2020年4月30日木曜日

一重紅サンザシ

ミニ盆栽としては非常に数が少ないサンザシですが、その原因はやはり実生や挿し木、取り木などの繁殖法が難しいせいでしょう。
ところで、サンザシには紅花と白花があって、出回っている紅花のほとんどは八重咲きです。比べて白花はほとんどが一重咲きでこれらは実の成る性質です。この二種類を比べてみると白花は花も実もやや地味な感じで、やはり紅花の華やかさと可憐さには一歩も二歩もゆずる感じです。


つまり一口で言うと、 紅花の方が人気があるということですね。


ところが、ミニ盆栽で有名な松平伯爵のコレクションの中には、紅花でありながら一重咲きの紅花のサンザシが愛培されていたのです。昔から好事家の中では知られていたことでしたが、なにせ申したように繁殖法が限られているサンザシのことですから、相変わらず絶対数は殖えず現在でも依然として珍品扱いです。


一重咲きは八重咲きに比べると、花がやや小ぶりで締まった感じです。華やかさよりも可憐で清潔感があり、そのうえ凛然とした強さも感じられ、非常に魅力的です。


去年、旧い愛好家さんの所持品を整理した中に一重の紅花サンザシが混じっていました。
開花の時期がきたので見分けがつきました。可愛らしい花、小輪でも見ごたえがありますね。



2020年4月22日水曜日

稚松愛草・飴釉小鉢

稚松愛草(わかまつ・あいそう)は世にこれほどの名作を残しながら、故・河合蔦蔵氏に指導を受けたアマチュア作家で、京都市下京区の稚松小学校の付近に住まう京扇子作りの職人であったらしいと僅かに伝えられているのみで、それ以上の身の回りの逸話ですらあまり知られていません。
当時、初代香艸園主故・河合蔦蔵氏の主宰する坫陶会(ねんとうかい)には平安東福寺をはじめ稚松愛草、平安萬草、永田健次郎など次の世に大家となるべき俊英がそろっていました。この中で東福寺以外は作品の数は多くはありませんが、一目見れば作家名が浮かんでくるような個性あふれた作風を有している名人ばかりです。


間口5.5×奥行き5.5×高さ4.5cm
飴釉切立変足七角

私も愛草鉢のファンで、世に愛草の名品と知られるトップクラスの辰砂や瑠璃釉の長方鉢を持った経験があります。それらはすべて両方の掌の中ですっぽりと入ってしまうほどのサイズでしたが、いずれも遠くから離れて眺めるというよりも掌の中で撫ぜたり摩ったりしてまさに愛玩すると言うイメージの鉢でした。いずれも宝石のような釉薬の輝きが感動的で、ボディーは作者の手の温もりが伝わってくるような肌触りのいいものでした。


釉溜り(くすりだまり)が個性的


七角形のボディー
薬溜りと素朴な飴釉(あめゆう)の対比魅力的

愛草の作品には基本的には長方形の鉢が主流ですが、丸系統の作品もみうけらられます。ただ、その場合であってもさすがに天下の愛草ですね、単純平凡な作品の域には留めておきません。素晴らしい縄縁(なわべり)や縄目の胴紐をつけたりして、非常にレベルの高い作品へと昇華させています。


この作品も単なる丸か六角鉢で終わらせずに、なんと奇抜なアイディアを発揮して七角形の作品として仕上げています。


高台の外側は七角形で内側は丸

愛草の落款は「稚草愛草」の4文字の書く落款で大と小があります。


釉薬の特徴は鮮やかでたっぷりした質感でY。
窯傷がありますね。


↑の窯傷の対角の縁にも薬(くすり)ニューがあります。

以上、玄人好みの人気作家稚松愛草のお話でしたが、さして多作の作家ではなかったので市場に売りにでる数もそれほど多くはなく、お目に留まる機会も少ないでしょうが、機会がありましたら是非ともよく観察してきてくださいね。

2020年4月20日月曜日

紅千鳥もみじの特徴

『人気樹種の紅千鳥もみじの記事はこの盆栽徒然草で幾編も書いていますから、検索機能を使って過去の記事も探し出してみてください。』

さて、我が「宮本園」の庭にじかに庭木として植わっているのは、紅千鳥もみじがたった1本のみです。あとはすべて鉢に植わった盆栽やその素材だけです。理由は簡単、盆栽置き場があまり広くはないので、庭木を植える余裕がないからということになります。

この紅千鳥は10年以上前に親指くらいの苗木を、将来の種木にするために私が植えたもので、今では樹高が2メートルで足元の太さが二の腕くらいの立派な庭木に成長しました。
今までにも僅かの数ですが、途中の枝に取り木をかけて小品盆栽の素材をゲットしてきましたが、昨年度はそれをせずに伸ばし放題にしておいたので、この入梅ごろには10ケ所ほど取り木ができそうです。

盆栽の枝の先端から採取した小枝

紅千鳥のもみじとしての特徴をざっと申し上げますと
① オレンジ色がかった紅色の美しい新芽。
② 端正な葉形。
③ よくほぐれる小枝。
④ 持ち込むほどに白くなる美しい木肌。
⑤ 山もみじと同じく取り木や挿し木が可能。

庭木から採取した小枝

こちらは庭木の元気よく徒長した枝の先端付近の小枝です。いかがですか?
こちらの方が色彩もやや濃く葉の勢いもいいようですね。

上が庭木から採取した小枝
下が盆栽から採取した小枝

庭木の方が勢いが葉の色彩が濃いことが歴然としています。このように樹勢が強壮であったり肥料がよく効いている場合の方が、葉の色彩が濃かったり芽の勢いもいいようです。

左が庭木から採取した小枝
右が盆栽から採取した小枝

やはりこの場合も庭木の方が葉の色彩が濃いようですね。このようにおなじ種類であっても時と場合によって色彩や形が異なる場合もあります。種類の真贋などが問題になった時などは役に立つ知識ですから、覚えておきましょう。



2020年4月18日土曜日

山もみじ・片葉切り

3月22日のブログでご紹介した山もみじの半懸崖式。足元に大きな傷がありますが、それが癒えれば葉性はいいし枝性も抜群で、樹形もお気に入りなので非常に期待しています。
盆栽は完璧なのが一番なのは当たり前ですが、でも毎日水をかけて可愛がっていると、未完成であるとか、いくらか欠点のあるようなのが面白いというか張り合いがあるものですね。


という訳で、足元の傷が癒えるのには何年もかかかるでしょうから、それまでに他の箇所をバッチリ決めておきましょう。


葉性が細かく枝が密なので、新芽が出揃うとフトコロに日と風が入らなくなり、内側の芽や小枝が弱る原因となります。


昔ですと新芽の固まった入梅前に葉刈りをするのが一般的な手入れ法でしがた、現在では余程のことがないとそれはしません。
今では「片葉切り」という技法が行われます。


やり方は簡単そのもの。もみじは対生ですから一節から出た2本の葉柄の片方を切り落とすだけです。
ざっとやっただけで当初の写真よりも葉数が薄くなっているのがわかりますね。これだけのことをしてやれば、フトコロの奥まで日と通風が行き渡るようになります。




一度大雑把にやったあとに、もう一度丁寧に仕上げてムラのないようにします。


人によってはその後に「葉切り」といって、図のように残した葉の指の部分を切りつめて面積を小さくし、さらに日と風通しを促します。

以上の作業を実行することにより、ふところの芽や弱った小枝は力強く蘇ってくるのです。
さあ、実行です!!!


・葉刈りを実行した方がいい樹種  けやき・楓
・葉刈りをせずに片葉切りをした方がいい樹種  もみじ

2020年4月14日火曜日

真柏ミニ植替え


盆栽界の人気者である真柏。その人気の秘密は、サバ幹やジンの魅力とともに、丈夫で育てやすいことも主な理由の一つでしょう。植え替え時期も2月の早春から今頃までと、秋は9月から年内いっぱいが可能です。


去年、東京の愛好家「達磨さん」から譲ってもらった中に入っていた真柏のミニ。
上下12×左右15㎝のミニサイズの懸崖で、古さと木姿は申し分ありません。ただ芽摘みなどの追い込みが足りなかったために、ちょっとばかりサイズが伸び過ぎてしまいましたね。


去年の秋ごろ、懸崖樹形の頭の部分を強く反対側の幹に縛り付けて癖をつけておきました。針金を外しても、もう十分に癖はついていました。


見どころは足元の根上り状の変化に富んだところ。ミニ盆栽でもサバ幹の捻じれた野性はなかなかです。


後ろからの足元もけっこうな姿です。



真柏は挿木や取木でも繁殖可能な樹種ですから、植替えの根ほどきも多めにやっても大丈夫です。


用土は赤玉土に2~3割の砂を入れてやります。
植替え後、水苔などで土の表面を保護してやることを忘れないようにします。


小枝を整理してしまったので、後ろから見た姿がものたりませんが、活着すれば徐々に不定芽も揃ってくるので、それらを使って枝配りを整えていきます。

植替え後の施肥について
1 今の時期の植替え出れば1ヶ月ほどで根は活着しますが
2 その後には施肥を急いではいけません。
3 施肥は活着を見極めてから1ヶ月後(つまり植替えから2ヶ月後)から始めます。

2020年4月9日木曜日

寒ぐみ鉢替え

2月の6日に木の箱に入ったまま皆さんにご紹介した寒ぐみの変わり木。ぐみの実の色が赤らんできたので、この実の色に映る青系統をさがして植え替えてみました。


盆栽の道においては、鉢の役目は非常に重要で、ただ根っ子が入ればいいと云うわけにはいきません。形も大小も、そして色彩も、さらには盆栽の持っている強弱などのイメージと調和するものでなくてはなりません。
そしてこのように植え替えた後になってみて、100%はおろか70%の合格点さえなかなかに難しいものです。
反省点
1 鉢がやや大き目のようです。
2 主木の向かって右の根の追い込みが不十分だったので、主木の位置が中心に近く
  なっている。
まずこの2点は言い訳のできないところですね。それに新品のピカピカでは趣がでていませんね。


実成りものの中では寒ぐみは渋い雰囲気の樹種ですから、やはりそれなりに古色感のある鉢を選びたかったですね。(身近になかったと言うような言い訳はダメ)


このようにジンやウロもあって寒ぐみとしてはずいぶんと古い木です。


後姿。寝の整理中に朽ちて主株から離れてしまって株も見えたので、根本から根あお整理し直しました。ですから当初の樹形とはかなり違っていると思います。

2020年4月7日火曜日

山もみじ懸崖・芽摘み

この山もみじの懸崖は、私たち業者が属する日本盆栽協同組合の本拠地である上野グリーンクラブの売店で見つけたもの。読者の中にはあそこへ行ったことのある愛好家さんも大勢いらっしゃると思いますが、たまには掘り出し物にぶつかることもありますよ。


うまく模様の入った古い傷なしの根っ子と面白い幹模様に惚れて手に入れました。たしか葉っぱのない時期だったような記憶がありますから、去年の秋から冬ごろだったでしょうか?


さて、ここで芽が出てみると、葉は切れ長で細いのですが、節間(せっかん)がやや長く伸びる性質のようです。


もちろん、もみじは節間(せっかん・節と節の間)の短い方が枝が好まれるのは当然ですが、細葉であれば手入れの仕方で細かい枝先を作るのは可能です。


山もみじは春の芽出しと共に、新芽が2~3節の伸びたら1節残して摘みます。


このように、刃物を使わずに爪の先や指先で摘んだ方が木が傷みません。


摘み残しのないようにていねいに摘むと、遅れた芽もドンドン勢いづいて伸びてきますから、1週間くらいで2度目の芽摘みをしてやりましょう。


懸崖式の樹形の場合なども垂れ下がった下方の枝などは、後から伸びてきます。


1回でなく1週間おきに数回実行しましょう。
このように芽摘みを繰り返すうちに葉の固まる時期がやってくると、自然に芽の伸びはおさまってくるので、片葉切りなど次の作業に移ります。

2020年4月6日月曜日

真柏文人木

最近手に入れた真柏の文人木で、樹高は48cm、鉢は間口18cmの渡辺正山の長方。
写真に撮ってこうやってまともに眺めて見ると、間口が18cmしかなくとも形が長方であるし中深なので、けっこう鉢が重たい(強い)感じがします。丸か楕円でもう少し浅目の柔らかな感じの袋式が似合うでしょう。



数日前に親しくしている同業者のお見せで見初めて、値段を聞いてみると自分の腹積もりよりかなり安かったので”安かったら値切れ”の盆栽屋.comの値切りの鉄則に従って、さらに絞った挙句に手に入れたと云うわけです。


山取りではありませんが、かなりの持ち込み品で、古い愛好家さんが無欲無心で長年かかってコツコツと作り込んだものです、木の芯を残すように彫刻して天然のように見せていますが、その技量と辛抱強い根気は立派なものでう。



芯を残して空洞になった幹、天然ではなく人工の作業によるものですが、うまくいっています。


頭の方まで芯は空洞になっています。作者の根気と技量に拍手です!

これからの課題
① 鉢の交換(楕円か丸の袋式)
② 鉢替えによる植替え
③ ジンと水吸いの掃除
④ 枝葉の整理による全体の動きの演出


2020年4月1日水曜日

舞姫素材の骨格作り 1

舞姫の素材種木のてっぺんを、数年かけて大まかに作り込んでおき、春先か入梅前に取り木をかけます。目標を立てれば、樹形やサイズは時間のかけようでいくらでも自由になります。


樹高8.0×左右16.5cm

今日のこの素材は、挿し木苗を3年、その後取り木して2年間培養したもので、そろそろ本格的に樹形の骨格を作り出す段階になりました。
何時もの年であればとっくに化粧鉢に入れているのに、今年は新型コロナウイルスのおかげで、とても落ち着いて仕事に没頭できず、もうあと1年間は仕立て鉢で木作りすることになりました。



伸びた先端の芽を摘むより先に、フトコロの無駄枝や余分な芽を取り除きます。するとフトコロの中まで見通しが利いて骨格の決定が容易になります。



ずいぶんと無駄枝が減りました。この段階になってから。伸び過ぎた芽を1~2芽残して摘むようにします。かぶさっていた枝葉が透けて樹形がよく見えます。



樹形としては変形の株立ちの、いわゆる変わり木といったところですね。
まだまだ外す枝は沢山ありますし、本格的な幹筋も決まってはいません。典型的な模様木とか直幹とかの樹形ならともかく、変わり木の場合は柔軟なものの見方を心がけ、木の成長に歩調を合わせて骨格を決めていくのが賢明です。



右半分の主幹部分はこのあたりで小休止!
ここで一気に行かずに、木の成長を見極めてから改めてチャレンジすることにします。
たまには頭を冷やして再度挑戦すると、思わぬいい構想が湧いて来るものです。



後姿。

ちなみに、この教材は盆栽屋.comのショッピングに出品されている舞姫です。