2004年4月6日火曜日

鉢ものがたり


雄山は誰もが認める現役絵付け鉢のトップ作家
やがては盆栽小鉢作家として、古典の仲間入りする存在であることは確実です

その雄山鉢の五彩(ごさい)の名品をご紹介しまします

サイズは間口12.7×奥行10.5×高さ4.2cmで
雄山の初期から中期にかけての油の乗りきった時期(昭和50年代前半)の作品です

重厚な形状とすっきりとした足元
白磁の色も純白で光沢があり、雄山独特の淡い色彩の色絵を引き立てています

的確な筆図使い、構図の巧みさ、遠近感など
雄山の熱い情熱が伝わってきます


淡く押さえた色調がここまで鮮やかに人の眼を引くのは
澄み切った白磁の効果と、雄山の筆力の絶妙さがもたらすものです


右側面からの図です
絵がつながって描かれていますね
これを回り絵と呼びます、作家としては面倒な作業だといわれています

ボディーのわりに足が小さく全体の姿がすっきりしています
みごとなバランスです


裏面を同じ角度から見てみます
絵の向きが反対に描かれています
これは盆栽を植えた場合に、盆栽の向きによって両方を使い分ける為です


雄山は鉢裏に凝ります
中央の部分を一段掘り下げてあります
こういう底を押し底と呼びます

落款は雄山としてその周り線で長方形に囲っています
この落款は昭和50年代前半のものです


↑の五彩鉢と同形同サイズの赤絵鉢
10年ほど前には、この赤絵と呉須絵(青の釉薬)が一対で私の手元にありました

そこへ↑の五彩鉢が仲間入りしてきて、赤絵との新しい組み合わせの一対となり、市内の愛好家の所蔵になりました
呉須絵のほうは何処へお嫁に行ったのか思い出せません、今となると三枚一組だったらと悔やまれますね

一対の姿

箱書き

雄山が同時代、それもほとんどごく近い時期に制作したと推定される三様の作品
その二枚は一対になってから10年間、ずーっと一緒なのに

かたや制作されてから赤絵とずーっと一対でいた呉須絵のほうは
10年前にむりやり離されて今は行方もわからない

これが人間世界だったら、過酷な運命とか無常な世の中などという表現になりそうですが
ともかく、この二つがこれからもずーっと仲良く一対でいてもらいたいですね

呉須鉢クンも盆栽界のどこかに生きているはず
そのうちきっと探し出してやるからね、迎えに行くまで待っててねー

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