2008年11月24日月曜日

極性の山もみじ

商売で盆栽と接している盆栽屋にとっても、とくに好きな樹種は必ずあるもので
また樹形やサイズによる好みもあります

商売とはいえ、自分の好みの樹種や樹形の盆栽に出会ったときは
損得を離れて、それは嬉しいものです(これがほんとの役どく)

今日ご紹介するのは、先日巡り合った山もみじのミニサイズ
根張りのよさや枝先の細かさ、そして何よりもスケールの大きな「構え」のよさに一目で惹かれました



「この山もみじ、いくら?」と聞くと、ふだんは躊躇なく値段をいう同業者が
苦しそうな表情でやや一瞬のあいだ迷っているようすでした

私は、彼が樹冠部の未完成の評価をどれくらい割り引いたら適切なのか
それを迷っていると即断しました

そこで、「頭がなー、ちょっと時間がかかるよなー」
とすかさず、さりげないかく乱の先制攻撃を一発(値切りのテクニック・超上級編)

値段を聞いてしまってからでは値切りのパンチは効きにくいもの
相手の顔色を見ながら、すばやく、そしてさりげなく放つ先制の攻撃は効果抜群です

じっさいに、この山もみじのように、ほとんどが文句ないほどに完成していながら
一部分が未完成とか改作中という盆栽の評価は、たいへん難しいことなのです

ということで、私の腹見積もりよりも値段は3割安(先制パンチが効いた)
値切りの気まずさもなく、ホクホクとしたいい気分で仕入れたお気に入りの山もみじです


前置きが長くなりました、それでは問題の改作中の樹冠部について

間が抜けた現在の芯の裏側(上の赤点)に5ミリほどの小さな芽があり
これを新しい芯として立て替えれば、びったんこ、理想的です

↓の側面からの画像を参照
赤点が新しい芯です

さらに下の赤点の位置あたりに斜め前方に向かった前枝が欲しい(貫通式の呼び接ぎにより容易に可能)
樹高の三分の一から上あたりには前枝をつけ、姿に奥行きを演出するのが定石ですね

また、二の枝の上にある枝がちょっとうるさい
切り取って空間を作ると、枝順も整い伸び伸びとして見えます


左側面からの画像
白点が現在の芯、赤点が来春以降の新しい芯


3年後の完成予想樹高 9.0センチ

以上のように樹形もいいですが、小枝の先端の繊細さも際立っていますね
ミニサイズの山もみじの小枝作りには、葉性の優秀さも忘れてはならない要素

この山もみじのように、仕立て鉢で培養しながらこれほどにしまった枝先は
いわゆる「極性・ごくしょう」といわれる優れた葉性の証拠です

おまけに、今までの所有者の所見では、このもみじはひょっとすると安部性かもしれない、とのこと
今はハッキリとは確認できませんから、来春に芽が出るまでそっと楽しみに待ちます

楽しみ、楽しみ、気合を入れて作り込むぞ-!

と張り切っている盆栽屋.comであります

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