2004年9月21日火曜日

東福寺絵鉢考証の1

生涯に数万点から一説には十万にも及ぶ作品を残したといわれる平安東福寺
しかし、その膨大な作品群の中においても、絵付け鉢は100点、多く見ても200点以内といわれるほど希少です

ましてや絵付の磁器鉢となるとさらにその数は少なく
盆栽界においても、えッ、東福寺は陶器専門じゃなかったの?

磁器の作品って作ったの?絵付け鉢ってあるの?
というご質問が発せられるくらい、実物にお目にかかれる機会が少ないものです

ここに4点の絵付け豆鉢(磁器)の名品が揃っています
こんなチャンスへめったにないですよ
さっそく特徴や作風や制作年代などを考証してみましょう

よく観てくださいよー!

No.1 平安東福寺作 山水図染付楕円樹盆
間口4.8×奥行4×高さ1.6cm

 
No.2 平安東福寺作 銘「福寿」 染付六角樹盆
間口4×奥行4×高さ1.5cm

No.1 の山水図
一応外縁の形をしていますが、普通の外縁の形とは違いますね
ひも状の縁に文様が施され、遊びのデザイン性が強調されています

No.2の「福寿」
東福寺の六角鉢は数が少なく、三面に描かれたひょうきんさが感じられる洒脱な絵の趣が秀逸

双方とも、白地に淡いブルーの釉薬を練り込んだ胎土(たいど・きじ)
戦前の磁器の水盤などに見られる技法です

大きさ、雰囲気などから見るとこの二つの作品は同時期に製作されたもので
絵も同一の絵付師によって描かれたものです

呉須(ごす・青い顔料)の色調と濃さも同じで画風がよく似ています


No.3 平安東福寺作   銘「桔梗」 染付楕円樹盆
間口4.8×奥行4.1×高さ1.6cm


 
 No.4 平安東福寺作 銘「福寿」 染付長方樹盆
間口4.1×奥行3.8×高さ1.9cm

No.3の「桔梗」
白磁の透明感が抜群の質感を表しています
描かれた桔梗の図柄の構図や濃淡、繊細な筆致、雰囲気がありますね

製作年代はNo.1と同じと見られます
縁の形は違いますが、二つの楕円鉢の大きさがほとんど一緒なのです

No.4の「福寿」
東福寺はこんな小さな豆鉢でも本格的な隅入長方に仕上げています
それでいてごつくなく、ほんのりと柔らか味のある姿はみごと

この長方鉢も、白地に淡いブルーの釉薬を練りこんだ胎土(たいど・きじ)を使用しています

さて、双方の絵を観てみましょう

明らかにNo.1やNo.2とは異なった画風です
東福寺鉢の絵付師は複数いたということがこれでわかりました

それではNo.3「桔梗」とNo.4「福寿」の絵を比べるとどうでしょう?
微妙ですねー
似ているところもありますが、ちょっと筆の走り具合(速度)が違うような気もします

そう見えるのは描かれている画題が異なるのと
白磁とかたや釉薬練り込みの胎土(たいど・きじ)との雰囲気の違いからくるものとも考えられます

ここは判断の難しいところ

まあ、この結論は今後の宿題にしておきましょう
慎重、慎重!

制作年代は4鉢ともほぼ同時期です
東福寺が鉢作りを専業としたのは、昭和5年ごろといわれていますが
磁器作品のほとんどは初期と考えられています

これらの作品には、初期の東福寺によく見られる
趣味で鉢作りをしている初々しさと遊び心が濃厚に伝わってきます

みなさん、ゆっくり鑑賞されましたか
それでは東福寺の名品考証、このあとも続きますよ

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