大正14年多治見の陶家に生まれた市之倉石州
磁器の土目の清潔感、成型の正確さ、そしてお得意の絵付けと
文字通り三拍子揃った、まさに名工と呼ぶにふさわしい作家です
わずか4.8cmのミニサイズの初期作品
石州の描く絵画は奥深く幽玄で、哲学的な雰囲気さえ感じられます
そういう印象を持つのは私だけでしょうか?
ところで、このミニ鉢のテーマは
紀元前の4世紀~3世紀のころ楚の国王に仕えた政治家・詩人「屈原・くつげん」が政治の陰謀により国を追われ
洞庭湖のほとりを彷徨う様を描いたものです
(屈原はこの洞庭湖に身を投げて死ぬのです、かの横山大観が同じテーマを描いた名作があります)
同じく失意の屈原が望郷の念に駆られながら、死に場所である洞庭湖のほとりを彷徨する様を描いています
(みなさんも、どうりで寂しい雰囲気の絵だと思ったでしょうね)
また、このような歴史的な画題を選んだ石州の教養と見識にも恐れ入ります
側面には「汨羅屈原」と書かれています
ただし、石州は汨(べき)という文字を泪と書いていますね、まあ、大目に見ましょう
汨羅は(べきら・洞庭湖のほとり)の地名で屈原(くつげん)は主人公の名前です
このように、絵鉢を鑑賞する場合、描かれているテーマや詩文の解釈
そして、作者の人間性や教養までも踏み込んでみると違った面白さも味わえますね
ところで、この名鉢を【屈原・くつげん】と命名することにしました
もちろん、この鉢に描かれた悲劇の政治家・詩人である主人公屈原の史実に依ったものです
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