昭和9年に第1回の国風盆栽展が都立上野美術館で開催されました。それから5年後に発行された「日本盆栽大観」(天と地の全2巻)は、現存する写真帖の中でも、掲載出品物や掲載点数において郡を抜いた超一流の内容です。天と地の巻の上下2巻のうちから印象に残る名木をご紹介してみましょう。
日本盆栽大観のうちから天の巻の表紙。現在盆栽屋.comの手元には地の巻はありません。長い間に片方だけ請われて割愛してしまったような記憶があります。
小林憲雄編纂で発行は叢会(くさむらかい)となっています。いずれも現代の盆栽界にとって不可決の存在の人物であり、そして組織であったと断言できます。まだこのころでは、現在の国風展を主催する日本盆栽協会は設立されておりませんでした。
よって、ただひたすらに日本の伝統芸術である盆栽を心から愛する先人の情熱によって盆栽界は維持されていたのでしょう。
真柏 田中啓文氏 2尺5寸 雕花鳥朱泥隅入長方古渡鉢 昭和胃14年11月撮影
解説には「越後糸魚川の山採り名人鈴木多平氏の採取品で、佐竹義春がそれを求めて長年培養し、昭和15年譲渡された。真柏中の圧巻として斯界に名を知られた名木である」
元松昇蔵氏 深山海棠 1尺8寸 珊瑚釉薬丸鉢 昭和14年1月
解説には「おなじ蔵者により20年の歳月を培養されてきた」とあります。現代においてもこれほどの花もの盆栽の名品は稀でしょうね。
西山撫松氏 真柏 2尺7寸 朱泥丸 昭和13年10月
解説「細き四国の産 細幹 丸幹 京都好みの木である」
現代のように、細部や輪郭線にまで細かく針金で整姿する習慣はなかったことがうかがえます。
針金での矯正は最小限度の感ですね。
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