2010年1月7日木曜日

サイズと樹形・姫柿



この姫柿は、腕利きのセミプロが根伏せから仕立て上げた小品盆栽(樹髙12㎝)ですが
10㎝以内のサイズが好きな愛好家さんからは、なぜ10㎝以内で作らなかったの?

そういうご質問をたびたび受けました
この姫柿の画像を見た小品盆栽の愛好家のみなさんの多くも、そう感じたことでしょう

そこで、サイズを詰めることは今からでも簡単なことですが
その前に、なぜこれほどの腕利きの作者がこのサイズを選んだのか?!

作者の意図や好みを推測してみるのも面白そうですね
それではいろいろ考察してみましょう


芯付近をじっくり観察すると、高さ8~9㎝のあたりに赤点で示した新しい芯の候補がたくさんあります
作者はそれを知りながらも、その候補たちのさらに上部に強い模様をつけ、現在の芯を作っています

ちなみに、この作者はかなりの腕利き目利きで、ミニサイズの魅力も知り抜いた人です
決してうっかりなどということあり得ません

その非凡さは、一度下方へ戻りながら再び立ち上げた強い幹模様に現れています
単にボンヤリとサイズを伸して作った芯ではありません、表情がとても豊かに作られていますね

その人がなぜ?!


↑の画像をご覧ください

堂々たる立ち上がりと緩みない模様を持った逞しいボディーが、この姫柿の最大の見どころです
しかし、一、二、三と順調な枝順の上に芯を作れば、サイズも10㎝以内でおさまりもいいのに

あえてその上まで伸した理由を推測すると
おそらく、ミニサイズの定石を超えたところに美を表現したかったのでしょう

そのため作者は、あえてこの太い青線で記した空間を作り出し
もう一箇所の強く印象をアピールする見どころを演出したかったのでしょう

太い青線で記した空間が、樹形のスケールをさらに大きくしていることは確かです
サイズを犠牲にして、スケールの大きさと見せ場を選択した作者の意図は、みごとに成功していますね

その他に樹形やサイズが決定された要素の中に
この作者が小品盆栽から大物盆栽まで幅広く取り組む人だ、ということも考慮に入れるべきでしょう

大物愛好家の場合、箱卓(はこしょく)を使わないため、サイズにはあまりこだわらない傾向があり
それよりも見せ場の要素を一箇所でも多く演出しようとします

私は今、優劣を言おうとしているんっじゃありませんよ

大物盆栽家と小品盆栽家の傾向や感覚の違いに触れているんです
このため同じ素材を前にしても、両者のイメージする完成図のサイズや樹形はかなり異なってきます

サイズにこだわらず、より多くの見せ場を求める大物愛好家
サイズにこだわり、あくまで素材の定石を通そうとする小品愛好家


今度は小品盆栽家だったらの作り方をシミュレーションしてみましょう

新しい芯のために切り返す芽は右の赤点(高さ9㎝)で、10㎝ギリギリでの完成は可能です
左の赤点は後ろ枝になります


現在の上部を切り取った図


樹項の短縮にあわせ一の枝も大幅に短くしましょう
筋の定石が通って樹形は無駄なく簡潔に出来上がりました

芯の新芽は針金で強く伏せ込み伸さないように
そして、枝間の空間に美しさを見せ場として意識しながら作り込むことです

さあー、あなたはどっちだ?!

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