昔からの代表的な人気樹種の「真柏」がこの数年、改めてブームといえるような大人気です。主に中国、韓国などにおける急激な需要の増大が原因ですが、とにかくこの勢いはすごいものがあります。
写真は樹高26×上下33cmの懸崖の真柏です。昔はどんな若い苗であっても「真柏」といえば「山採り」であることが当たり前でした。これらのような大衆的な真柏盆栽は、挿し木苗の素材に針金で強い曲をつけて、畑や大きめの鉢で短期間に促成栽培されていました。「山採り」の素材はそれらとはきっかりと線引きされた高級品で、まるで格の違うものとして非常に珍重されていました。
「山採り」と「養成もの」の格の違いは、何を基準にしてその差をつけられたかといえば「山採り」の場合、「養成もの」に比べて想像もできないくらいの年月がかかったからです。ジンやサバに宿った天然自然の風格は想像を超えた年月がかかっており、その稀少性からも特別に珍重されてきたのです。
ところが、あまりの急激な需要の増大により「山採り」だけでは需要を満たすことはとても不可能なため、昔は一段も二段も格下に見ていた「養成もの」でも、ある一定以上のレベルのものは「真柏」の盆栽として認めていこうとの傾向がみられるようになってきました。
挿し木素材に「山採り」もののような強い模様をつけ、サバ幹や枝ジンの彫刻を施して「山採り」の味や風格を演出しています。
50年から100年の樹齢がかかる「山採り」真柏も、10年以内で風格ある小品盆栽として見られるようになりました。盆栽界での技術の進歩は著しいものがありますが、盆栽に対する考え方などの変化も見逃せないものがあるでしょう。
このように、時代により盆栽の定石や定義などが少しずつ変化することは、決して妥協や迎合などの後退の傾向を示すばかりとはいえず、次の時代を迎えるための新しい試金石と捉えるべきでしょう。
後姿。
後姿。
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