2012年11月28日水曜日

けやき2年間の成長

みなさん、自分の盆栽たちが、思いのほか成長していることに
ふとしたときに気がついて、改めてビックリしたり喜んだりしすることがありますよね

棚に置いて毎日水をやって、毎日のように観察していると
かえって目が慣れてしまって、案外その成長に気がつかないものなんですね

私のような業者は、愛好家さんに買っていただいて
その盆栽に何年ぶりにお目にかかったときなどによく経験します

そんなとき、「ずいぶん太ったねー、よくなったよ」と大感動して本気でほめても
持ち主さんはあんがい気がついていないで、慰めや激励と感じる愛好家さんもいらっしゃる(笑)

そんなわけで、みなさん、やっぱり写真ですね
折々に手持ちの盆栽たちの写真を撮ってやりましょうよ

参考関連の過去のページ(重要です)

      


2012/11 撮影 樹髙13㎝

この春に2年連続の根張り矯正を兼ねた植替えを行い
主に葉刈りと芽摘みを励行したけやき

ちなみに、昨年は葉刈りはせずに
芽摘み、葉透かしを主として培養しました

↓の画像は2年前の姿
どうです、かなりの成長ぶりでしょう

えッ?同じけやきですかって?
もちろん同じですよ、枝分かれなど細かいところを見比べればわかりますよ


2010/12撮影

この時点から2作(にさく)したんですね

ちなみに、この時点の幹元の直径はおおよそ1.0㎝
現時点は3.0㎜太って1.3㎝になっています

さて、ここでおもしろい計算をしてみましょう

幹の太り具合を直線の距離で測るとたったの3.0㎜で30%増しです
ところが、これを幹の輪切りの円の面積で計算すると

π×半径の2乗で

2年前 π×0.5×0.5=0.785    (平方センチメートル)
現在は π×0.65×0.65=1.326  (平方センチメートル)

となり、2年前の数値を現在の数値で割ってみると

1.326÷0.785=1.69

となるので、このけやきは何と2年間で約1.7倍も成長したことになるんですよ
面積が1.7倍ということは、体積も1.7倍増量したことになりますからね

どおりで、↑の2枚の画像を見て下さい
まるで大人の子供の胴体ほどに印象が異なっていますよね

こんなわけで幹の太りは、たとえ1~2㎜であっても
幹の輪切り面の面積や体積は、その半径の2乗に比例しますから凄いですよ

このけやきも、あと1年も培養すれば1~1.5㎜くらいは太るでしょう
そうすれば、2年前に比べて幹の輪切り面の面積や幹の体積は、2倍以上になっちゃうんです

もちろん、毎年同じ割合で成長するわけではありませんが
この数字を見れば、あらためてがんばりたくなりますね


現在の画像

↓の2年前の枝先と見比べて下さい


2年前の枝先


現在の画像

↓の2年前と見比べると、すっかり逞しくなった骨格と自然な枝分かれ箇所が目につきます


2年前の画像

立ち上がりから枝分かれのまでの太りが十分でないため
枝分かれの箇所の方が太く見えて、まだまだ幼い感じが残っています

成熟した古木感が漂ってきている現在の画像と見比べて
印象が一番異なるのはこの箇所ですね

それでは、今日は2年間のけやきの成長を観察しました
みなさんもご自分の盆栽を見てやって下さいな

それでは、よろしくー!

2012年11月19日月曜日

スクール速報・真柏の検証

前項でご紹介したツカさんの相棒がターさん、この人がおもしろい
盆栽からはじまって、ギター、釣り、将棋からパチンコまで

無趣味の私などからみると、まるでやらないことはない感じで
その豊富な経験談を聞くはまことに楽しみです

さて、そのターさん愛培の真柏
飾れるレベルの持ち込み品で、今秋にサバやジンの部分に化粧を施しました

ところが、ターさんとしてはサバ幹の部分がややおとなしいのが気になったらしく
彫刻刀や電動工具を使って、新たな挑戦を始めたのです


サバの彫刻途中の画像です
白い部分は先日施した石灰硫黄合剤による化粧の跡

彫刻の結果はまだ出ていないので、そのご報告は後日として
今日はこの真柏の今後の樹形や培養方針について、あらためて観察して見たいと思います



1ー樹冠部が形よくぎりぎりの大きさまで成長しましたから
  今後は、これ以上の葉ガサにならないよう、摘み込みと剪定の繰り返しにより形を整えていきます

2ー1と2と3に囲まれた三角形の部分が、全体としての樹冠部になりますが
  独立した各枝がバランスよくまとまって一つの塊となるようにします

3ーこの枝の葉ガサを大きくすると幹筋が見えにくくなりますから
  適度な剪定と摘み込みを怠らないこと

4ー全体としての利き枝です
  常に力強く張り出すように努力しましょう

5ー木姿に弾みをつけるための大切な枝ですが、下垂しているために勢いがつきにくいですね
  常に上部の枝とのバランスを考えながら芽摘みをします

6ーこの枝も奥行きと動きを演出する大切な枝
  やはり下垂しているので丁寧な培養が要求されます



さて次に、ターさんは幹筋がよく見えるという理由から
この角度あたりを新しい正面とも考えているみたいなので、検証してみようと思います

画像をご覧になって、みなさんのご意見はいかがですか?
結論から言うと、私は反対で、現在の正面をとります

1 この角度だと足元の模様が緩くなり、ややおとなしくなってしまう

2 中間の幹筋の模様が、3曲とも同じリズムを繰り返しているので
  単調な印象をうけてしまう

の二つが主な理由です

私はそのことよりも、今回画像にして見て、植付け位置がやや狂っていること気がつきました
最初の2枚の画像を見て下さい

幹の傾き加減はぴったりと決まっていますが
やや左側に寄って植付けていますね

このように左に傾いた木の場合は
鉢の中央よりやや右側にずらして植付けるのが正解でしょうね

そうすれば構図的にバランスがとれて
さらに安定感が出るでしょう

そんなことに気がついた今回でした

それでは、また
ターさん、彫刻がんばって!

2012年11月16日金曜日

スクール速報・山もみじ中品

以前、「元気で積極的な中高年」とご紹介した、わが盆栽フリースクールの最古参で最年長のツカさん
盆栽だけでなく、語学学校に通うなど、初々しい向学心に燃えた少年のようなその生き方には溌剌としたものがあります

相棒のターさんとのやりとりがおもしろく、まるで息のあった漫才のよう
真面目なうえにユーモアのセンスだってなかなかです

ツカさん自慢の山もみじが話題になると、「このもみじも、いずれは年下のおれのもんさ」などと年下のターさんが仕掛ける
「なーに、人生なにがあるかわからんよ、番狂わせは相撲だけじゃないぜ」、と笑いながら切り返す

さて、そんなツカさんが昨年から手がけている中品の山もみじ
今年の厳しい残暑にもめげずに作柄は上々で、葉を焼かなかったので11月になっても青々としていました

春に植替え、骨格を見直して不要枝を外し
いよいよ来年はさらなる樹格の向上にむけて踏み出す段階です


ゆったりとしたやや斜幹ぎみの模様木
右に差した一の枝に流麗な動きが感じられる雑木らしい木姿


安定した根張りと立ち上がりに自然味がある
培養を重ねて盤状に発達する予感に期待がふくらみます

また、すでに木肌にはもみじ特有の縦縞が現われていて古色感は抜群
この美しい木肌が、このもみじの品格をさらに高めていることはいうまでもないことです


中間の幹筋拡大図
やや枝数の多かった中間には枝を切除した痕跡があります

適切な培養管理により1~2年で治癒する程度ですから
心配することはありません


いくつかの課題が残されている頭頂部
↓で詳しく説明いたします



1は表情豊かな利き枝です
これ以上太らないように気をつけながら大切にします

2も必要な枝ですが、やはり抑制しながら育てたい

3はやや斜め前に向かった枝で、やはり必要な枝ですが
なるべくコンパクトに抑制しながら育てます

4は近い将来には外すことになるでしょう
ただ、あまり性急な追い込みをすると、かえってその部分に熱をもってゴツクなることが多いので慎重にしましょう

5も定石通りに二叉に剪定することを繰り返し
枝先のほぐれを促すように

6の小枝を含む樹冠部は、実物を見ていた段階ではあまり気にならなかったのですが
こうやって画像で見ると、模様が大まかでギコチないし、4との間に空間が空き過ぎる感じです

これでは、針金の矯正か切り戻しにより
↓の図のように、芯近辺の幹筋の流れを矯正することも視野に入れたほうがいいようです


白線のような感じで幹筋を通せばやわらかさも出るし
幹の傾きと利き枝との構図的なバランスもよくなります

さてさて、このように素直さが見どころの模様木は案外に難しいですね
ツカさん、実物を見てもう一度検討してみましょう

2012年11月7日水曜日

スクール速報・水石台座

トリクンはフリースクールの最年少で、参加するようになってまだ1年半くらい
とはいえ、その人なつこく素直な人柄からごく自然に仲間にとけこみ、急激な速度で進歩をみせている超新人です

特に水石の台座作りでは、試作品第一号を見せられたときから
「この子は才能あり」と強く感じました

その後は、紫檀の本格的な材料で4から5作くらいの段階ですが
私は彼には、高いハードルのプロ並みのアドバイスをと心がけてきました

彼は現在の段階においても、早くもすでにアマチュア作家としては十分な制作力を持っていますが
ただ、彼の潜在的な能力からすると、この段階で合格点をやってしまうのはまことにもったいない

もちろん、プロの台師になれとは勧めませんが、プロ、それも達人並みのセンスと技術を持った
アマチュア名人になってもらいたいと期待しています

これからたくさんの水石に出会い、いろいろな経験を積んでいけば
必ずそれは達成されるでしょう

では、実際に彼の最新の作品をご覧に入れましょう


佐治川の山形石小品(間口8.0×奥行き3.0×高さ3.4㎝)

以前に付いていた台座の画像

トリクンはこの佐治川石の彫り込みが中途半端であるため、台座から石が浮いて見えるので
練習のために紫檀の台座を新調させてくれ、と言ってくれました

この台座もアマチュアの作品とは思われ、紫檀や花梨ではなく
雑木類のありふれた材料ではありますが、石の映りはよく仕上げもまあまあ


後ろ姿
確かに彼の指摘のようにちょっと浮いた感じですね
もう少し台座を彫り込めば、据わりがよくなり落ち着いた感じになるでしょうね


さて、↓でトリクンの紫檀の台座をご紹介する前に従来の台座をよく観察しておいてください


左側半分の拡大図


右側半分の拡大図

台座作りはセンスのほかに非常な集中力と根気の要る作業
これくらいのものができれば、アマチュアの台座師としてはかなりイイ線いってるんですよ

さあ、これからがトリクンの作品ですよ
↑の従来の台座とよく見比べながらご覧下さい


トリクンの紫檀台座(間口8.0×奥行き3.0×高さ3.1㎝)

約3.0㎜ほど深く彫り込んだため全体の高さが3.0㎜ほど短縮され
石と台座に格段の一体感と落ち着きが出ました(とにかく0.5㎜がものをいう世界)

このように水石と台座が吸い付いたように感じられることが肝腎
石を引き立てながら目立ち過ぎないように、地味にしっかり自己主張する台座が優れた作品といえます

また、正面に2本あった足が1本除かれたため
左右の広がりが演出され景が大きく感じられるようになりました


やや角度をかえて正面より

周囲の側面にやや変化をつけたデザインにより
変化と動きが巧みに演出されています


従来よりも深めに彫り込んだことがわかります

右側、至近距離に足が2本配されています
台座の足の本数や位置は制作者がかなり神経を使う箇所です


仕上げの研磨も大切
木のぬくもりと硬質で精緻な線の融合が紫檀台座の魅力です


正面より


台座内部の彫り込みのようす
トリクンの精緻なノミの痕跡をご覧下さい


ノミの痕跡が美しく感じられるようになってきましたね


後ろ姿


足の数、足の位置
石との一体感を演出するためには、非常に大切な要素です


内部のノミ跡をもっと見る


内部拡大図


内部で石が安定するように石底の凸凹を正確に捉えています


足の形や大きさ、高さも重要な要素

みなさん、トリクンの台座、いかがでしたか?

トリクンはもっともっと上手になりますよ
またご紹介します

ご意見お待ちしていますよ