2020年3月8日日曜日

市川苔州・名品鑑賞検証Ⅰ

大正から昭和初期にかけて東京で活躍した市川苔洲の名作を手に入れました!

蕎麦釉外縁隅入雲足でサイズは、間口19×奥行12.2×高さ7.5㎝の長方鉢です。今では古鉢研究家にとってバイブル的な名著といえる、平成2年に日本盆栽協同組合が記念出版した大書『美術盆器「名品大成」』の市川苔州編のトップに掲載された名品中の名品です。

↓はそのページのコピーですが、3点の中の長方鉢そのものが今日ご紹介する鉢です。


さて、このような名品が自分の手に入った時に私がまずやることは、心を落ち着かせてその鉢を数日間自分の目の届かない場所へしまって置きます。


そして心の高ぶりが鎮まったころを見計らって、再び静かに両手で撫ぜたり眺めたりしてみるんですね。
そのようなことを数回繰り返しても、手に入れた当初と同じく感動が薄れず、さらに感動が深まっていくようならば、その買い物は間違いなく成功しています。
逆に眺める度に感動が薄れるようであれば、まだ勉強と経験が足りなかったと反省するほかはありません。


美術盆器に掲載された真正面の角度。苔州の得意とした蕎麦釉が窯の中でかなり激しい動きをしたのでしょう、ご覧のように表と裏の発色がかなり変化しています。


窯変の激しい面。側面にも炎の激しさがみられます。まるで高取釉に似た発色が非常に魅力的です。


窯変の激しい面から見ます。右側面よりの角度から眺めると、蕎麦釉の下から白色釉が不思議な変化を見せています。これぞ苔洲窯の野性味溢れた窯変の真骨頂ともいえるでしょう。


蕎麦釉薬の濃い面より見ます。縁の正面右側(三分の一くらいのところ)に小指の爪程の蕎麦釉の固まりの箇所があります。釉薬の飛びか人工のものかは不明です。


左面が窯変の激しい正面。強い炎にあぶられたのでしょうか、外縁の水切り部分はみごとに窯変が出て複雑な色彩を帯びて趣強し。


反対側の側面は蕎麦釉薬が変化してまるで高取釉のような渋い重厚な色彩を帯びています。


外縁の部分を上から見ます。蕎麦、白、青、高取など、複雑な色彩が混じりあって幽玄の世界が拓けています。



底面より、落款は「苔洲」


窯変の激しい表正面。


蕎麦釉の裏正面より。


日本盆栽協同組合(平成2年)発行の美術盆器・名品大成
盆栽古鉢のバイブルです。

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