2010年7月24日土曜日

楓・傷口癒合

昔の山取りを主体とした盆栽とは異なり、育てながら作り上げていくのが主流となった現代の盆栽では
制作過程で避けられないのが、やむを得ず生じる傷口の問題です

傷口は

1 放置するとその傷口から木質部まで腐り込む
2 特に木肌の美しさが鑑賞のポイントとなる雑木類においては、醜い傷口は鑑賞価値を下げる元となる

など、盆栽人にとっては頭の痛い問題です

「この枝は無駄だから切りたいね」
「いやいや、切らない方がいいよ、大きな傷ができちゃうから」

こんな会話はしょっちゅうですし
自分の心の中でも葛藤をしばしば経験しているのが盆栽人です

後になって、やっぱり切らなきゃよかった、とか
思い切ってあの時外しておいてよかった、などなど、この傷口の問題は盆栽人にとって永遠のテーマでしょう

さて今日は、あの時外しておいてよかった
そちらの嬉しい例をご紹介しましょう


現在の姿 楓 樹髙8.0㎝


昨年の後ろ姿

正面から見た姿はまことにいいのですが
裏枝が太りすぎていて、例えれば、背中に何かを背負っている感じ

ただこれだけ、この1本の枝さえ外せば、かなりまとまりのいい本格模様のミニサイズなのに・・・
でも幹経が3.0㎝なのに、その半分の1.5㎝くらいの傷口ができちゃうんですよ

ずいぶん迷ったんですが、傷が背中であることと樹勢がいいなどの理由で
今年の春に思い切って切りました


多めにたっぷりと塗り込んだカットパスターに、梅雨の頃からひび割れが見られるようになりました
これは、カットパスターの下で、傷口にカルスが形成されている証拠です


7月になってひび割れはますます目立つようになり、中から傷口の肉巻きがはじき出てくる勢いですね
こうなりゃしめたもの、中をのぞいてみましょう


ホホー、すごい勢いで傷口に肉が巻いてきています
測ってみると、当初直径1.5㎝あった大きな傷口が、現在はなんと0.6㎝と半分以下になっています


いちど全てのカットパスターをすっかり取り除きます
次に、まだ肉の巻いていない中心部だけにカットパスターを塗り直す

すでに肉の巻いた箇所に何時までも塗っておくと
盛り上がってコブ状になってしまう恐れがあるからです


状態から見て、今年中にさらに肉巻きは進み、かなり傷は小さくなるでしょう
このままで来春まで待ち、改めて肉巻きの内側をナイフで削り刺激を与えます

刺激を与えられて若返った傷口は、再び肉巻きの速度が速まるものなので
おそらく入梅前には完治の見込みです

では

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