2007年9月30日日曜日

赤松の空間調節

松戸市近隣の愛好家さんが、棚がいっぱいになってしまって
15鉢ばかりの盆栽の処分をお願いされました

よく見ると、非常に熱心で丁寧な作柄の方なので
わずかな勘所さえ押さえればいずれも再デビューが可能なものばかり

大雑把に処分してしまうには惜しいし盆栽たちも可愛そう
私が譲り受けることにしました

さて、その中の一鉢、赤松です



小さな鉢にしっかりと持ち込まれています、これには感心
鉢にピッタリ納まっていてグラットもしません

根がしっかりしているということは作柄のいい証拠
盆栽としての第一条件です

人工の模様がやや目障りな感じですが
全体の流れと重心、枝の順とふくらみなどはまあまあです

しかし、全体の構図にちょっとばかり空間がありすぎて緊張感に欠けるかな
それで、手で矯めてみると現在の樹高20cmがもっとコンパクトになりそう



現在の後ろ姿



二箇所を締めてコンパクトになった姿
(難しい作業ではないので経過は省略)

いかがですか
樹高は17cm、空間が少なくなった分、構図に緊張感が出ましたね



作業の舞台裏

1 ビニール管を通した針金で幹と幹を結束
2 鉢裏から通じた針金で樹高の短縮のため引っ張りを施しました

このように、ちょっとした工夫で構図に緊張感を出すようにすれば、樹形がグーンと引き立つものです
あなたの盆栽は空間が緩んでいませんか、点検してくださいね

空間に緩みがあっては樹形が締まり!ません!

2007年9月18日火曜日

楓寄せ植え落下

あの大切にしている楓寄せ植えが、一本棚から地上に落下!
今月初めに列島を縦断した台風9号が、関東を通過した7日の朝方でした

前夜は夜半過ぎまで起きていたので、目を覚まして庭を点検したのが午前5時半ごろ
私の住む千葉県北西部では、6日の真夜中あたりが台風のピークと予想されていました

周到な避難や養生をしておいたおかげで、盆栽は全員無事、被害ゼロ、を確認
そして、台風は既に関東北部の桐生市あたりを北上中であることをテレビで知り、やれやれ一安心

そのとき、突然一陣の強風が吹いたのです
強烈な風の音はもちろん、家が揺れていると身体に感じるくらいの凄さでした

れれッ!
台風は通過したんじゃないのか?

心配になって縁側の戸を開けてみると、庭の風景がどっか違って見えるじゃないですか
目を擦って見直せば、違ってるはず、一本棚の上の楓の寄せ植えが、なくなってるー!


という有り様で、一本棚から地上に落下した、私の大のお気に入りの楓寄せ植え、落下後の姿
ちょっと軽く縛っておけば、墜落しなかったでしょう

ごめんね楓クン
でも、君はもっと強いと思ったんだよ

それにしても、台風の中心部が通過してからの一陣の突風で、この安定のいい平鉢が転落するんだから
油断大敵でした

↓の昨年の秋の姿とよく見比べてください


盆栽つれづれ草の表紙、これは昨年秋の姿


被害の実態報告です

手前のはね出しの二股の片方が、飛び散ってしましました


一番左側の幹の、下枝は元から失われ、その上の枝にも損害

あまりのショックに、10日以上経った今でもそのままの状態
以上、涙ながらの台風被害報告でした

2007年9月12日水曜日

広東鉢と東福寺

古代より近世に至るまで、私達日本人は中国大陸文化の影響を受け
それを手本として学んできました

盆栽の世界においても、中国文化の影響により今日の盆栽文化が発達しえたことは
誰もが認めるところです

大正の初期より作陶に入ったとされる名工・平安東福寺の作品からも
支那鉢の影響とそれへの強い憧憬がうかがえます

もちろん、それ以前の先駆者である大日本幹山、真葛香山、井上良斎、小野義真、竹本隼太などからも
影響を受けてはいますが、数多い東福寺の作品に接したときに感じるのは

なんといっても、支那、それも広東鉢の色彩と質感
さらにはざっくりと手作りの味を感じさせる形状の印象です


広東外縁丸鉢

平安東福寺の「緑釉もの」はかれのもっとも得意とし、また評価の高い釉薬
深い緑の釉薬の再現に情熱を燃やしたのです

みなさんが広東の緑釉鉢を鑑賞するときには
この釉薬の透明感と濃淡の味をしっかりと認識してくださいね


平安東福寺 瑠璃釉鋲打太鼓胴楕円

緑釉と並んで瑠璃釉も広東鉢の代表的な釉薬
平安東福寺も同じく緑釉と瑠璃釉を得意とし、作品の数も多いのです

やはりここでも東福寺は釉薬の透明感を尊重しています
生地が透けて見えるほどです


広東鉢の縁の上側

緑の釉薬が窯変により微妙な変化をおこし、えもいわれない効果を上げています


平安東福寺 緑釉外縁丸

広東鉢の緑釉の窯変を再現すべく施釉を工夫をした東福寺の作品
苦心のあとがうかがえます

このての作品には名品が多いのが特色
ざっくりとした手作りの味も広東鉢に倣った東福寺のセンスが感じられます


広東鉢の鮮やかな緑釉の発色

2007年9月10日月曜日

野梅の仕立て方

花物盆栽の王者といえば、やはり梅
なかでも野梅は、小枝が繊細に作れるし木肌もよく荒れ、盆栽としての優れた要素を持っています
清楚で侘び寂びの趣があり、これも盆栽人の好みにピッタリです

ところが、小品盆栽界には野梅の盆栽が極端に少ない
まして木肌の荒れた優れた素材はなおさらのことです

実生から育てるに非常な年月がかかることがその原因で
普通野梅の小品素材は、大きなサイズの盆栽の頭の部分を取り木から得ることが多いのです

ですから、実生の優良な素材は大変な貴重品ですが
幸いにも私はこの春先、20年以上にわたって実生から仕立てていた10cmサイズの優秀な素材を10本手に入れました

今回は、現在たいせつに仕立て中の一鉢をご紹介しましょう


ボディーの高さは約8cmほどで、完成予想樹高は10~11cmを目指しています
春にほとんどの枝を切り落とし、まったくの素材に戻し根本から木作りに入りました

春の新芽を芯、左右の利き枝と振り分けて、芽の柔らかい入梅前に針金で誘導しました
枝先は徒長させたままで、秋までこのまま充実させます


正面拡大図、肌の荒れとサバ状になった幹肌の雅味がみごとでしょ
入梅が明けた頃に針金を外しました


これからは来春の作業予定です

白線のあたりから切り詰めます
手前にしっかりとした芽当りがあることを確かめてから切りましょう

それと、将来しまった枝振りを作るためには
今年の枝を、ある程度思い切って短めに切り込むことが肝心です


来春に枝を切ったあとの予想図

今年の新しい枝に表情がありますね
のこされたこの枝元が基本になります


来春、残された枝先から吹いた新芽(濃い茶色の部分)に2芽ほど針金をかけて誘導します
その枝先は今年と同じく、再来年の春までは切り込まずに充実させます

それによって、枝作りの基本部分はまずまず出来上がりかけてきますね

再来年の春にも、もう一度、新芽(薄い茶色の部分)に針金をかけます
つまり、今年を入れて三年間で枝作りの基本作業が完成します

四年目以降は、枝先に針金をかけず、ハサミでの切込みにより枝先を密にし
野梅盆栽の完成品と同じように管理していきます