2005年6月8日水曜日

鉢は時代感だ

2005/04/13のつれづれ草 『鉢は出世するのか(鉢の時代感について)』 で、盆栽鉢の時代感の大切さについてお話しましたね
鉢も盆栽と共に日に照らされ水を浴び、長年の風雪に耐えることにより、風格を身につけていくのです

盆栽にもいえることですが、盆栽人にとっての鉢の自慢の第一は、すなわち時代感の自慢に他ならないのです
褒め言葉も同じで、「いい時代だねー」「古いねー」「味がいいねー」

盆栽人は鉢を見るたびにお互いにそんな言葉で褒めあっています
みなさんも聞いたことあるでしょ


岡谷是心の手捻り鉢

前面に彫刻を施すことの多い是心の作風にしては、ちょっと異色な軽妙さが持ち味になっていて
さりげなく蟹が一匹だけ沢にかじりついたような感じに彫り込まれています

土目のよさも目立ちますね
そして何より赤茶の土目がこげ茶色になるまで使い込まれた、時代感に惹かされますね

太陽や水など、自然の風雪の他に、盆栽に与える肥料の灰汁(あく)も時代感を増すための大切な要素ですね
ですから、新品の高級鉢に草を入れ、水をやり肥料を与えてたりして、盆栽人は時代感のためなら努力を惜しみません

その結果、高価な鉢に傷をつけてしまう恐れもあるんですが
盆栽人は時代感のためなら少々の犠牲もいとわない、勇気ある人々なのです


安井暁夢の鋲打ちの太鼓胴のミニ鉢

白っぽい透明な釉薬に真っ黒に時代がついて、底光りしています
5cmにも満たないミニ鉢ですが、存在感がありますね

東京の下町浅草界隈では戦前から戦後にかけてミニ盆栽が盛んで
かの松平伯爵さえ夜店の盆栽屋を冷やかしに現れた、といわれたほどです

このミニ鉢も、それらの流れを受け継いだかなり古い愛好家さんが大切に使っていたものなのでしょう
傷の一粒もないていねいな使い込みから、容易にそれらを推し測ることができます

いっったい、どのくらいの間水をかければ、このような素晴らしい輝きを与えられるのでしょう
そんな感慨にふけってしまうほどの味わいです


この天竜石仙も時代がいいでしょ
内側の釉薬の風化しかかっている様子、わかりますか?
やはり長い年月の使い込みによるのです

このように、盆栽も盆栽鉢も、ともかく古さからくる詫び寂びの味を楽しむ趣味だということを
みなさん、忘れないでくださいね、これが基本ですよ

現代小品盆栽は形や姿にこだわり過ぎる傾向がありますね
もう一度言います、盆栽趣味の基本は古さの鑑賞ですよー

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