2010年10月15日金曜日

姫柿について

私たちが「ローヤガキ」という植物名を知ったのは、かれこれ30年も前になるでしょうか
はじめは信じられなかったけれど、よくよく見ても黄色や橙色の小さな実は確かに柿そのもの

デビュー当初はよくあることで、珍品種として一部盆栽人の投機の対象にもなり
棒切れのような根伏せ苗が1万円もした時期がありましたが

すでにそのころには盆栽市場もかなり発展成熟していたため
比較的冷静に価格の落ち着くのを待つ姿勢の愛好家が多かったようです

それもそのはずで、まずは根伏せや実生での繁殖が容易であることがすぐに知れ渡ったし
肝腎の盆栽樹形としての可能性がまだ未知数だったからです

その老爺柿(以後姫柿と呼ぶ)が徐々に普及するとともに量産の時代は終え
こんどは実生による実の色彩や形の変化に流行の矛先が向かい始めました

やはり本格樹形に仕立てられるかどうかが、盆栽人の最大の関心事なので
単なる園芸品種で終わるか、盆栽樹種になりうるかを見極めないことには、爆発的な流行までに至りませんね

私自身も20年ほど前、人差し指くらいの幹の太さで樹髙12㎝ほどの幹模様も枝順もいい
当時として希にみる小品の逸品を手に入れたことが一度ありますが

そのほかには唸るような名木に接したことがないので
姫柿という樹種にさしたる熱を感じたことはありませんでした

余談ですが、その小品姫柿はバブル絶頂期とはいえ、品種的に希少なこともあって
なんと10万円もしたのを、はっきり憶えています(2万円の利益をのせて同業者に売った記憶もある)

そのように、姫柿にはかなり無感動のままの約30年でしたが
どうしたわけかこの数年、お、お、お、というような将来性のある小品や中品クラスにお目にかかる機会が増えてきました

考えればそれもそのはずで、デビューからの年月を考えれば、量的にはかなり以前から飽和状態になっている姫柿のこと
何年も前から今日を見越して、量より質の生産体制に転換した生産者も多いはずです

顧みると、珍品種として鳴り物入りで盆栽に登場した樹種であっても
年月が経ち量的な飽和状態になった時期に、本格盆栽が登場しないことには、やがて見捨てられ消えゆく運命にあるようです

その観点からすると、姫柿は盆栽界に確実に残れるといえるでしょう
幾多の盆栽人の努力により培養法も進歩し、小品や柔らかな模様木樹形や文人樹形に見るべきものが確実に増えてきているからです


姫柿(紅宝樹)

親しい市内の愛好家が根伏せから10数年の歳月をかけた三幹
幹に傷っけのない柔らかな幹立ちがみごとです


もみじや楓のような雑木の風情
枝順も端正につくられたやさしい風情が見どころです


いわゆる赤実という品種
秋の深まりとともに真っ赤に色づきます


拡大図

姫柿の培養のポイント

1 多肥多水で育てる

2 植替えは3~4月に最適(9~10月も可)

3 剪定は春植替えと同時に行う

寒さにも強く強壮な樹種です

では

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