2003年9月17日水曜日

鉢の命名

盆栽界には特に気に入った盆栽や鉢、水石に銘をつけて楽しむ習慣があります

そこで提案です

皆様もご自分のコレクションに銘をつけてみませんか
エエッ、恥ずかしい
それは当然です

私も頼まれて鉢や水石の命名をしたことがありますが
なんとなく気恥ずかしいもんです
しかし、ご自分で経験することによって命名されてた盆栽、鉢、水石をみたときに
興味が違ってきます

ああ、この名品にピッタリの銘だとか
あれ、他にもっといい銘がなかったのかな、自分ならこういう銘をつけるな
とか、ひとつのものを見て多角度から検証することができます
けっこう、おもしろいですよ

ニックネームをつけるぐらいの軽い気持ちでやってみてください

命名の練習問題です
平安東福寺の手捻りで三面がそれぞれに違った模様の小鉢があるので
それに厚かましくも命名してみましょう



白地に更に刷毛で一叢の白い釉薬を加えてあります
この鉢の印象は白です
この上から加えられた白い釉薬の一叢を、どういう言葉で表現するかがポイントでしょう

雪か、雲かに例えるのが日本人の素直な感性でしょうね

雪なら、新雪、深雪というところでしょうか
細雪という感じはしませんね
雲なら、叢雲、浮雲、雲海などが言葉として美しい

深雪(しんせつ)をミユキと読んでも斬新ですね



この面にピッタリの銘があります
「淡雪」
どうです、いいでしょ
でも残念なことに、盆栽界には同じ銘のあまりにも有名な竹本鉢があります
まねっこになってしまいます

浮雲もよさそうですね



この面はどうでしょう
上の二面に比べると情景が浮かびません
ここは省略します



このように言葉の遊びを兼ねてあれこれ考えているうちに
いい名前を思いつきます

他人に言わなきゃ恥ずかしくもない
自分で自分のものに勝手にニックネームをつけて心ひそかに遊びましょう

ところで上の東福寺鉢は何と命名しましょうか
ご意見お寄せ下さい

2003年9月16日火曜日

東福寺鉢の復習

盆栽界の一番有名な鉢作家は?
と問えば、ほとんどの人が「東福寺ッ」と答えるでしょう
それほど有名な平安東福寺とはどのような人だったのでしょう

本名を水野喜三郎といい京都の人
明治23年生まれ
作陶の初めは大正7~8年と言われ、本格的には昭和2~3年ごろから
昭和45年没 享年80歳

不器用な職人気質の人柄ゆえ、一生涯を通じ赤貧洗うがごとき生活であったと伝えられます

貧しさのため一生を通じ窯(登り窯)を持てずに借り窯であったようです
そのたため借りる窯の特徴にあわせ胎土、釉薬、大きさ、形を変えねばならなかったのが
その作風の多彩さにつながったともいわれています

とにかく東福寺は膨大な数の作品を我々に残してくれました


一例を上げれば、下の手捻りの丸型鉢は東福寺の定番です



指先で捻られた生地を手で触れてみると、その厚みが驚くほど均等です
熟練の技を感じます
また釉薬も単純でなく深い光沢と微妙な窯変(ようへん)が見て取れます



特記すべきはその足のつけ方です
一見単純な作業に見えますが
後世に作られた幾多の複製品も未だ真似の出来ない技なのです

足の左右からヘラで斜めに削り取るだけの技が余人には真似の出来ない
東福寺独特の技であることを知っておいてください

2003年9月15日月曜日

趣味家の作品


樹齢20年を軽く越える山もみじ
樹高はわずか9㎝です

小さくとも足元の古さと全体の構えがみごと
中村是好さんも「ミニ盆栽は役者が花道で見得を切った姿に似せて作れ」と言ってました
そのお手本のような木姿です

葉も細葉です
このような性質は枝も細く、小枝も密に繁ります


このもみじの作者とお会いしたことはありませんが
私の親しい同業者が親しくしている方で、アマチュアです
この技はプロにはできないことです

実生から20年以上かけて丹念に作りこむ
プロでは計算が先にたって、正直いって無理でしょう

ミニ盆栽界はこのような盆栽大好きのアマチュアの方の貢献度が大です
そういえば中村是好さんだって、その師匠の杉本佐七さんだって偉大なアマチュアだったのです

鉢の表面に網が張ってありますな
小さい鉢から植え土が流れないように工夫しているんです


後ろ姿も絵になっています

2003年9月14日日曜日

六角鉢の正面

堀江美功はベテランの中堅鉢作家です
黄釉(きゆう)の文様入り六角鉢の正面を検証してみましょう


作家はこの面を正面としているようです


この面はデザインからいって正面ではありません


ところが六角鉢の場合
普通はこのように角を正面にして制作されているのが一般的でが
しかしこの美功鉢の場合はデザインからいって無理があります

ここで注意するのがこの六角鉢が六本足であることです
六角鉢は三本足に作られていることが多く
その場合はほとんどこの角が正面になるように図柄も工夫されています

これは宿題が残ったようです
同じ六角鉢でも三本足と六本足とでは、いわゆる鉢作りの作法が違うのかも

美功ほどのベテラン作家が間違えているとも思えません

もう少し資料にあたってみましょう
私の宿題です

2003年9月13日土曜日

駿河山正

中堅鉢作家の駿河山正(するがやましょう)の作品です
紫がかった茶褐色の土が特色で、彫刻を施しています
この彫刻が駿河山正の得意中の得意技です

蟹が五匹砂浜で戯れている図です
なかなかいい出来栄えです



10数年前、上野の都立美術館で開催される国風盆栽展の会期中のことです
売店を出していた私のところへ、帽子を被り眼鏡をかけた無愛想なおじさんんが
自作の鉢をみてください、といって訪ねてきました

見ると、すべての鉢に素晴らしい彫刻が施されています
土は紫がかった茶褐色でした

素晴らしい彫刻の技術だが、相手は盆栽鉢だ
これでは彫刻が目立ちすぎて、盆栽を引き立てるどころか
じゃまをしてしまう
もう少し彫刻を控えめにするほうがいいだろう

そんな意味にことをはっきりと言いますと
自分の技術によほど自信を持っているらしく
かなりの不満顔でした

駿河山正という名はその後に知りましたが
あの無愛想なおじさんは自分の作品を誉めてもらいたくて
私のところへ持ち込んだのだと気がついた次第です

今ではかなり知られた鉢作家になりましたが
相変わらす素晴らしい彫刻を施した盆栽鉢を製作しています

彫刻がうますぎて盆栽を入れるには難しいところもありますが
観賞用にはおもしろい鉢です

2003年9月12日金曜日

中堅鉢作家

小鉢作家に好んでランクをつけるつもりはありませんが
この世界にも正直いってそれは存在します

現役の作家のほとんどは中堅作家(Bランク)といっていいでしょう
将来にわたりAランクに位置するであろう現役作家は数人でしょう

現役の時代からAランクの評価を得ている作家は
物故されると(失礼な話ですが)とたんに評価が上がるのが普通です

そしてBランク以下の作家は見向きもされなくなることが多いようです
考えると非情な世界のようですがこればかりは仕方ありません

そんな訳で、収集するにもAランクばかりを対象にする方もいますが
たまには世の中を広く眺めて中堅作家の作品も眺めてみると
おもしろいものに出会うことがあります


石田祥石(しょうせき)の作品です
形のすっきりとした丸型で、地の文様も丁寧です
中央に描かれた花の文様が色彩も地味で品があります
祥石の作品では出色の出来栄えと思います


勝山(しょうざん)の作品です
この鉢を見たときに内心驚きました
こんなにうまい絵が描ける作家だと思っていなかったからです


特に裏面に描かれた水に棹さす船頭の姿のいいこと
これには感心しました

手ごろな値段で中堅作家の作品の掘り出し物を探すのもおもしろそうです
(もちろん鑑定眼に自信の有る人にお願いしますよ)

2003年9月11日木曜日

真柏再生計画

これも最近手に入れた真柏ですが
あちこちと枝枯れして、禿坊主になっています
昨日のクチナシと同じ方が所有していました

この真柏は大丈夫でしょうか?
枯れちゃうかな?

大丈夫です、真柏は丈夫な樹種です
簡単には枯れません

私だって冒険をするくらいですから、よーくッ観察済みです





真柏類が枯れる時には、気がついたときには全体の葉が生気を失っています
また枯れた部分が落葉するようなら見込みがあります
この真柏のように部分的に新芽が緑で伸びているものは枯れません

昨日のクチナシと同じように、来春に植え替えます
新芽を刈らずに根の回復を待ちます

クチナシと同じように入梅過ぎには元気になります

元気がなくなると慌てて植替えするのは弱効果
慌ててはいけません

水を少なめにし肥料はやらずに静養させます
そして植替えの適期まで辛抱します

2003年9月10日水曜日

クチナシ再生計画

数年前に雅風展に出品された経歴を持つクチナシを手に入れましたが樹勢を落とし全盛期の勢いがありません

盆栽の一生は順風満帆のときばかりではありません
元気のないときもあります

このようなときが大切なのです
被害を最小で食い止めいかにして元の元気に戻すか
復活の再生計画を建てましょう

その計画を建てるには樹勢を落とした原因を究明することが第一の仕事です



全体的に葉の色が褪せています
これが特定の箇所だけとなるとかえって怖いのですが
この場合は、肥料不足、植替え不足による根詰まりなどが考えられます

注意してみると鉢土の表面が真っ黒ですね
肥料の粕をよく掃除しなかったためにそれが植え土の目に入り込んで
水はけや空気の流通が悪くなり、徐々に衰弱したのでしょう



検証した結果、内科的な緩やかな治療で健康を回復できそうです

今年中は水も肥料も少なめにして培養する

来春には鉢の表面の目詰まりした土を取り除くことを心がけ
やや大きめの仕立て鉢に植え替えます(四月下旬)

その場合に水はけよく植え込むことを第一に心がけます
また剪定は行いません

以後は根の充実を心がけます
根がよく伸びているかは新芽を観察すればわかります

六月中旬ごろまで肥料をやりませんが
以後は芽の伸びを見ながら少しずつ施肥します

入梅明けには元気を回復しているはずです

2003年9月9日火曜日

市ノ倉石州鉢



市ノ倉石州作
紫泥外縁象嵌額入絵付長方樹盆(しでい・そとえん・ぞうがん・がくいり・えつけ・ちょうほうじゅぼん)

月ノ輪湧泉(つきのわ・ゆうせん)
宮崎一石(みやざき・いっせき)
藤掛雄山(ふじかけ・ゆうざん)
佐野大助(さの・だいすけ)
月香(げっこう)
(抜けている作家の方はごめんなさい・思いつくままなので)

等は絵付け鉢の作家として知られています
市ノ倉石州もその精緻な画風で知られた鉢作家です

作品はそう多くはありません
それだけに貴重な存在です

↑の鉢の象嵌というのは、絵を描く額の部分に磁器をはめ込む技法です
陶器に部分的に磁器をはめ込むので窯に入れた場合に
収縮率が違い失敗の確率が高いといわれますが
石州はこの象嵌技法により幾多の名品を世に出しています

鳥羽僧正の鳥獣戯画から題材をとったものです
うまいでしょ
この動的な絵がみごとに描かれています

相撲に勝ったほうのカエルの得意げなポーズがこっけいですね

2003年9月8日月曜日

取り木の魅力

名木への近道として取り木の技法を活用しましょう

ピラカンサの取り木物です
おそらく取り木後3年くらいは経っているでしょう

親幹と右の子幹のバランス、また全体の流れが非常にいい
それに幹の古さが申し分なく、取り木の技法のありがたさを感じます

挿し木の苗からこれだけの古さまで持ち込む年月を節約できるんですよ
何十年の節約!
有限な時間です、大切に使いましょう


ピラカンサの取り木は根張りが大きく発達します
この根元はまだ未発達です
そのあたりから判断して取り木後3年くらいと判断しました

取り木は時間の節約です
取り木をしよう!

2003年9月7日日曜日

美男桂の実



この不思議な形の実が秋の深まりとともに真っ赤に熟します
美男桂の実です

一本の木に雌雄の花が咲くので
真夏の早朝に、雄花を採って交配します

この実の形と色がおもしろいので盆栽界では非常な人気樹種です
秋の展示会に彩りとして一鉢は持ちたいですね

ちなみに食用に向くかどうかは試したことがないのでわかりませんよ

2003年9月5日金曜日

ネットで講評2

ネットで講評の二番バッタはー「リョウ」さん
ご自分で実生から25年丹精した楓を投稿されました

樹高 15cm・ 樹幅 22cm・ 根張り(盤根状 12cm)

今後は、枝のほぐしを重点に手入れをしたいと思っております。
ことしは、冷夏のせいで葉がやや大きくなってしまいました。
もう一度葉刈りをした方がいいでしょうかね?

というコメントが添えられています

「みなさんへ内緒話」
これはやりにくい、実生して数年のものならメチャンコ言えるけど
へたをすると、リョウさんの25年間の歳月を否定することになちゃいますからね
これは甘口にならざるを得ないかも

それでは心してはじめます



正面の図

1 根張りよーし

2 幹も(太いね)よーし、微妙なユスリもある、これもよーし

3 枝順は見えないけれど、枝下の左右の空間がきれいです
  この空間の形から推測して、よーしと思えます

4 樹冠も見えないけれど、幹のコケ順から推測するとよさそうです

5 枝先のほぐれはご自分でも言っているように、さらなる努力が必要なんでしょう

6 培養面では、再度の葉刈りは気候からして無理しない方がいいでしょう
  かわりに、大きめの葉を処理してフトコロ芽の充実をはかってください

と、ここまでは言うことなしの状態ですね
しかしこれからが本番です

1 枝はよく見えないが、枝元がやや細いように思えます
  古木の相を表現するには、最低一と二の枝に力強さが欲しい
  それにより全体の表情が一段とはっきりします

2 鉢の選定です
  現在の鉢も写っています、形も色も
  けれど根張りがいいので、どうでしょう、楕円の鉢を試してみたら
  楕円は奥行きがあります

3 後ろ枝の利いたのがあるのかな?画像ではちょっと見えないのですが
  落葉後の裸の写真を見たいですね

全体の講評
25年間のリョウさんの努力に敬意を評します
またその技術も高く評価します

こんごも本番の(1)に留意して、なお樹格の向上を目指してください
いいですか、盆栽には表情が大切なんです
わかっていただけると思います

みなさん、わかりますかー!
  


側面の図



後姿

2003年9月4日木曜日

これは便利

生活上のことでも、ちょっとした工夫でかなり便利になることがあります
盆栽のことでも同じです


肥料をやっても落ちやすい
植え替えたばかりは表面が落ち着かないで水やりのたびに土が流れる

お困りの方は、ネットを活用しましょう
蜜柑などを入れて売っているビニールのネットです


適当な長さに切って鉢の下から履かせます


上部はこんな具合です
特に縛ったりはしません

これだけでOK
肥料は落ちないし、土も流れません

ここれは便利だ裏技です

2003年9月3日水曜日

傷の修理痕



足が少し欠けた大助鉢を見ました

欠点はあってもこの鉢は、とても小愛嬌(こあいきょう)があり
大助鉢の作風としては珍しいもなので購入しました

手前の足に傷の修理の痕がありますね
欠けた部分を樹脂のようなもので修理してあります
義足のように足を継ぎ足したのです

これなら実用にも向きますね

傷の修理の仕方はいろいろありますが
ここが傷の箇所だと分かる方法でもいいから
本体を傷つけないように
あっさりと修理して使えるようにしてある場合は好感が持てます

反対に目立たないことを第一に考えて修理してあるものは
場合により悪用される恐れもあり、気をつけるようにしてください

修理の技術も年々向上して
生半可なプロでは見破れないものも市場に出回っています

機会を見てそのほうの勉強もしましょう

2003年9月2日火曜日

深山かいどう



姫りんごの仲間の深山かいどうです
この画像の深山かいどうは小さい鉢に入ったミニ盆栽のせいもありますが
もともと実の小さな種類です

一口に深山かいどうといっても実も枝の性質もたくさんあります
小実のものから姫りんごに近い大実のものまであります
色艶もそれぞれです

盆栽向きの品種は小実で葉が小さく、枝伸びのしない品種です
このような性質のものは平均して木肌も荒れやすい性質をもっています

園芸品種で、実の色が真っ赤で艶があり大きめのものなどは
枝が粗く、木肌も雅味がでにくいので盆栽向きとはいえません

おなじ深山かいどうにも盆栽向きの品種があるということを覚えておいてくださいね
これを無視すると、いくら努力しても結果は得られませんよ

2003年9月1日月曜日

是好鉢


ミニ盆栽で有名な中村是好さんは
晩年になってさかんに鉢の絵付けをしました
ボディーは、薩摩焼とこの鉢のように半磁器に白磁ものとの二種類が知られています

描かれているのは鳥が木に止まって木の実(柿)を食べようとしている図です
裏側には「この道やいく人なしに秋の暮れ」と俳句が書かれています
おそらく芭蕉の句でしょう
是好さんの署名もあります

使い時代も十分でサビのある鉢ですね





落款は本体を作った人のものです
「矩」という字です
辞書で調べると(さしがね・かねざし)と読むそうです

不思議なことにこの人物のことはほとんど知られていません
是好さんの口から聞いた覚えもありません
是好鉢の不思議とでもしておきましょう

2003年8月31日日曜日

竹本辰砂

竹本隼太は幕末の人で、4千石の旗本であったそうです
維新後陶芸の世界に入りました
かなりの変り種といえるでしょうね

さいわい我が盆栽界にも、小鉢を中心に幾多の名品を残してくれました
今日はその作品を見ながら陶芸の世界でいう
「釉溜まり・くすりたまり」の魅力についてお話します


竹本作
辰砂釉正方樹盆(しんしゃゆうせいほうじゅぼん)
(間口6.7cm×奥行6.7cm×高さ3.1cm)

濃い赤紫の釉薬が足元すれすれのところで止まっていますが
ころあいを見計らって窯の温度を下げなければ
釉薬は足元を覆い隠すほどに流れてしまいます

陶芸家にとってこの瞬間の判断が難しいそうです


このように上のほうから熱に溶けた釉薬が足元の手前で止まって
ぽってりと溜まった箇所を「釉溜まり・くすりたまり」と呼びます

釉薬の量感が感じられてとても魅力的で
鉢の愛好家にはたまらない景色です

みなさんもこれから焼き物をみるときには
この釉溜まりに注目してみましょう

2003年8月29日金曜日

涌泉鉢絶品


久しぶりにある盆栽界の古老を訪ねました
もちろんお目当てはこの湧泉鉢です

親子ほど年の違う間でも友達です
盆栽が人間関係をそう導いてくれるのです
これがこの世界のいいところ

ひときり昔話に花が咲きました
「宮ちゃん、子供大きくなったろ、なに、もうおめえもおじいちゃんかい、孫はかわいいだろ」

もーッ、おれをいくつだと思ってんだよ、孫の話は前にもしたのに
古老の頭の中の私は、駆け出しのころの私なのです

そのうち話が月ノ輪湧泉鉢のことに及ぶと、古老の目がさらに輝いてきました
目の奥には隠そうとしても隠し切れない、商売人独特の厳しさがチロチロと見えるのです
(私も商売人ですからわかるんです、プロを相手にしたときのプロの目が)

この厳しさがいいんです
これのないプロはやる気のないファイターみたいで魅力がありません
この目の輝きがある以上、この古老はまだまだ長生きしますよ

古老は気に入っているこの湧泉鉢は、とうとう言い値から一円も負けてくれません
よほど気に入っていたのですね
とはいえ何十年の長い付き合い、他のものは破格の相場でわけてくれました


間口はたったの5.8cm
実物より大きく見えます
線が端正でゆるみがありません


スキャナーで画像を取り込んでみました
繊細なタッチ、しかも線に力があります
この二つが大切です
精密なだけではつまらない絵になってしまいます


裏面の絵
まさに月ノ輪湧泉の円熟期の作品です

2003年8月28日木曜日

盆栽の生い立ち


この山もみじの盆栽はどのような生い立ちをもっているのでしょう
誕生したのは実生、挿し木、取り木、接木、それとも山採り?

生まれた場所は?
年齢は?
今までどこに住んでたの?

盆栽に聞いても直接答えてはくれませんから
姿形や鉢や雰囲気から推測するほかはありませんね

まず出生の秘密からいきますと、、取り木によって生まれた可能性が大です
一の枝が足元の低いところにあります、これが見分けのポイントです
実生苗から育てると、このように低いところに枝はできません

挿し木も考えられますが、もみじは挿し木の活着率がわるく、あまり普及していません
実生か山採り(おそらく実生)のかっこうのいい箇所に取り木をかけた素材から仕立てたものでしよう

樹齢も推測するほかありませんが
おそらく25~30年くらいでしょう
樹齢のはっきりしている他の山もみじの盆栽との比較や長年の経験から、推測します
やせ気味に作っているので、思ったより年はとっているようです

今まで育った場所は?
これも長年の経験からくる勘に頼ります
ずばり、愛好家の棚で長い間丹精されてきたものです

そのポイントは鉢です
はっきりいって映っていませんね、強すぎます
力のある松類に使う鉢です

プロでしたら売ることを考えてもっとやさしい感じの鉢を使うはずです
もちろん愛好家も鉢には神経を使いますが
もともと売り物ではないので、普段着でのんびりしていることもけっこうあるんです

長くなりましたが、山もみじの出生の秘密を推理してみました
おもしろかったですか?

2003年8月27日水曜日

雄山鉢鑑賞2

さて、今度は角度を変えて眺めてみましょう


右側面からの図です
絵がつながって描かれていますね
これを回り絵と呼びます、作家としては面倒な作業だといわれています

ボディーのわりに足が小さいことに気がつきましたか?
全体の姿がすっきりしているのはこのせいです
ボディー、足、縁などの調和はかなり難しいと思います
みごとな統一感です


裏面を同じ角度から見てみましょう
絵の向きが反対に描かれています
これは盆栽を植えた場合に、盆栽の向きによって両方を使い分ける為です


雄山は鉢裏に凝ります
中央の部分を一段掘り下げてあります
こういう底を押し底と呼びます

落款は雄山としてその周り線で長方形に囲っています
この落款は比較的古い時代のものです




両側面の絵です
側面といえど手を抜いてはいません
みごとに描ききっています