2007年3月25日日曜日

杜松春の手入れ

本題に入る前にちょっとムロ出しのお話

私は昨日(土曜日)、植え替えたものを除く松柏類のムロ出しを行いました
ただし杜松と杉はあと10日くらいはムロ暮らしをしてもらうつもり
雑木類も芽出しの様子と天候を見比べならが、10日後あたりからと思っています

土曜日の夜から日曜日にかけては曇りから雨の予報で
気温も高かったのでチャンス到来でした

よろしいですか

ムロ出しは

1 雨の日
2 曇りの日
3 そしてなるべく気温の高い日

を選びましょう

ムロ出しに不適当な日とは

1 風の強い日
2 カンカン照りの日
3 そして気温の低い日

なのです、その理由は?
たまにはご自分で考えてみましょうね

それでもわからなかったら、ご質問下さい

さて、今日の教材は杜松です


高齢の愛好家の放出品
手に入れた時点では新芽の内側のフトコロに、枯れっ葉がたくさんこびりついていました

杜松は暖かい気候を好むので、今の時期にハサミで切り込むのはまだ早い
そこで先の細いピンセットでフトコロを丹念に掃除しました

いつもお話しするように、切ったりはったりだけが盆栽の手入れではありません
掃除をして清潔に保つことが、まず手入れの第一なのです






いかがですか
きれいになったでしょ

下から見ても葉と葉の隙間から向こうの空間がのぞいています
こういうふうでないと、フトコロに日も風も入らないので蒸れてしまいますね


何時でもこのようにフトコロの枯れっ葉などを掃除し、清潔にしておいて下さい
培養上とても大切なことです


後ろ姿

2007年3月24日土曜日

腐乱病

くちなしや姫りんごに「腐乱病」と呼ばれる、ちょっと怖い病気があります
まず形成層が腐り始め、表皮部分もおかされ、幹の周囲が腐るとついには枯れ死してしまうのです

主に根張り付近の足元から発生することが多いようなので
日ごろから足元に腐れが入っていないか注意しましよう

最近までは適した治療方法が見つからず
ひたすら樹勢の回復を図り自然治癒を待つという、古式の対策しかありませんでしたが

そこで、私の親しい同業者が筑波大の先生にサンプルを渡し
この病原菌によく効く特効薬を見つけてもらいました

「トップジン・オイルペースト」がそのお勧めの薬品の名前です


愛好家が長年愛倍していた「姫国光」 樹高18×左右23cm

持込の古い、そう、姫国光としてはかなりのレベルの逸品ですが
数年前にその腐乱病にかかってしまいました


黒い部分が形成層が腐って木質部がむき出しになっている
懸命に樹勢をつけて面倒を見たおかげで、周囲に肉が巻き始めていますが

しかし、病原菌は幹の上部にまでおかして
表皮がガサガサになっていますね

このようすでは樹勢をつけてもつけてもイタチゴッコで
最後は全身に病原菌がまわって、ついにはご臨終となってしまうでしょう

枯らしてしまうにはあまりに惜しい
そこで前記の「トップジン・オイルペート」で治療してみます


薬剤をよく攪拌し患部にたっぷりと塗ります
表皮のヒダにも染み込むように


こんな感じ


表皮がガサガサした部分にも病原菌は蔓延していますから
冬芽の先を残してほとんど塗り込みます

この秋まで樹勢を落とさないことが肝心
結果はまたお知らせしますね

よろしいですか
「トップジン・オイルペースト」

2007年3月8日木曜日

日本かまつか

実物盆栽には本格的な模様木に作りにくい樹種がたくさんあります
枝の性質が伸びやすく、また伸びた小枝の先に花芽がつくからです

人気の日本かまつかなどもその部類に入るでしょうね
見かけるほとんどの盆栽は、株立ちか文人風が多く、本格模様木の小品にはめったにお目にかかれません

その日本かまつかの太幹の本格模様木が手に入りました
熱心なベテラン愛好家が長年丹精したもので、親しい同業者が紹介してくれたものです

日本かまつかには稀なことに、ボディーのシッカリ感と枝順がよく
丹念に作り込まれた枝先の味わいもみごとです

見ごろは、春4月ごろのコデマリ状の白い花とそれに続く小さい真っ赤な実成りです
おまけに、この小品のように枝先が繊細に作られていれば、冬の姿もなかなかのものがあります

日本かまつかの樹形としては、かなりのレベルで端正に仕上がっていると自負しています
つれづれ草で紹介し長く記憶に留めたいと思い取り上げました


ベテラン愛好家より放出されたかまつかの名木
逞しいボディーの持ち味を活かしきったセンスと技術が光ります

幹筋の流れや枝順、さらに枝先へと細心の神経が行き届き
重量感と繊細さがみごとに調和しています


逞しい立ち上がりの拡大図


一の枝のほぐれを拡大して見ます
古びた枝先の味わいは、寒樹の見どころです

このようにシマッタ枝先を作るには
整形の技術だけでなく高度な培養技術が必要となります


後ろ姿
幹に傷っけなし

在来の品種を「日本かまつか」と呼び西洋種と区別しています
西洋種は細幹の株立ち状に作ると風情のあるものです

2007年3月6日火曜日

寒ぐみの取り木

取り木施術の適期は、2月の中旬から3月中旬ごろにかけて
次のチャンスは5月中旬から6月の初旬にかけてとお話しましたね

もっとつっこんだ話をしますと、取り木に詳しいプロ達は
この二つの適期を樹種によって使い分けています

2月から3月には、取り木は可能だが、発根に時間のかかる樹種
例えば、楓や獅子頭もみじなど

5月から6月には、発根が比較的容易な山もみじや出猩々など
もちろん、2~3月にはどちらも施術の適期です

さて、取り木の施術の続きです


ここが第三のポイント

皮を剥くためにのこぎりで切り込みを入れた切り口は、まだギザギザです
この箇所をよく切れるノミか切り出しナイフで、丁寧に切り直す

つまり、周囲の細胞がぐちゃぐちゃになったままでは
発根にムラがでるからです


こんな具合です
この場合で木質部までしっかり削り込むみ、形成層を完全に取り除くこと


鉢の底網で土手を築きます
ビニールでも仕立鉢でもよし、各自工夫してください


赤玉土に桐生砂を2割ほど入れた普通の植え土を
切り口のやや下まで入れたっぷりと潅水します


細かく切った水コケを水に浸し軽くしぼっり
押し込むようにしっかりと切り口付近を覆います


取り木施術完了です

術後はムロへ戻し普通の盆栽並みに管理
春になったら他の盆栽と同じくムロ出しをして、日当たりのいい棚上で培養します

切り口付近の水コケを乾燥させないこと、親木は普通の水量
これが第四のポイントです

では

2007年3月2日金曜日

寒ぐみ取り木

2月の中旬から3月中旬ごろにかけてが、取り木の第一の適期
次のチャンスは5月中旬から6月の初旬にかけてです

さて、今回取り木の施術をする材料は、寒ぐみ
親しい同業者のところでちょっと目に付いたもので、ちなみに価格は5千円也

これだから取り木の味をおぼえたら、たまったものじゃないですね
たったの5千円からだって、短期間のうちに、かなりの盆栽がゲットできるんですから


プラスチックの鉢に入った園芸用の素材です
しかし園芸品といったって、なめちゃいけない

この角度から見ると、中間から上は盆栽としての幹筋が通っています
ともかく私の構想通りに剪定してみましょう

注意)取り木をかける前には、枝葉は多くつけておくべきなんですが(そのほうが発根しやすい)
今回はみなさんが見やすいように致します(だからご自分のものは剪定しないように)


取り木計画

白線の箇所から取り木をします
向かって右の長い枝が一の枝で、左は株立ちにするための使います


この寒ぐみのように、ある程度の太みのある材料は、木質部まで達するようにのこぎりで切り込みを入れます
つまり形成層を完全に遮断するわけです、これが取り木成功の第一のポイント


下にものこぎりを入れます

剥皮の幅は幹の直径の1~2倍が目安すが、今回は2倍の幅にしました
幅が狭いと盛り上がったカルスで上下がくっついてしまい、失敗の原因になります


ぐるっと周囲の皮を剥いたら、青味がかった形成層を完全に削り取ります
これが成功の第二のポイント

木質部を削り取ってもかまいません
いいですか、完全に形成層を取り除いてくださいね

つづく