2008年11月8日土曜日

尚古堂型の和鉢

東京浅草の観音様の近くの今戸という古い下町に、関東陶器という老舗の瀬戸物屋さんがありました
当時のご主人は10年ほど前になくなりましたが、おそらく今でもお店はやっていると思います

特別親しくはなかったけれど、同じ日本盆栽協同組合員としての鉢の商いを通じてのおつき合いはしていました
ご主人は盆栽には不案内でしたが、鉢の世界ではあの「舟山」を専門的に扱う店として知られ、商売もなかなか上手でした

私がまだ20代の半ばごろ初めてお店を訪ねたとき、古いお店の奥が作業場のようになっていて
そこで赤玉土の製造をしていたのを、あまりに珍しい光景だったのでよく覚えています

さて今日ご紹介するのは、その関東陶器さんが 発注元となり
昭和30年代から40年代初頭、支邦鉢の名品「尚古堂」に倣って製作発売した大中小の三枚組の一枚

間口16.7×奥行11.8×高さ5.0cmのこの鉢よりも大きなサイズがあった記憶があるので
このサイズは小か中だったと思います

当時から尚古堂型の外縁隅入雲足長方は人気絶大でしたが
この型の和鉢はほかには見ることができなかった

本歌は非常に高価な宝物であり(今でもそうですが)
数も極端に少ないため、手に入れることなど思いもよらないことでした

そんな盆栽界の需要状況を見極めた商売上手の関東陶器さんが
「尚古堂」に倣った「外縁隅入雲足長方鉢」をプロデュースして発売したのです

ですから、人気の尚古堂の代用品としても意味からも非常にタイムリーでしたし
当時の和鉢の優秀性の実証という観点からも画期的なことでありました

ちなみに、「尚古堂型」というのは外縁・隅入・雲足・長方を特徴としていますが
おなじ特徴をもっていても、胴の下部が出っ張った型のは「子林倣古型・しりんぼうこがた」と呼ばれ、しっかりと区別されています



名品「尚古堂型」の和鉢の優秀作品(間口16.7×奥行11.8×高さ5.0cm)

盆栽には持込が大切なように、鉢の世界には使い込みが大切ですね
当時は普及品として製作発売されて鉢が、愛好家による40年以上の使い込みにより、この通り風格十分です

奥深い光沢と輝きを見せる土味には惚れぼれしますね
窯ものの和鉢も捨てたもんじゃない、優秀性を改めて認識させられます

ともかくくどいようですが、ごらんのように鉢は使い込みが大切
普及品として世に出回ったものでも、丁寧な使い込みにより時間をかければ鉢は立派に「出世」することの代表例です



間口と奥行きと高さのバランス、縁の強さ、胴の曲線、雲足の強さ
すべてのポイントにわたり本歌の特徴をみごとに倣っています



縁、胴、雲足の拡大図
尚古堂型特有の隅に僅かな切り込みがあります



鉢裏と雲足のようす



落款は「関東陶製」

みなさんも身の回りを再点検してみてください
長い間使い込んでいるうちに、思いのほかに「出世」している鉢があるかも知れませんよ

では

2008年11月3日月曜日

作る・きんずの芯作り

7/22のつれづれ草でご紹介したきんず
芽の伸びがとまり葉も固まったので、針金を外して成長具ぐあいを検証してみましょう



今年の夏の中盤以後は不順な天候が続いたため、多水多肥をさけて培養をしてきたので
新芽ん伸びや太りは標準以下ですが、気候にあわせた適切な方法だったと思います

さて、現在の画像はここで針金を外した後の全体の姿ですが
針金をかけた芯や枝作りの成果はどうでしょう



針金をかけた結果、枝の基本から次の枝分かれができて、ずいぶんと枝がにぎやかになってきました
来春に各々の枝先を1~3cm残しで切り詰め、出た新芽の先をさらに二又に分岐させます

それにより枝の基本はかなり完成度がたかまります
ということで、枝作りは順調にいっていますね



さて、芯作りですが、昨年の新芽の基点である下の白点と、今年の新芽の基点である白点をご覧下さい
この筋が大切な芯なのです

ところが、二つの白点間の距離が2.0cmとちょっと長いんですねー
理想的には、上の白点が赤点の位置に欲しかった!

つくづく眺めてみても、昨年の新芽の部分が間が抜けて見えちゃう(いわゆる首なが)
あーあ、昨年の新芽を真っ直ぐに伸ばしっ放しにしないで、針金で曲げておけばよかったなー、残念!



見やすいように周りの枝葉を消してみました
ね、みなさん、昨年の新芽の部分が真っ直ぐで下方の幹と違和感がありますよね

せめて白点間の距離が1.0cmなら我慢できますが、2.0cmは長すぎる
これはまさしく、失敗でした

ということで、今後の解決方法はまだ決めていませんが
とにかく現在の芯をこのまま使うわけにはいきません、先々に禍根を残すこと必至

くやしいですが、芯作りはやり直しです

では

2008年10月31日金曜日

五葉松について

五葉松といえば、なんといっても黒松・真柏とならんで松柏盆栽の王者
盆栽界における名木の数では、黒松と真柏をおさえて第一の座に君臨します

日本列島本土の南から北まで広く分布しており、樹齢も非常に長く
小さな鉢の中での長い年月の培養にもよく耐える強壮な性質をもっています

私が盆栽界に入った昭和40年代の初期には
その優れた葉性と皮性から、四国の石鎚山系と赤石山系の全盛時代

葉性と皮性から、四国五葉より一段低く見られていた福島産の五葉松が
四国産と偽って市場に出回っていると噂になったほどでした(いまでは産地偽装だ)

当時は八房の全盛時代であり
今考えてみると、過度な葉性に対してのこだわりが蔓延していた時代でしたね

そのブーム的な風潮が一段落して以後は、産地にこだわらず
いいものはいい、悪いものはわるいと、冷静に評価するようになってきました

ですから、現在の盆栽界で「これは四国五葉だ」とか「いいや福島だよ」
などという会話はほとんど聞かれなくなりましたが、これが正常な状態ですね

とはいえ、「五葉松は葉性が命」という金言は、古今かわることなく生きつづけています
長いよれた葉っぱを培養の工夫で短く真っ直ぐにするのは、至難の業ですから

ちなみに現在の五葉松の産地としては 
四国地方、那須地方、福島地方などが有名です


那須地方の五葉松筏吹き五幹立

八房ブームをきっかけに有名になった那須五葉松
ブームが去った以後も、その優れた特質からしっかりと盆栽界の人気者として定着しました

緑が鮮やかで太めで真っ直ぐな短い葉性、芽吹きがいいので枝分かれが密になりやすく
盆栽向きの素質に恵まれています

画像の五葉松の筏吹きは、市内の親しい愛好家さんが20年ほど丹精したものですが
当時からの樹高(25cm)はほとんど同じ、いかに徒長しにくいかが推測できますね

加えて、フトコロ芽が蒸れにくいという長所も特記に値するでしょう

輪郭線はしっかり保っていても、フトコロ芽がまったく無くなっている五葉松
みなさんもよく見かけるでしょ、ああなりにくいんですね、那須五葉は


葉の拡大図
色つやよく、短くつまった真っ直ぐな葉


下枝にもしっかりと勢いがありますね


後ろ姿


後ろ足元

ところで、盆栽界全体では恵まれているのですが
一方小品盆栽界に限ってみると五葉松の名木は極端に少ないのが実状です

一流展示会の小品棚飾りの天に五葉松の本格模様木
これって極端に少ないところからも推し量れますね

やはり黒松などに比べて成長も遅いし、追い込みによる胴吹き芽も吹きにくい
それらが理由でしょう

しかし、小品盆栽界にも五葉松大好き人間はたくさんいます
画期的な技術はないものか!?

2008年10月29日水曜日

黒松芽切りその後

黒松の芽切りの時期はつくづく難しい
葉が固まって揃う時期になると毎年感じることです

芽切りの時期は

・気候(気温・日照時間)
・各人の置き場の条件(日照時間)
・樹勢や老若
・肥料や水の管理
・植替え年数

など、いろいろな条件を考慮して各人が工夫してをこらしてはいても
なにせ年々の長期の天気予報が思うとおりにいくとは限りません

今年の夏の初めはとにかく暑かったですね
そこで私は例年よりもさらに遅めにと決めていて、今までで一番遅い7月15日を中心に行いました

ところが、8月の中旬以後は日照時間が少なく,大雨が降りましたね
それですっかり予想の狂ってしまったわけです

2008/10 撮影 樹高10cm


 2008/6 撮影


この黒松ミニはたまたまの成功例です
まだ若い木でありミニサイズのため、葉がちょうどよく短めに揃いましたが

これがもっと樹高の高い黒松であったら、葉が短く感じるでしょうね
やはり樹高サイズも芽切り時期の条件として考慮した方がいいでしょう

そんなわけで、今年の芽切り時期の設定はみごとに失敗!
来年こそはと反省しているところです

みなさんはいかがでしたか?

2008年10月25日土曜日

姫リンゴ一年間の成果

姫リンゴは何時ごろ生まれた品種かはわかりませんが、私が盆栽界の足を突っ込んだ昭和40年代の初めごろには
接木による苗の生産が盛んに行われていて、畑作により太物盆栽がたくさん作出されていました

その後一時は盆栽としての人気がすたれ、園芸物として一段下の品種と見られる時期もありましたが
今では小品盆栽界のメジャーな樹種として、どっこいしぶとく生き残っています

秋を彩る豪華な実なり盆栽としての役目があり、樹勢も強く培養が容易で
さらに、取り木による技術の発達により、根を小さくして小さな鉢に収めることが可能になったことも大きなプラスです

さて、今日は2鉢の姫リンゴの一年間の培養による変化と成果を検証してみましょう

2008/10 撮影


 2007/11 撮影

2008/10月撮影


 2007/11撮影

・どちらも木姿に大幅な変化はありませんが、わずかに枝打ちがよくなりました
・枝先が落ち着いて短果枝がついていますから、来春には花が咲き実が成る状態になっています
・一年前には何となく素材じみた幼い感じが残っていましたが、足元に持込の落ち着きが感じられるようになりました
・おなじく木肌にも古色感が漂い始めました

そうなんです

このように素材の段階から一歩盆栽に近づくには
小さな鉢に持ち込む必要があるんですね

そのことにより、素材の枝うちや木肌に落ち着きと風格が滲みでてきて
盆栽らしくなってくるのです

じっくりと両者の違いを見分けてください
盆栽としてのだ一歩を踏み出す前の素材と、盆栽への道を走り始めた姫リンゴの姿です

この微妙な変化と成果を見分けることができるようになれば
あなたも盆栽人としてベテランの域に達し、盆栽の楽しみをより一層深く味わうことができるでしょう

2008年10月24日金曜日

山なし(野生種)

最近では「梨の盆栽」もあちらこちらで見かけるようになりました
「豆梨」とか「満州小梨」など、交配による改良種が普及してきました

今日ご紹介する「山なし」は、わかりやすく言うと在来の野生種で
富士山周辺に自生するもので、自生地では白い花を咲かせピンポン玉くらいの実が成ると言われています

ただし、盆栽として培養した場合の実績の情報が少ないので
はっきりしたことは言えませんが

梨にしては小さめの葉や枝打ちの細かさから見て
そう簡単には実が成るとは思えませんね

しかし、照りのある小さめの葉っぱや枝打ちのよさ
それに、灰色を帯びた幹肌の味わいからして、盆栽としての特質は十分に備えている樹種ではあります



夏ごろに仕入れた「山なし」
秋になって案外に紅葉のきれいなことに気がつきました



従来の「梨」のイメージからすると、紅葉が格段にいいですね
これも盆栽向きの大切な要素の一つです



惜しいけれど葉っぱがついていては幹筋が見えませんから
思い切って早めの葉落としをしてみました

・枝打ちの細かさ
・灰色の幹肌の雅味

けっこういけるでしょ



調子に乗って、完成予想図を描いてみました
枝打ちが細かいので、この完成予想図は可能な範囲だと考えています

このように、身近に自生している樹種で、まだ盆栽樹種としてメジャーではないもの
そんな樹種の特質を見極めて盆栽化するのも、一つの楽しみでしょう

この役目は、近くに野山のある地方都市の愛好家さんのお役目ですね
未開の樹種に挑戦されている愛好家さんがいらっしゃったら、是非ともご連絡を頂きたいと思っています

ではでは

2008年10月22日水曜日

出猩々取り木準備

人気の割りに仕立てられている数が少ない出猩々もみじ
ましてミニ盆栽は、なお稀少ですね

そこでみなさんに、出猩々ミニ盆栽の素材の作り方を伝授しましょう
安い費用で確実に優良な素材をゲットできますよ



今年の春に上野グリーンクラブで、知りあいの園芸店のおじさん(私よりちっと年上)から
しっかりと値切って買った出猩々もみじ、たしか4.000円くらいだった記憶があります

樹高は9.0cmですが、足元から2.0cm上がった箇所で取り木をかければ
完成樹高が6.0cmくらいの、可愛らしいミニ素材を作れそうです

しかし、いきなり取り木をかけても、肝心の根張りが心配
そこで、取り木をかける予定の高さに、針金をちょっとキツメニ巻いておきました



ほらほら、ごらんください、針金でせき止められた箇所です
光合成により葉で作られ根っこに蓄積されるべき養分が、針金により途中でせき止められています

出猩々は、普通の方法で取り木をかけても発根は容易な品種ですが
この方法を併用すれば、八方根張りは間違いなしです



来年の5月ごろに針金を外し、栄養分の蓄積されたくびれの箇所の上部(白点)から
環状剥皮の取り木をかけます

白点の部分には、針金によりせき止められている養分がたっぷり蓄積していますから
わずかな日数(2~3週間)で発根します、それも八方にですよ

このように、急がずに一年よけいに時間をかければ
しっかりと根張りの整ったミニ素材がゲットできるのです

急いでやって、のちのち根張りの悪い素材で苦労するよりも
盆栽時間での一年間は最小単位の時間ですね

急がば回れ、実行してください!

2008年10月20日月曜日

もみじ樹形作り計画

前回のつれづれ草で取り上げた「紅千鳥」のように芽出しの美しい「山もみじ」
樹形作りにあまり突っ込まなかったので、少々物足りない方もいらっしゃったでしょう

そんな思いがしたので、改めて樹形作りの計画に触れてみました
それでは


白点と赤点の位置が以前に「節」のあった箇所で、ここを芽吹きのしやすい「芽ツボ」と呼びます
樹形作りにあたっては、この芽ツボの見極めが非常に大切ですよ

来春に切り戻して芯を立てる位置は、高さ4.0cmの赤点を選ぶのが正解
白点では、幹筋からの曲の流れが、わずかに間延びしてしまいますね

間延びした芯では、全体の印象がぼやけてしまい
逞しい足元や迫力ある幹模様も台無しになってしまいますね

樹芯は人に例えれば顔にあたります
きりっとしまって小さめに、これが印象の強い樹形作りのコツです


余計な枝などを消してボディーだけを見てみましょう
なおはっきりと樹形作りのポイントが見えてきます



・芯の赤点の右は樹芯として立て、左は樹芯を形成する枝の一本として使います

・芯の右下方にも芽ツボがありますから、これも枝として使えます

・左の細い枝は途中から切り戻して活用します

・右の一の枝が欲しいところには芽ツボがなく、将来の芽吹きは不可能なので
 来年の5月ごろに呼び接ぎを施します

・裏枝はちょうどいい位置にあるので心配なし

以上で芯と枝順の基本は出来上がります


完成予想図

3年くらいの計画でボディーと枝の基本は完成
その頃には傷もすっかり完治します

ちなみに完成予想樹高は7~8cm
必ず山もみじミニの名品が誕生します

2008年10月18日土曜日

もみじの話・盛りだくさん

今日はもみじの話ですが、取り上げた素材のおかげで話題が盛りだくさんになります
まずは「もみじの品種」と「樹作り」について、そして「葉落としや剪定時期」や「傷口の処理」などの細部に至ります

それでは始めましょう



この素材は、一昨年の冬にまとめて買い入れた山もみじの中の一鉢ですが
春の芽出しがオレンジ色がかった鮮やかな紅色で、山もみじとは明らかに違っていました

もしかして紅千鳥かなと思い、今年一年間芽出しから夏ごろまでしっかり観察しました
しかし残念ながら、かなり紅千鳥に近い特徴が見られるものの、真性の紅千鳥とはいい切れませんでした

山もみじの類はいわゆる風媒花で、いろいろな花粉が飛んできて受精するので
この素材のように、実生により親木と異なるいろいろな性質を示すことが多いのです


素材の葉形を調べて見ましょう
上の葉は5つに切れ込んでいますが7つに切れ込んだ葉も多いようです

紅千鳥と山もみじの両方の性質を併せ持った
いわば中間種のようなものでした

葉がすべて上のようであれば、他の特徴からして紅千鳥にかなり近いのですが
下の7つに切れ込んだ葉の割合の方が多いので、紅千鳥と言っては「うそ」になってしまいます

前回の「つれづれ草」で真性と類似種のお話をしましたが
まさに昔流通した類似種に近いものです


さて、こんどは樹形作り

昨年の春に、従来の芯であった幹をバッサリきって
一の枝を新しい芯として再出発しました

芯を徒長させ思い切り太らせたので
二年の間に幹のコケ順が理想に近い形で出来上がってきました


後ろ姿

切り戻した初期には、こちらの角度が正面になる可能性もありました


今年の春に貼ったカットパスター
内部で肉巻きが促進されるとカットパスターの表面にひび割れが入ります


当初の傷は2.0×3.0cmもありましたが、切って二年経ってかなり傷口が小さくなりました
現在の傷口の大きさは1.3×1.8cmくらい、あと二年で完全治癒するでしょう


カットパスターを貼りなおし


ふつう葉を落とすのは11月に入ってからがいいでしょう
葉の状態によりますが、あまり青々としている場合では芽が吹いてしまい寒さで傷めてしまいます

この素材の場合は、葉がやや黄ばんきており冬眠期に近い感じなので実行しました
なお、やや早めに行ったので、枝を長めに残しました


白点と赤点に芽つぼ(節)があり、この芽つぼから来春の新芽が吹きやすい箇所です
理想の位置は赤点(高さ4.0cm)ですね

この赤点から吹いた新芽に針金をかけて芯を作ります
大地をしっかり掴んだ根張り、幹模様、幹のコケ順など、迫力のあるミニサイズの山もみじの模様木を目指します

この段階では枝順にあまりこだわってはいけますん
もみじ類は呼び接ぎが容易なので、ボディー作りを第一に考えて作りこみます

2008年10月15日水曜日

梅もどきの素質

実ものが目に付く季節になりました
きょうは人気樹種の梅もどきについてお話しましょう

実もの盆栽の中でも落葉後の実成りの姿がとくに華やかな梅もどき
小さい葉と繊細な枝先も盆栽樹種向きです

しかしここで、この梅もどきを手に入れるときにみなさん(とくに初心者の方)に一言
「実の華やかさに惹かれて、大粒のものを買ってはいけません」

中でも「大納言」などという品種は、接木で仕立てた実が大粒で成りやすい園芸改良種なので
葉が大きく枝打ちも粗いため、小枝ができにくくとても盆栽向きではありません

実生から仕立てたもので、なるべく葉が細かく枝打ちが密な素材をみつけましょう
そのような盆栽向きの性質をもった梅もどきは、必ず実も小さめです

実生と接木素材との見分けは、足元の立ち上がりを見ればわかります
若い素材には接木の痕跡が残っていまから



実生の梅もどきの実と葉のようす
手持ちの中品を撮影したものですが、実と葉、枝打ちなどの性質は中程度です

中程度!?
そうです、実生ものの中にも、実や葉の大小や枝打ちの良し悪しがあるんです

まあ、あまりこだわっては本末転倒する恐れがありますが
できるだけ優れた素質をもった実生の素材を探すように心がけてください

2008年10月9日木曜日

紅千鳥もみじの特徴と見分け方

昭和のバブル期に登場した「紅千鳥もみじ」
当時あまりの人気に、「紅千鳥」のようであっても、厳格に判定すると首を傾げたくなる「類似種」も出回りました

春の芽出しは鮮やかなオレンジ色がかったピンク色ですが、入梅頃になると山もみじのように緑の葉になってしまうため
その後の見分けかがつかず、業界でもかなりのトラブルが続出しました

そして始末の悪いのは、上記の理由で「真性」と「類似種」の区別がつきにくいところから
盆栽界の悪しき習慣で、「だろう」が「だ」になってしまい、悪意でなくとも、最後に泣きを見るのは愛好家さんたちでした

紅千鳥の特徴は

1 春の芽出しの美しさ
2 やや小ぶりな端正な葉形
3 繊細な枝先
4 持込とともに真っ白に仕上がる木肌
5 取り木などの繁殖が容易である

などが挙げられますが

さあ、そこで問題なのは紅千鳥とその類似種を見分けるコツ
落葉期でも木肌の雰囲気で見分けが可能ですが、なったって今日ご紹介する葉形で判定するのが一番です

ちなみに、盆栽屋.comは生え抜きの「もみじ大好き人間」なので
「紅千鳥」登場の初期段階からこの判定法を身につけていましたから、トラブルに巻き込まれたことはありませんでしたよ

この方法は現在でも、専門の盆栽屋の間でも案外に知られていません
ですからこの記事を読んだ方は、今日から「紅千鳥の専門家」としてちょっと威張れますよ(笑)


今年取り木によってゲットされた紅千鳥の超ミニ素材(樹高4.0cm)

赤味がかった新枝の軸の色が紅千鳥らしい
でも、これは紅千鳥だよ、って言われなければわかりませんね

紅千鳥の葉

別な鉢の紅千鳥からから採取した葉、下の山もみじの葉とよく見比べてください
そして、その違いを発見しましょう (わっかるかな!?)

山もみじの葉

そうです、紅千鳥の葉は5ツに切れ込んでいますね
比べて、山もみじの葉は両端の裾に小さな切れ込みが入って正確には7ツですね

簡単なことですが、これが決定的な相違なのです

・「紅千鳥」は5ツに切れ込んでいる
・「類似種」や「山もみじ」は7ツに切れ込んでいる

のです

注)紅千鳥もみじの葉をよく観察すると、その中にたまたま「右の葉」のように
端ににちょっと切れ込みが入って(赤点の箇所)正しくない形のものが混じることもあります

これは紅千鳥が山もみじからの派生種であるため
先祖の血がたまたま出現することによるので、気にしなくても大丈夫

では

2008年9月12日金曜日

是好さの色紙より

先日市内の愛好家さんの数人と一杯飲んだとき、是好さんの話が出ました
是好さんが健在だったころに、市内の盆栽展示会へ度々私が案内役をしたものです

あれからどれほどの月日が経っただろう、20年か、いや25年は経つよ、などなど
ひとしきり昔の懐かしい話に花が咲きました

私の年齢は、業界(日本盆栽協同組合)においては、平均年齢を少しばかり上回っています
かなり上の年齢の先輩たちも大勢いるのですが、後継ぎのいる園では息子さんの名義になっていることが多いせいでしょう

しかし、市内の愛好家団体(日本盆栽協会・松戸支部)の一員となってみると
まだまだ下から数えた方がはるかに早く、若造の部類に入っています

しかし、改まって周囲を見回してみると
当時青年から壮年に差し掛かっていた私が親しくしていた方たちの多くが、今はすでにいらっしゃらない

また存命であっても、車椅子やら要介護の生活となっていて
盆栽を楽しむことはすでに無理となっているではありませんか

そんなわけで一杯飲みながら、あの人もこの人もと指を折りながら
懐かしさとさびしさにいつしか深い感慨を覚えてしましました

湿っぽい話になったなーとは思わないで聞いてください
これからが本番なんです

私は、20年も30年も前に亡くなった人たちの思い出話は
盆栽をやってなければ、ダアレもしてはくれませんよ、と常々思っています

あの人の持ってた○○、いまは○○さんが持ってて、よくなってるねー
△△さんが可愛がってた△△、オレのところ来てからずいぶん太ったよ

あの人は管理もよかったし腕も確かだったね
□□さんは目利きだったぜ、贋物なんか一発で見破っちゃったよ

盆栽は愛蔵品を人から人へと受け継ぐ文化であり
さらにそれを愛した人の人柄や精神性も、次代の人へと末長く語り継がれていくのです

まさに、「人生は短し、されど盆栽は長し」



是好さん直筆の色紙
山水図は当時としても珍しかったようです



裏の為書きの年号を見て驚きました
1978年と記されています

もうあれから30年経ったんですね、人の記憶ってやっぱりいい加減でした

2008年9月6日土曜日

加茂川茅舎石

遠山石、滝石、磯形石などともに
私たちに親しみのある水石に茅舎石(くずやいし)の分野があります

茅舎(くずや)とは日本古来のカヤブキ屋根の家のことで
古きよき時代の日本の里山の風景には欠かせないものです

ですから、盆栽の席飾りにおいて、たとえば実もの盆栽に茅舎石を配すれば
穏やかな山村の秋の景色がより鮮明に強調されますし

また長寿梅などにあしらえば、希望に満ちた早春を迎えた歓びの風景となります
草木と水石とが一体となって様々な場所と時を連想させてくれるのです

盆栽席飾りの中でも特に茅舎石が好まれるのは
このように、日本的な情緒のある景色を表現するのにピッタリだからですね



加茂川・茅舎石   間口4.8×奥行4.3×高さ5.0cm

茅舎石は真新しい立派な家を思わせては面白くありませんね(笑)
古びて屋根の茅がやや崩れかかったいたり、柱などもやや傾きかけた感じのほうが興趣があります

この茅舎石は、傾きかけた家の奥から透けのぞく光が侘しさを募らせますね
石の時代感もたいせつなことです、ともかく郷愁の趣を大切にしたいものです



戸障子が破れた感じが寂しげな風情を強調していますね

このように石に穴が開いて向こうへ抜けているのを、水石用語でヌケと呼びが
石の景色に変化を与え重要な役目をしていることが多いですね

さらに、この茅舎石のようにヌケが天然であれば理想的ですが
そんなことはめったにないものなので、目立たぬような少々の加工であればガマンすべきでしょうね



きっちりとした三角形の屋根では面白くない
左右非対称の美が私たち盆栽人が好む感覚です

そして最後に、今までなんどもお話しているように
”石を眺めながらも、じつは見ようとしているのは石でない”
をわすれないように

2008年9月3日水曜日

添配・曙山

盆栽界における唐金(青銅)の添配ものの作者として
英正と並び賞されるのが「曙山」

一説には英正の師であったとか弟子であったとかいわれますが
詳しいことは定かではありません

ただ盆栽や水石の世界との接触はかなり緊密であったようで
20年も前のことですが、私自身が手に入れた水石の台座が曙山作の青銅製でした

水石の台座は木製であるのが普通ですが
自らの愛玩用にか、それとも依頼されての注文制作であったか

あまりの珍しさに非常に感嘆したことをおぼえています
それはとりもなおさず、曙山の盆栽水石界との関わりあいの深さを表す事実です

ちなみに、盆栽界において、この曙山と英正の二人を最高峰の名人としますが
残された作品は曙山の方が圧倒的に少ないのです

作風は似通っていますが、添配を好む仲良しの同業者どうしで
曙山と英正とどちらが優れているかということが話題になり

やはり20年も前のこと、たまたま手持ちの似通った同じ題材を扱った両方の作品(そのときは童牛)で比べてみると
牛の顔や肢体の表現などにおいて、曙山の作品は、写実的な英正作品をより強調した力感があふれていました

これはお互いの優劣という問題ではなく、作風のわずかな違いととらえるべきであり
とにかく両者の写実力と表現力に改めて驚嘆したのでした

さて、今日ご紹介するのは曙山の「唐舟」です
見どころのポイントは二人の人物の動きの表現

ごゆっくりご覧下さい



曙山作・唐舟 間口5.0×奥行1.5×高さ2.1cm

古代中国に題材をとった作品、涌泉の作品にもよく描かれていますね
船中に座す高士と櫓を漕ぐ船頭両者の、体の動きの一瞬をとらえて絶妙です



私には、船中の高士が書見をしているように見え
そしてその右手は、今まさにページをめくらんとして一瞬宙に浮かされています

この小さな作品においても
人間の動作の瞬間を的確にとらえ表現しています



顔の傾き、両方の肩の位置、櫓を握るために伸ばされた両腕の角度など
櫓を漕ぐ船頭の肢体の動きも的確にとらえていますね



反対正面より

どこの角度から見ても絵になります



共箱が存在する英正ですが、不思議なことに曙山の場合共箱作品は存在しないのです
よってその真贋は、落款と作品のレベルで判断します

本作品はもちろんホンモノですよ!

唐舟の屋根の元(船頭の背中方向)に「曙山」の落款有りますね