2007年11月30日金曜日

山もみじ小枝作り


作業完了の図

ごちゃごちゃとしていた枝先の小枝と芽が大幅に整理され
スッキリ感、伸び伸び感がでましたね

一年の間、先端の芽をすくすく伸ばすことによってこの姿が実現しました
過去に葉刈りを頻繁に繰り返していた弊害を取り除いたのです

これで来年からは、フトコロにも十分に日光と風が入り
優美な枝先を取り戻すことができます

作業にあたっての注意点

1 枝分かれは基本的に二股になるように
2 フトコロに吹いた不要芽やいじけた小枝は爪で掻き取る
3 上向き、下向き、内向きの小枝は切る
4 先端には外向きの小枝を残す
5 なるべく中間の勢いの小枝を残す
6 芽の数はなるべく制限する



一の枝の先端
極端に枝数と芽数が制限されていますね


ニの枝など、向かって右側の枝の拡大図です


樹冠部の拡大図
芯はまだまだ長めです、来春以降にもっと詰め込む予定です


右側面より


左側面より


後ろ姿
樹冠部よりやや下にゴツイ枝がついていましたので、思い切って外しました
来年一年間で肉巻き完了するでしょう

さあ、あなたも小枝の整理をしましょう!

2007年11月28日水曜日

山もみじ小枝作り

かっては栄えある展示会において大活躍した(箱飾りの下段)この山もみじの逸品ですが
葉刈りを繰り返すうちに芽数が多くなり過ぎて、枝先の柔らか味が失われかけています

これほどの木肌の美しさと端正なな骨格をもった山もみじです
再び繊細な枝先を取り戻したいものです

こんご2年計画で再起を図りたいと考えています

そのためには

1 来春の植替え
2 葉刈りを行わず、枝先は春の芽摘みと葉透かし、葉切りにより、フトコロ芽を育てます
3 落葉後に無駄芽の除去をていねいに行います

2年間その作業を繰り返せば、再び優美で繊細な枝先を取り戻すことができます


春に植替えをして、入梅に葉刈りは行わず
芽摘みと葉透かしによりフトコロ芽に元気が出るようにしてました

さらに先端の小枝が伸び伸びとするように努めました

ごちゃごちゃと固まっていた枝先が、やや伸び伸びとしてきたようです
枝先に柔らか味を取り戻すための培養が、少しずつ効果を見せてくれたようです


一の枝の拡大図
先端の芽がすくすくと伸び始めました


樹冠部の拡大図
やはり先端の芽が伸び始めましたね


右側面から見た画像


後ろ姿です

さてそれでは次の項で、無駄枝と無駄芽の除去をしましょう
お楽しみに

2007年11月27日火曜日

山もみじ切り込みポイント

改作を考えている盆栽人が待ち焦がれるのは、落葉の季節
雑木類は紅葉のあと葉を落としますが、この時期が休眠期です

固体によってややズレがありますが
紅葉から落葉、それから後の一ヶ月間くらいが本当の休眠期なのです

年が改まるころになると、雑木類たちの根はそろそろ活動を始め
枝を切ると切り口から樹液が滲み出てきますね

樹液は人間の血液と同じ
出血多量になると衰弱しますから気をつけましょう

で、雑木の剪定は落葉期(休眠期)に行うのがいい
ただし、大きな切り口を作るような大改作は、春先に植替えと同時に行うのが正解です
(根が切られるため樹液が吹かない)


夏ごろから改作を計画していた山もみじ
足元のよさ、縦縞の入った木肌の美しさがとくに魅力

ボディーもしっかり、改作によってサイズの大幅な短縮が望め
枝順もしっかりと確保できそうです


葉を落とした状態
ずいぶんと無駄枝がついていますねー!

このようにいい素質を生かし切れずに
確たる目標も建てずに、ただ漫然と持ち込んでいた証拠、これはダメ

この段階で大雑把な計画を建て直しましょう
みなさんならどのようにしますか?


1 足元の根張りをもっとしっかり掃除します

2 一の枝の候補、長すぎるので切り詰めます

3 将来は不要になるかもしれない枝ですが、角度がいいので切らずにおきましょう

4 二の枝の候補、長すぎるので先端を切り詰めます

5 三の枝の候補、長すぎるので先端を切り詰めます

6 必要になるかもしれない枝ですが、強過ぎます
  短く切り詰め、現在枝元に吹いている芽を使い、同じ場所に枝を作りましょう

7 短く切り詰め、枝元に芽を出させるようにします

8 短く切り詰め、枝元に芽を出させるようにします


大雑把な切り込み終了の図
うまくいきました、将来は山もみじミニ逸品、間違いなし!

植替えを来年の早春に行います
また、切りっ放しで残した枝の切り口は、来年の入梅頃、枝元に吹く芽を確かめてから削り直します

おおよその樹冠部は見えていますが、芯はまだ決定していません
慌てずに来春の出芽を待ってから決めます

現在の樹高は8.5cm
完成予定の樹高も同じです


後ろ姿
背中に切り飛ばしの傷ができましたが、周囲に枝がありますから、一年間で簡単に肉巻き完了します

では、あなたもチャレンジ!

2007年11月20日火曜日

美の発見・寒ぐみ

おもしろい寒ぐみの三幹を手に入れました

立ち上がった幹は案外に細いのに、座は不思議なほどに盛り上がって大きい
主幹の脇と後ろに2本の子幹が立っていますが、脇の子幹の愛嬌がすばらしい

それに比べて主幹は背が高すぎるため
せっかくの力強い座が生きておらず、全体にひ弱い感じがしてしまいます


正面の図

よく観察すると、主幹の中ほどにある前枝の表情がいい
そこから上の模様が甘く緩んだ感じです

注目の前枝を芯にできないか?
サイズが小さくなるとグーンとまとまりがよくなり、子幹とのバランスも絶妙だ


後ろの図
真後ろに子幹が立っているので足元が見えない


ティッシュで切りたいと思う主幹の上部を隠してみる
みなさん、いかがですか?


ペイントで後ろの子幹も塗りつぶしてみる

いける、いける!!

足元の座が生きて、力強さが出た
幹のコケ順や枝順もバッチリですね

切るのは来春まで辛抱します
樹高8cmの寒ぐみ双幹逸品がゲットできました!!

美は意外に身近なところに隠れているものです
さあ、あなたも見つけましょう

2007年11月14日水曜日

千葉県盆栽名品展より

今回の出品の中で、この五葉松の中品も将来有望な一品でした
うまく培養すれば、数年後には国風展に挑戦可能なレベルです

前々項で紹介した直幹と同じ「九重」という八房五葉松
樹高はおよそ30cmくらい、樹冠部と差し枝とが構成するバランスが絶妙です

動きとまとまりがよく、それでいて迫力もあって
いわゆる、現代の盆栽人の感覚にマッチする中品です



前の直幹の九重では、流行の変遷に惑わされることなく、ここまで育て上げた作者の一途な情熱に感動した私でしたが
この中品の懸崖に対しては、作者の現代的なセンスと技術を褒めたいですね

現代では、優れた山採り素材が豊富であった戦前と異なり
盆栽は人工で育てて作る時代となっています

山採り素材のような芸と迫力をできるだけ短い年月で作り出すには
培養、技術、センスなど高いレベルの力が要求されます

そのうえ、この中品が天然の山採りのような風格を備えるには
さらなる培養が必要になりますが

ともかく、育て作るという現代の盆栽に求められる道程を
しっかりと歩んでいると云えましょう

大いに期待します

2007年11月9日金曜日

千葉県盆栽名品展より

今年はあの夏の猛暑とそれに続く過酷な残暑、おまけに台風の当たり年のため
雑木類の葉のあがりが悪く、県展の出品も松柏類の方が多い

反対に冷夏の年は、松柏類の葉が伸びなかったり、うまく揃わなかったりで
それが秋以降の展示会の出品傾向に影響を与えます

という具合で、ちょうどいい年って案外に少ないんですね

では、少ない雑木類の中で、私の気に入った「いぼた」の双幹をご紹介します


樹高は約50cmほどで、盆栽としては大きすぎず小さすぎず、ちょうど手ごろなサイズ
松戸市に隣接する流山市の愛好家さんが出品されたものです

見どころをいくつか上げてみます

・鉢を小さくしめて左下の空間を大胆に演出した感覚
・親の足元の子幹を小さく作り込み、全体の枝も大小の弾みをつけたバランス感覚
・小枝の先や幹肌に持込の古さが伺え、抜群の管理

いぼたという樹種は関東地方の山里に普通に自生していて
私の住む松戸市にも見られますので、山採りも可能です

ごくごく地味な樹種ですが、持込とともに枝が密になり
灰褐色の木肌が古色を帯び、なかなかに趣が感じられるようになります

盆栽に仕立てられるようになったのはそんなに昔からではなく
30年から40年くらい前からでしょう

ですから、このいぼたの双幹は、現在の盆栽界においてごくごく古木のうちに入ります
私の観るところ「国風展」にも入選の可能性があるので、思い切って挑戦することを勧めました

ただし、鉢をもっとおごることが必須の条件です

2007年11月8日木曜日

第31回千葉県盆栽名品展より

恒例の千葉県盆栽名品展が開催されました
期間は11月2日から4日、場所は千葉県柏市にある県民プラザのギャラリー

さて、出品された盆栽の中からいくつかを話題にしてみましょう

早速ですが↓の直幹の樹種、わかりますか?
樹高はおおよそ80cmくらいで、幹の直径は足元でやや30cmもあったでしょう

ともかく、一目見て樹種の見当がついた盆栽人はかなりのベテランですよ



正解は、八房五葉松の「九重・ここのえ」
樹齢は推定でおおよそ40年から50年くらいでしょう

思い出しますと、この九重が1本の接木苗としてこの世に誕生したしたころ
盆栽界はまさに直幹ブームだったのです

樹種の特性も考えずに、何でもかんでも針金をかけて真っ直ぐにして
無理やり直幹体に仕立てました

今でも、その当時名木と称された黒松や九重などの古木に出会うことがありますが
多くは、その後の直幹ブームが去ったあと持ち主の情熱が薄れ、培養が行き届いていない場合がほとんどです

作落ちしせがれた黒松や九重を見ると
零落した過去の遺物をみるような、やるせない哀しい気分になります

しかし、稀にこの九重のように、満々たる生命力をみなぎらせ
天にすっくとそびえた力強い直幹の姿に接すると、ほんとうに嬉しいですね

直幹体の神々しいまでの荘厳な雰囲気
しっかりと管理された直幹盆栽の少なくなった現在では、まさに貴重な名木です

流行の変遷に惑わされることなく、ここまで育て上げた作者の一途な情熱に対し
盆栽人のひとりとして、賛美と感謝の念をお伝えしたい

以上、このような感慨を覚えながら、この九重の直幹を鑑賞しました

教訓:流行は一時のもの、ただし盆栽の命は悠久のもの
一時のブームや流行にとらわれずにわが道を行きましょう

2007年11月6日火曜日

黒松葉透かし(続)

前日の黒松と同時に手入れをした黒松もご紹介しましょう

二年前に、幹模様と枝順のよさにほれ込んで手に入れた黒松
樹高は12.5~13cm以内でゆっくり出来上がる、ピッタンコ、現在の人気サイズです



二年前に春の葉透かし作業後の画像

模様に間の抜けた緩みがないですね
それに、曲の外側に理想的な枝配りもばっちりです

模様をつけるための切り戻しの傷がまったくないのも
このサイズの黒松としては、ごくごく稀少だと自負しています



作業途中

一年目はほとんど夏の芽摘みをせず、もっぱら樹勢をつけることに専念
二年目の今年は春に植替え、7月10日以後に芽摘み(短葉法)しました

但し、強い芽だけにして、普通以下の勢いの芽は切らず(葉が伸びている部分が芽摘みをしなかった箇所)

注意点:芽摘みはすべての芽を切るのではなく
各芽の勢いをみながら、強い芽は摘み、弱い芽は切らない、という思い切った調整が必須



↑の二年前の姿と見比べてください、葉数もふえて貫禄がでてきましたね

先日親しい友人がこの黒松を見て、太ったね、とびっくりしていました
写真で見ると目立たないのですが、実物を手にとってみると成長がよくわかるんです

きっと来年以降は、さらに加速度がついて旺盛な生育をみせてくれるでしょう

要点:盆栽の太りは芽数と葉数の多さに比例します
太らせたい木は多めに、反対に太らせたくないものは少なく、芽と葉の数を調整するように

2007年11月4日日曜日

黒松葉透かしなど

近年稀なる、暑く過酷な夏を経験した今年の培養シーズンもようやく終わり
そろそろ盆栽の鑑賞期に入りました

1年間の培養の成果を確かめ
来季のための構想を練りながら準備作業も始めましょう

さて、この夏の芽摘み(短葉法)を昨年よりも10日ほど後にずらしました
例年は7月1日を目安にしているのですが、今年の夏の暑さを考慮したのです

注意点:7月1日はあくまで関東地方の標準であって、極言すると「盆栽屋.com」の適期なのです
地方や個人の培養条件のよってかなり前後しますので、早く自分なりの最適期を見つけ出しましょう

結果は上々、樹勢も葉の伸び具合もよしで
やはり黒松は暑さが大好きなようです

10月の初旬から半ばにかけ、今年最後の肥料をタップリやっておき
11月に入ったら、葉透かしと芽数の調整などの作業を行います


7月11日に頭の部分を中心に夏の芽摘みをしました
向かって左の一の枝については、力をつけるためにごく強い芽だけを摘み
普通以下の勢いの芽は芽摘みをせず、そのままの状態

葉の長い芽は芽摘みをしなかった箇所です
おかげで一の枝には勢いがつきました

さあ、作業にかかりましょう


頭の部分の作業
新葉の元に残った古葉は、葉の元を数ミリ残してすべて切り取ります(盆栽用語:もみあげ取り)

注意点1:小品の場合、ピンセットで引き抜かず、必ずハサミで切り取ります
葉元に隠れた芽の吹き出しを期待するためです

注意点2:一箇所から3本以上の芽が密集して出ている場合は
残す芽数は最多で3本まで、残りの不要芽は切り取ります


頭部の葉透かしと芽透かしを終えました
真上より


短葉法をかけなかった一の枝周辺の長い葉を、やや短めに切りそろえます
こうすると全体の姿がよく見えて、来季の構想を練るために便利です

注意点:葉切りをする場合は、よく切れるハサミを使うこと
また、切った後に霧水をたっぷりやって、葉の切り口からハサミの金っ気(かなっけ)を洗い流すとよい


完成に向けての構想を練ってみました
ご覧の通り、今後の目標は向かって右の枝葉の充実にありますね

注意点1:図のような輪郭線を早く作るためには、焦りは禁物ですぞ
急ぐと、フトコロに芽のない間抜けた枝になってしまいますよ
じっくり時間をかけ、3年計画で輪郭を仕上げていきましょう

注意点2:冬季の鑑賞のため、葉透かしは軽めに行いました
来春の出芽前に、現在の新葉のもみあげも3~5対残して透かす、という大切な作業が残っていますので、忘れずに

さあ、みなさん、マイ黒松の手入れをしよう