2004年1月20日火曜日

東福寺名品鑑賞

今日、東福寺の名品小鉢に巡り会えました
瑠璃色で鋲打ちの撫角長方鉢です

私も商売ですから、毎日のように盆栽や鉢を売り買いをしていますが
正直なところ、必ずしも心から満足できるものばかりという訳にはいきません

ところが、今日の東福寺は一味も二味も違います
正真正銘の名品です



明るい瑠璃釉の発色がすばらしい
長年の使い込みにより渋さも加わり、独特の落ち着きが感じられます

下部のような時代感に到達するには、およそ50年以上の使い込みが必要でしょう

時代感が、このミニ鉢の本来の価値を更に高め
名品といわせるだけの風格を醸し出している大きな要素です

侘びサビを珍重する盆栽界においては
長年の持込により、盆栽鉢でさえもその観賞価値は年々高まっていきます



平凡な切立ち形の撫角鉢が、私達をこのように魅了する秘密はどこにあるのでしょう?
発色、時代感の他にその秘密をさぐってみましょう





東福寺の作陶姿勢の最大特徴の一つに「一発仕上げ」の技法が上げられ
それは特徴であるとともに最大の魅力にもなっています

その技法が胴の上下に見られる鋲の打ち方にも表れています
いいですか、上下に付けられた鋲をよく観察してください

おそらく小さく丸めた粘土を型で押すのでしょう
型からはみ出したバリが見えますね

そのバリの痕跡をそのままに放置していますね
ここが東福寺の凄いところ

並みの作家ならすぐさまぞってその箇所を修正しているでしょうね
しかし、東福寺の手は躊躇なく次の鋲を付ける作業に移っていくのです

この「一発仕上げ」の創作姿勢が、手の温もりを濃く抱いた東福寺鉢作品の魅力の根源です
そして、東福寺鉢の背景には、作者水野喜三郎の情念、人柄、さらには無欲な彼の人生さえも感じられるのです

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