尺4寸) 白交趾長方古鉢 昭和13年3月撮影
解説には「古き時代を語る露なる根。このような楓石付の根の美しさを見慣れぬ外国人は、目を瞠って持久養作の根気に驚異するのである」とある。
この当時から、日本を訪れる外国人にとって、盆栽とはまことに珍しい異文化そのものであったようです。

逸見治朗氏 蝦夷松 樹高「2尺」 烏泥長方古鉢 昭和13年3月
解説に「千島の国後島古釜布・ふるかまっぷ」の最盛期の採取ものである。強豪双葉山を見るような力の満ちた木である」とある。その迫力を古今無双の大横綱に例えるとはおもしろいですね。

中野義定氏 蝦夷松 烏泥楕円古鉢 樹高(1尺7寸)昭和14年1月撮影
解説「北海道大雪山の産にて、千島八ッ房性に比すべきもの。大雪山の蝦夷松は堅き岩盤上の状の堆土に自生する関係上根張りのよきをその特徴とする」と、その後(戦後)の一大蝦夷松ブームを予感させる記述もあります。


中村憲吉氏 梅 樹高「2尺5寸」 茶末釉長方 昭和14年1月撮影
解説に「品種 鶯宿梅 八重 蕾は紅を帯び開けば微黄。梅樹の幹は堅硬鉄のごとしという詞があるが、この幹はさながらに鉄片を捩じり合わせた趣がある」とありますが、なんとも強烈な表現ですね、

増山幾松氏 五葉松 樹高「2尺7寸」 朱泥長方 昭和14年3月
解説「傾斜地に植わって一方に長く枝を伸ばせる巨松の姿。古人はこのような樹形を『半懸崖』と呼び慣わした」とある。推測するに、当時まだ、半懸崖という言葉が一般的な盆栽用語でなかったのかもしれません。
小林庄三郎氏 真柏 樹高「2尺1寸」 朱泥長方鉢 昭和13年2月撮影
解説に「新潟県糸魚川明星山の産である」とある。

それにしても、非の打ち所のない自然界の造形物。おそらく今では採取し尽されてしまっているのでしょうが、このあたりになるとすでに個人の所有物ではなくて、国の宝ですね。