2009年5月19日火曜日

作る・きんず

黄金色の真珠玉のように輝く実成りで大人気のきんずが
寒さの大嫌いな樹種であることはよく知られています

ぶじに越冬したみなさんのきんずは、もう新芽が動き出しましたか?
おそらく中にはまだ古葉のままで、新芽が動き出さないものもあると思います

そのようなものもふくめて5月からがきんずの手入れ時です
剪定や葉刈りや植替えなど、この時期まで辛抱しましたが解禁の時期がやってきました

さて、つれづれ草で「作る・きんず」の題名でずーっと連載しているきんずの逸品素材
今年はどのような変化を見せてくれるでしょう、ご紹介します

過去の記事を参考にしながらご覧下さい

(旧→新へ)          



5 は昨秋の11月の姿で、現在もほとんど同じ姿です
4月の下旬ゴロに肥料をやりました

きんずは今の時期に枝の切込みを行い、同時にすべての葉を刈る作業を行います
眠ったままのきんずでも強い刺激を受け、いっぺんに芽を吹いてきます



冬場の管理のよかったものは、このように既に芽が動いています
お持ちのきんずの葉が黄ばんで艶がない、そんな場合でも、剪定と葉刈りをし植替えてあげましょう



枝の剪定は下の利き枝から上に向って順に行います
丸坊主に切り込み、吹いた芽に2回の針金をかけているのでかなり枝が分岐していますね



太い枝から子枝、そして孫枝へと分岐しています
小枝への針金かけは今年で最後、そのあとはハサミ作りで自然な枝ぶりを目指します



2年前に 1 で切った大きな傷口、きんずは肉巻きのいい樹種なのでごらんのとおり



傷口は年月とともに肉巻きの速度が遅くなりますから、肉の内側をもう一度削り直してやりましょう
新しくなった傷口は再び肉巻きの速度が速まります



傷口には多めにカットパスターを塗っておきましょう
おそらく今年いっぱいで完全治癒します



剪定と葉刈り作業終了
しかし芯の部分には手をつけていません



5 でもお話したように、2つの赤点の距離が2cmと長すぎる問題はまだ未解決なんです
これは今年の宿題として、是非とも解決したいと思っています

計画としては、今年の入梅過ぎまでこのまま伸ばしっ放しに勢いをつけ
上の赤点も部分を切り、下の赤点付近に新しい芯になる芽を吹かせようと考えているのです

続きはまたお知らせ致します

では

2009年5月15日金曜日

ぶなの芽摘みと葉切り2

芽出しの不揃いだったぶなに
頭頂部ふきんの予備的な芽摘みをほどこしてから一週間

やっと全枝の芽が揃いました
やはり第一段階の予備的作業は大切ですね

ちなみに、ぶなは雑木の中でも葉刈りを行わない樹種ですから(芽が揃わないなどの理由)
今日の作業をしっかりと覚えて実行してください


それでは全面的な芽摘みと葉切りの作業を始めましょう
要領はもみじの場合と同じです


1芽か2芽を残して、その残した葉を画像のように切ります

注意点

山もみじ楓などは1節から左右に一対の芽が生じる対生ですが
ぶなは1節に1芽が交互に生ずる互生ですね

よって、もみじや楓のように「片葉切り」の作業は行いませんし
またやりようもないということですね

ともかく、芽摘みと残した葉の表面積を減らすための葉切りをしっかりと行いましょう


作業途中

力をつけて太らせたい芯はそのままにします


芽摘みも葉切りも行わない「芯」


作業完了(一と二の利き枝ももう少し太らせたいのでそのままです)

フトコロに十分な日光と風が入って内側の芽に元気が蘇ってきます
また葉切りによって水揚げが制御され、真夏の葉やけ防止にも役立ちますね

2009年5月10日日曜日

山もみじ大改造

通常の人間時間に比較してみると「盆栽時間」は単位が長く大まかです
人間の都合に合わせて、水やり一日何回とか朝晩とかいうのは短い方で、たいがいは年単位で計る

だから盆栽人は「あと2年」とか「3年たてば、よくなるぞ」なんて
平気で思えるんですね

そんなところから私は、盆栽時間の最小単位は春夏秋冬の四季であり
通常の単位は年だと思っています

しかし、「盆栽時間」に慣れきった気長な盆栽人にとっても、1、2年はあまり長くは感じないのですが
やはり4、5年がかりの大改作となると、ちょっと億劫になってきます

そのため盆栽人たちは、1年でも時間を短縮するために知恵を絞り
時には枯れ死の危険にさえチャレンジ、涙ぐましい努力をしています

ということで、私たちも奮って大改造にチャレンジ
盆栽界の発展に微力ながら貢献しましょう(大袈裟かな?)



足元がきれいな形に裾野を広げ、木肌にも山もみじ特有の縦縞が入って真っ白で
葉形も切れが深く細かい、いい素質に恵まれています

ところが、枝はだらしなく伸びすぎて力がありません
まして双幹の主幹は形が崩れて、まるでガタガタ

先日暇つぶしにある小さな交換会をのぞいたときに目に付いた山もみじ双幹
このままだとひどい姿ですが、とっさに秘めたる素質を見込んで大改造の素材として手に入れたものです

うれしいことは、今春にしっかりとして本式の植替えがなされていることです
これで1年は短縮できましたね



いかがですか、きれいな足元でしょ!?
根張りの間口は9.0cm強あり、双幹の立ち上がりの幹の直径は4.0cm、迫力も満点です

今年1年はしっかりと肥培して樹勢の回復をはかります
枝も葉も切らずに、ただひたすら太陽と水と肥料の効果にゆだねるのです



後ろの足元もこのようにしっかり張っています



2つの赤点の位置が主幹と子幹の新しい芯の予定位置
主幹の赤点までのサイズは7.0cm

2つの芯は胴吹き芽、もしくは呼び接ぎで作ります
その時期は来春から入梅にかけての予定

赤線で示した枝は不要な枝ですが、今年は切らず来春までがまん
今年中は樹勢回復のために、枝葉はなるべく多くつけておくのです

傷口は1年で完治するでしょう



骨格部分の拡大図



3年後の予想図
予定樹高は10cmピッタリ、期待してください

2009年5月9日土曜日

ぶなの芽摘み葉切り1

もみじ、けやき、楓などとともに代表的な雑木樹種のぶな

ぶなの原生林などで知られるように非常に強壮で樹齢が長く
雑木盆栽としては珍しく男性的な雄々しさがその特徴です


ぶな(取り木) 樹高18cm

今日の教材は,
親しい友人の同業者が10年ほど前に大物盆栽の頭を取り木したもので
小品界においては、ぶなの逸品は皆無といえる現況に挑んだ意欲ある作品です

骨格を作り上げていく過程で太りを促すためやや徒長ぎみに仕立て中でしたが
今年から本格的に枝先を追い込み小枝の完成を目指す計画です

取り木による逞しい根張り、堂々たる立ち上がり、整った枝順など
18cmの小品サイズでは稀に見る素質に恵まれ、大木感あふれた姿が魅力です

さて、ぶなの芽出しは雑木類の中ではもっとも遅く
4月下旬になってやっとほころんでくることも珍しくありません

このぶなも昨秋の大幅な追い込みをかけたため
それまで勢いのよかった頭頂部を中心とした部分から芽出しが始まりました


頭頂部付近の芽出しの様子
芽出しの順に1~2芽を残して摘み取りましょう
(頭頂部はなるべく1芽を残して深めに)


ぶなの芽先は他の雑木に比べて太くてしっかりしているので
ピンセットもしくはハサミの先端で摘み取ります


芽出しの順序ががバラバラなので
とりあえず早い芽先だけを大雑把に摘んでおきます

他の遅れている芽の動きを促進する効果がありますから
本格的な芽摘みと葉切りの前に、あらかじめこの作業をやっておいてくださいね

つづく