2006年12月16日土曜日

楓、観察と掃除の勧め

みなさんは新しく盆栽を手に入れたとき、まずどんな手入れから始めますか?

たくさんの愛好家の方々と接してきた私の経験によると
たいていは、すぐに気に入らない枝を切ったり、針金掛を始めますね

そして後になって、「ああ、あの枝切らなきゃよかった」
なんて後悔した経験ありませんか

そんなことのないように、盆栽を手に入れたらまずすることは「観察」なのです
観察が終わって物足りなかったら、次に「掃除」をしてみまししょう

掃除だって立派な手入れなので
最中にいろいろな発見をすることが多いんですよ



最近手に入れた楓、仕立鉢で調整中です

この植え付け角度から見ると、全体の姿になにか凛とした張りが感じられませんし
向かって左の一の枝、ニの枝、三の枝のバランスがイマイチです

ま、それはさておきまして、まずは根張りの様子を観察しながら足元の掃除をしてみます



焼鳥用の竹串が便利
うーん、楓特有の盤状の根張りが出てきましたよ



金ブラシで木肌の汚れを落とします



楓独特の美しい木肌が出現してきました



汚れや土で見えなかった根張りも出てきました
これだけで古さや貫禄がグーンと感じられるようになるんです

掃除という手入れはバカになりませんね



掃除が終わったので植え付け角度を考察して見ます
この角度が正解

幹模様に凛とした張りが感じられるようになりました
左右の枝のバランスもいいようです

ただし、樹冠部に枝が少々多すぎますから
来春の芽出し直前まで待って思い切り整理することにします



樹冠部の拡大図
芽摘み、葉透かし、葉刈りの励行により2~3年で見違えるような細かい枝先になります

よろしいですか、みなさん
「観察」と「掃除」、お忘れなく

盆栽は掃除をしてやることによって、本来持っているいい素質を現します
それを見つけ出すの観察眼


では

2006年12月7日木曜日

冬囲い

秋から初冬にかけて異常なほどに暖かかった陽気も終わり
いよいよ本格的な寒さがやってきたようです

一昨日、庭の水連のバケツに薄氷が張りました
大きな水瓶の水は未だですが、不思議とこのバケツだけ

車の屋根も霜で真っ白
いよいよ盆栽の冬囲いの時期があyってきました(強い霜に数回当ててから保護するのが正解)



冬囲いの方法は様々ですが、まずは心がけることを数点

1 冷たい乾燥した風は絶対に避ける
2 昼間の温度が上がり過ぎないことと、適度な湿度を保つこと
3 夜の温度は、鉢土の表面が薄っすらと凍るくらいの温度で十分

以上が冬囲いの最低条件
さあ、みなさん、工夫して盆栽たちを春まで守ってやりましょう

2006年12月6日水曜日

フリースクール速報

12月3日、初めてのフリースクールのようすです

さて、掲示板の管理人代行の甲府の今再さんの書き込み

皆さん、こんばんは。
「盆栽フリースクール」第一回目如何でしたか?
まさか「酒盛り」なんかはしなかったでしょうね。(^-^)

大丈夫、来られた受講生は東京のMさん一人で「酒盛り」とはいきませんでした
ですから、静かにまじめに、朝9時から夕方の4時頃まで勉強できましたよ

なーんだ、たった一人だったのか
と思う方もいらっしゃるでしょうが

私としては、教室に座る席もなかったり、とか
駐車場(最大10台)の心配もあったし

また、お馴染みの常連さんが大勢を占めているとすると
初めての方にとっては、その雰囲気に溶け込むまでの気遣いも大変だ、とも考えたのです

で、市内を中心にしたごく身近な愛好家の方々には
今回のフリースクールの開講はお知らせしていないのです

さて、前置きはこのくらいにして、Mさんの勉強について




赤松

Mさんが考えていた正面はこちらですが
立ち上がりから先の幹が奥へ逃げていて幹筋に力と変化が感じられません



裏面を新正面にしてみると

1 幹筋に奥行きと変化があり、足元から樹冠部まで見通しがよくなりました
2 一の落ち枝に表情が感じられます

よって、こちらを新正面にすることをお勧めしました
Mさんも「目から鱗」で納得!



奥から立ち上がった幹が激しく捻転しながら手前に迫ってきて、なかなかの迫力
一の枝も力があるので、この赤松の大切な見どころとなっています

木肌もよく荒れて古色感十分
Mさん、大切に育ててくださいね

将来有望です

さらにこの他、持参の盆栽で席飾りの予行演習も1時間くらい勉強できたし
有意義な一日でしたね、Mさん

そのようなわけで、みなさんもご遠慮なく参加してください
空いてますよ

次回は12月17日(日)です
お待ちしています

2006年11月28日火曜日

楓の葉落ち姿

お気に入りの楓の、葉落ちの姿を早く見たいと思っていたのですが
今日までやっと我慢をしてきました

小葉性で美しく紅葉する姿も捨てがたかったからです

さて、ピンセットで軽く引っ張ると葉柄ごと簡単に取れるほどになりました(この時期が最適)
頭の方から徐々に葉を落としていきます

一年間の丹精の成果が見えてきますよ
さあ、枝先はどの程度になったかな



小枝の作柄は上々のようです
かなり枝が細かく分岐して密になってきています

フトコロ芽も充実しています
これも重要なポイントですよ



このあたりまでくると、それが一層はっきりしてきます
作柄は上々、間違いなし

ちなみに、この楓は葉刈りをしていません
芽摘みとマメな葉透かしだけで管理しました



作業終了

樹冠部はまだ未完成ですが、焦って急いではなりません
頭を作るのを急ぐと、枝の柔らかさとのバランスが取れなくなる恐れがあります

数年かけてジックリと樹冠を作りこんでいくのが正解です
ちなみに、↓の画像は二年前の姿

いかがですか?
小枝の出来ぐあいを比較してみてください



二年前の姿
現在の姿と比較してください



日本の山里の風景に見られる、雑木らしいやさしさをイメージして作り込むつもりです

力強い足元、素直な幹筋、きれいな枝分かれ、密な枝先
優美な姿は更なる可能性を秘めています

2006年11月17日金曜日

お気に入り楓寄植

今年の春先に手に入れ、しっかり根洗いした楓寄植
この楓を手に入れ植替えしたときの顛末は、3/10~3/17の「つれづれ草」に詳しく出ています

春から夏にかけて、水はちょっぴり辛目(少なく)し
ともかく、何度も何度も芽摘みと葉透かしを励行

その成果が上がって葉が小さくしまり葉肉も薄くなったので
ご覧のようにみごとに紅葉しました



画像もまあまあに撮れたので、開設以来同じだった「盆栽つれづれ草」の表紙も更新
当分はこの楓寄植でいくつもりです



今年の春、根洗い直後の画像



足元の土もかなり落ち着いてきました



私の手に入るまでは、ちょっとばかり樹勢が強すぎたようですが
芽摘みと葉透かし、それに水加減で、ずいぶん小枝の先の勢いは制御されました

落葉後のそれを確認するのが楽しみです

こんな感じで3年くらい培養すれば、枝先はさらに細かくなるでしょう
来年も、肥料と水を控えめにしてがんばります

よろしいですか、古木は古木らしい培養管理をします
ご飯(水と肥料)は少なめでいいんですよ(人間と同じ)

今日は私のお気に入りの楓の寄植をご紹介しました

では

2006年11月15日水曜日

十月桜開花

晩秋だというのにぽかぽか陽気が続いていますね
時には真夏日を思わせる日もあっったりして、まったくどうなってるの?

こんな年には、そのうち寒さが急にやって来て
すっかり暖かさに慣れてしまった盆栽たちが風邪を引かないかと心配です

ところで、一ヶ月ほど前に十月桜の葉を刈り取ったので、それから徐々に花芽が膨らんで
ポツポツと咲き始めました








蕾のほころびはじめの柔らかいピンク色
この時期には目を惹きますね



優雅な花弁の十月桜

渋い色彩の秋の色の中で
優美な薄ピンクは嬉しい色彩ですね

十月桜をお持ちの方で、早めに花を見たい人は
葉を刈り取りましょう、花が咲きますよ

そうです、葉を刈り取ることによって、植物の季節感覚をちょっとばかり狂わしてやるんです

では

2006年11月7日火曜日

 山もみじミニ

今日の教材は、山もみじのハサミ作りの名人が、約20年丹精したミニの模様木
仕立鉢で私のところへ来たものを、一年間はそのまま姿を整え、この春に化粧鉢に入れ替えました

根張りや幹模様、それにコケ順などは申し分ないのですが
当初から枝に弾みがなく、樹冠部にもイマイチもの足りない感じがありました

つまり、枝に太細の強弱がなく、幹模様の終点になるはずの芯のいい位置に芽が出なかったのです
樹冠部のぼやけた木はどことなくしまりがないものです

ところが二年間、芽摘みと葉透かしなどの作業を辛抱強く行っているうちに
そのふたつの課題が一挙に解決したのです



下からの幹模様から見て、芯の芽は左方向に向かうのが理想的ですね

小さかった1の芽が伸びてくれました
また、2の芽も順調に成長してくれたのです

ですから、来春から樹冠部をを作り込んでいくにあたって

来春に2の芽を短めに切り、その元に吹いた芽を新しい芯にする
2の芽の元に芽が吹かない、または伸びられない場合を想定し1の芽も残しておく

その二段構えで臨んでいこうと考えています

さて枝を見ると、3の枝が太く力強くなってくれたことが何よりの成果で、ぐーんと弾みが出ました
今後は、役枝としていい位置にある4の枝の成長を促すように心がけます

他にもまだまだ不必要と思われる枝も多く着いていますが
それらは焦らず毎年少しずつ減らしていきます

枝を外すときには、まず絶対に不必要な枝から切ることが大切で
「初めからすべての枝を決めてかかることは危険です」

このことはしっかり憶えておきましょう

では

2006年11月5日日曜日

今再さんのお便り

次は「今再さん」のお便り
このHPの常連さんなら知らない人はいないはずですね

では、ご紹介しましょう
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回答:2番です。

私の水遣りは、4番に近いです。
私の日常の盆栽の水遣りとチェックは・・・

店の開店準備(掃除と店内に飾ってある鉢の水遣り)を終えると、
近くの棚場(知人宅の庭を間借り)に午前9時ごろ向かいます。
一通りチェックを入れた後、水遣りです。

春先は概ね1日1回、葉量の多いもの、下方鉢・陣笠鉢などで渇きの早いものはバケツにドブヅケします。
棚場に3箇所ばかりに、水を張ったバケツを置いてあります。
新芽が伸びた頃から午後4時~5時ごろで2度目のチェックと水遣りです。
消毒もこの時です。

梅雨明けのイマは、小品・ミニは大粒の赤玉土に軽く押し込んでいます。
葉焼けの目立つものは、木蔭に移動しています。

防寒保護の季節は、乾いたら遣るの方式で、概ね3日に一回のペースです。
結構まめに管理しているつもりですが、ことしは金糸南天(60年もの)、コトネアスター、白花山吹、百日紅を枯らしてしまいました。

とりとめも無く羅列いたしましたが、
水遣りとは、盆栽に水を遣るだけに留まらず、その日その日の盆樹との対話が楽しくもあり肝要だと思っています。

今再珈琲店

嘉さんのお便り

先日の「盆栽クイズ」の回答に添えていただいたお便りをご紹介しまます
まず、嘉さんのお便りです

掲示板にもよくカキコされている方です
このお便りを読んでご質問などある方は掲示板をお尋ね下さいね

今晩は。 何があっても一日一回はお邪魔しています。 最近は一文銭程度の大きさの鉢に入る超豆盆栽に嵌っており、
そんな盆栽はどこの通販にも無く仕方なく取り木、古枝の挿し木をセッセと実行してようやく45種100本程度になりました。

その道で日本一の先輩と4人で、今秋に発表展示できるよう鉢合わせも始めています。(盆栽世界が取材にくるそうです)
しかし以前は、2~3センチの鉢なんてどうするんだろうと見ていたものが、実際に必要になると無いもので、
あっても飛び切り高価で、しかも思案している間になぜか(なにに使うのか、コレクションか?)あっと言う間に売れてしまいます。
他の大きい鉢はほとんど動きが遅いのになんででしょう。 (青閑鉢 考えていたら売れてました又ありましたら、、、、)

回答は2です。
水遣りは、盆栽の普及に一番のネックとなるものでなんとか解決しないといけません。

いくら盆栽に嵌っても、人生の中には他にもチャレンジすることは一杯ありますし、またそれを許さないと盆栽人口は増えないと思います。
私も、宮本先生のようにカミサンにオンブニダッコで25年過ぎ良く見るとカミサンの顔は、年中真っ黒、水遣りのたんびにシャワーでは酷すぎと考え、
4年ほど前に関西の横井さんに自動散水機を設置してもらいました。

しかし工事に3人で2日かかりしかも重労働で値切にも力も入らず60万程度で手を打ちましたが、
正直、盆栽普及のために進められる費用ではないですね。

一万円以内ていどにならないと無理です。 今では自分でやればその程度で出来るそうですが、機械に強くないと出来ない話です。
世の中の多くが出来るような仕組みを完成させないことには普及しません。

それと、噴霧式の自動散水機は風に弱く短時間では心配で10分程度にセットしないといけません、 仮に夏は毎日3回自動を使いますと
月の水道代が5~6万円かかります。

しかも環境によっては噴霧方向にも考慮しないと隣近所にも迷惑になります(洗濯物にかけちゃうとか)
自動散水に頼りきりでは、木にもよくありません、基本は一日一回は手動散水で盆栽と語り合いながらやることですね。

それで回答は2です。

散水機への提案ですが、理想は鉢底からの浸透水遣りです。 棚を、だんだん畑にして時間がきたら、囲いのついた棚板に水を流し
浸透させたらその水を次の棚に流しこむ方法です。 水は100%使い省エネにもなり完璧な水遣りだと思います。
(閑があれば設計しますが先生どうですか特許ものですよ、水道代、風向き、環境、いずれもクリアー)

しかしあくまで理想は可能な限りの手動水遣りですね。
自動は手段であり目的にはなりえません。

希望の景品 NO1初代平安東福寺手捻焼しめ丸鉢

ハンドル名  嘉

2006年10月31日火曜日

赤松大改作スペシャル

昨年の10/21と10/222に大改作した赤松はどうなったでしょう
今年一年間の培養の成果をお知らせしましょう

昨年の姿と見比べながらご覧下さい

昨年の姿1
昨年の姿2



今年の春に思い切り小さめの正方鉢に植え替えて、ご覧のような姿で一年間培養

今年の夏は雨が多かったのと、樹勢を上げるために意図的に多肥多水で培養したため
7月初旬に短葉法をかけても、葉はやや伸び加減です



芽数も増えて貫禄が出てきました
それに、幹の肌に落ち着いた風格も出てきたようです

たった一年間の培養でも、毎日毎日強い日光にさらされていると
知らぬ間に木肌に変化が現れるんですね

幹を折りたたんだ針金はまだ外せません、まだ曲が緩んでしまうでしょう



上方から見ると、まだまだ芽数が足りないのがわかりますね
来年の課題が見えてきたようです

こうやって、盆栽人は、もう一作、もう一作と未来を夢見て
その夢に励まされているんですね

来年も頑張るぞー!

2006年10月16日月曜日

思い出の銘鉢(18): 平安香山 均釉菱格子透彫長方

盆栽屋.comの「思い出の名鉢」シリーズ(お客様にご購入頂きましたが)思い出深い名鉢をみんさまの鑑賞用に復刻致しました。また、この場をお借りして愛蔵者の方々に感謝申し上げます。どうぞ小鉢の勉強にお役立て下さい。


間口13.6×奥行11×高さ7.0cm

平成17年3月に近代出版より発行された「月之輪湧泉・平安香山」の作品集に掲載され
「精緻を極め釉色にも優れる傑作。香山透彫の傑作である」と絶賛された本作品

この度、親しい収集家のご好意により、盆栽屋.comの目玉商品として、別記のようにお勧め価格にて掲載することが出来ました
二度と実現不可能な価格設定に加え、このような「図録もの」の名品がが市場へ出回ることは非常に珍しいことも添えておきます

どうぞ、ごゆっくりとご覧下さい

無傷完品です
(近代出版より掲載された作品集付)

(近代出版より)
作品集の表紙
(定価3.800の豪華内容)

(近代出版より)
誌上の紹介写真と解説文
(作品の定価はこの作品集付になっています)


平安香山の均釉は小鉢の世界ではあまりにも有名で、「香均釉・こうきんゆう」と造語されているほど
その香均釉に囲まれ二重の鉢壁に菱格子が掘り込まれています

「カミソリ」と異名をとった香山ならではの、精緻にして華麗な技に改めて感動させられます
そして、二重の鉢壁の厚さは普通の鉢並みなので、鉢としての実用機能も充分に備えているという、稀有な逸品


側面をのぞく角度より


同じく側面をのぞく角度より
両側面には窓をきり絵付けが施されています

格子浮彫の豪華さと染付けとの絶妙な調和
この優れたデザイン性が、名品の評価をさらに高めています
ましてや香山の絵付け鉢の稀少なことは知られています


側面


側面


鉢裏


戦後の早い時期の作品です

思い出の銘鉢(17):宮崎一石 赤絵山水図切立正方

盆栽屋.comの「思い出の名鉢」シリーズ(お客様にご購入頂きましたが)思い出深い名鉢をみんさまの鑑賞用に復刻致しました。また、この場をお借りして愛蔵者の方々に感謝申し上げます。どうぞ小鉢の勉強にお役立て下さい。


間5.3×奥行5.3×高さ5.2cm

峻険な深山から水辺まで
壮大なスケールの景観をわずか5cm四方のミニ鉢に描き切った、一石全盛期の究極の赤絵名作

大胆で斬新な構図と微細な筆のタッチは、ここに特に際立って冴えわたり
緊張感のみなぎる画面を見つめてるとき、改めて一石の高度な技巧に感動させられます

一石作品群の中において間違いなく赤絵名品に属する質の高い仕上がり
無傷完品

平凡社「まめぼん」より

なお、この一石赤絵鉢は最近「平凡社」より発行された上記表紙「まめぼん」(定価¥1.600)の
「まめ鉢名品コレクション」において宮崎一石の代表作として掲載されました

平凡社「まめぼん」より


微細で緊張感のみなぎる線と巧みな陰影によって描かれた峻険な山や岩
余白のとりかたも一石独特の鋭い感性が冴えています


拡大図
画面の隅々まで神経が行き届いています


対照的に牧歌的な雰囲気を漂わせる画面


水辺の景色
岩頭に鼎立する松の描写はあまりにもみごと
岩の描き方もじつに巧みです


拡大図


一変して高士が登場する静かな画面
画面右半分にたっぷりと余白を取った構図が余韻を感じさせます


拡大図


鉢底の様子と落款
「阿びこ山・一石作」

思い出の銘鉢(16):宮崎一石 染付け山水図切立長方鉢

盆栽屋.comの「思い出の名鉢」シリーズ(お客様にご購入頂きましたが)思い出深い名鉢をみんさまの鑑賞用に復刻致しました。また、この場をお借りして愛蔵者の方々に感謝申し上げます。どうぞ小鉢の勉強にお役立て下さい。


間口10.8×奥行8.5×高さ4.9cm

一石の同時期と思われる、間口、奥行き、高さがほとんど同じサイズの作品を散見しますが
いずれも精密な描き込みと構図のみごとさを示し、逸品ぞろいです

この作品も、両正面には人物を巧みに配し、絵画の物語性を強調し
山里の穏やかな風景と深山幽谷の自然とを左右の側面に描くなど、四面の絵画の奥深さにも工夫が見られます

まさに東洋山水画のスケールの大きな世界を
小鉢という小さな空間に描き切った一石の魅力溢れる逸品です

無傷完品


側面より
ゆがみよじれのない安定した線に囲まれたボディー


曲がりくねって上流に消える川や遥かなる山並みは
小橋を渡る高士の高邁な精神性を暗示しています


側面は里山の景色


こちらの側面は深山幽谷の厳しい景です


深山幽谷の拡大図

一石の絵画の特徴は、その落ち着いた的確な筆致と、微細で巧妙な筆のタッチにあり
決して輪郭線の勢いだけで見せるのではなく、根気よく対象物を描き出す叮嚀さと表現力に優れています


鉢底の様子


落款は小さめの一石
これは比較的初期に近い時期に使われています


落款拡大図