2020年3月15日日曜日

平安東福寺・瑠璃釉正方

親子ほどに歳の違う業界の後輩から、平安東福寺の瑠璃釉の正方鉢をわけてもらいました。その人は若くともなかなか目が利いていて、鑑定眼も優れています。その彼から譲ってもらった鉢は、東福寺らしいシンプルな形状と瑠璃釉の発色が素晴らしく、以前から何時かは手に入れたいと思っていた逸品です。
東福寺鉢の特徴は、作者自らが実用を強く意識して製作にあたっていたところにあります。ですから東福寺鉢は、眺めてよし、さらに使ってよし、と云われています。東福寺の人気の秘密はまさにその点にありますね。この瑠璃釉鉢も力強い盆栽によく似合いそうです。



初代平安東福寺・瑠璃釉内縁切立隅入切足正方 間口8.2×奥行8.2×高さ6.2cm



東福寺の作風の特徴は、まずは盆栽との調和に優れていること。彼は実用(盆栽を植える)の一点を製作の最大の動機としました。東福寺鉢から感じられる存在感と奥ゆかしさの原点はそこからくると思われます。


隅入の形状がえも云われない品格を醸し出しています。


僅かな角度で開いた間口のバランスが素晴らしい。


鉢底と足のバランスがみごとです。優れた作品は鉢裏や足の形状も美しいものです。


隅に僅かなアクセントを入れたボディーとやや大きめの切り足との調和が抜群です。


広東釉と並んで有名な東福寺の瑠璃釉。






東福寺鉢の施釉(せゆう)の巧みさは瞠目に値します。施釉にあたって多過ぎず少な過ぎず、鉢底すれすれに釉薬が止まっています。見事!





内側の灰被りの痕は、この瑠璃釉正方鉢が登り窯によって焼かれた作品であることを示しています。




落款は「東福寺」。サイズ、作風、時代感などを総合的に検証して、東福寺中期の作品と推定します。盆栽屋.comが手がけた瑠璃釉の小品鉢の中でも、かなり上級クラスに入る作品といえるでしょう。まったくの無傷と云える完品です。

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