席飾りで、表現をより強調したい場合に使う小道具を「添配・てんぱい」といいます
動物では、鹿、鳥、蟹、また筏や小船や釣り人など
茅ぶき屋根の民家や観音堂や五重塔などの建物も一般的です
それらの材質は銅や鉄製のものが多く
中には木製や陶磁器の類もあります
今日ご紹介するのは、陶器の小蟹
添配として蟹は多く使われますが、ほとんど銅か鉄製です
というのは、足の表現が複雑で難しいのと
丈夫な材質でないと、細い足の先などをすぐに傷めてしまうからです
その点からいっても陶器の蟹はまことに珍しいものです
ごゆっくりご覧下さい
間口6.0×奥行2.5×高さ2.5cm
江戸の享和年間(1801~1804年)、戸田治兵衛のより大阪十三村に築窯された吉向松月(きっこう・しょうげつ)窯
時の将軍に作品を献上したおり大いに喜ばれ、吉に向かうにちなんで「吉向」の窯号を賜わったと伝えられ、代々松月を名乗っています
京焼の流れをくんだ典雅な作風で、現在の当主は八世・吉向松月
何代の作品かはわかりませんが、共箱の古さや作風から
幕末から明治にかけて活躍した4代か5代の作であろうと思われます
小蟹の一瞬の動きを捉えた写実力、大胆に施された釉薬の輝きなどじつにみごとな出来栄え
細部をつぶさに観察すると、大胆かつ繊細で的確なヘラ使いの妙技が随所に見られます
別角度より
落款は「吉向・きっこう」
共箱
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