2005年7月26日火曜日

水石と石っころ

「水石」を「石っころ」と呼ぶ私の旧い盆栽友達がいます
みなさんの周囲にもそんな人がいるでしょ
「水石」を「石っころ」と呼ぶなんて!
まったく情けなくって怒る気にもなれませんね

まあ、それはともかくとして、かくいう私だって、川原へ行けばそこにある石をまさか「水石」とはよびません
やはり「石っころ」と呼びますね

それでは、水石と石っころの違いはどのあたりにあるのでしょうか
同じ石を、何をもって「水石」と「石っころ」とに区別するのでしょうか


二ヶ月ほど前に同業者が所有していた鞍馬石
彼はほとんど水石に興味がありません

昔の盆栽屋のほとんどは水石を手がけたものですが、最近の盆栽屋で両方を手がける人は僅かになりました
そのかわりに、水石専門の業者が多数出現したのです

それはともかく、この鞍馬石を見た瞬間から私の目にはこれが「石っころ」とは映るらず、見どころのある「水石」に見えましたが
関心のない彼にはただの「石っころ」だったようです

どうです
持ち込みが古いでしょ

一山(ひとやま)の姿にどことなく愛嬌が感じられるでしょ
いわゆる「景」がある、つまり見る者をして連想の世界へと誘ってくれる何かを持ち合わせているのです
それが「水石」としての最低の条件でしょう


片や形に特徴がなくただの石としか見えないもの、
それが「石っころ」となってしまうのですね


私はこちらを裏側として見ました


石底です
鞍馬石としては奇跡的に、まったくの「ウブ石」です

この点については、私の信頼する同業の水石専門家にも見立ててもらい
間違いないとの太鼓判の評価を得ました

やはりこのような二重の駄目押しの鑑定は心強いものです
自分のものにはどうしても「欲目」が働いてしまうこともありがちなんです、人間ですからね


鞍馬石  間口19×奥行き12.5×高さ10.5cm

さて、そんな訳で、この鞍馬石の台座が出来上がりました
うーん、やはり台座に据えるとはっきりとした「景」が出てきましたね

この穏やかな一山からはのんびりとした山里が偲ばれてきます
決して奥深い山でなく、人々の住まう里に近い風景ですね

ここで、せっかく自分で見つけ出した「美しさ」ですから
こんなときには「銘」をつけて楽しむのも一興です

私はとりあえず平凡に「里山・さとやま」と命名してみました
もっと適切な名が浮かんできたら、そのときは改名すればいいんですから


光線を弱めてみると、里の山の夕暮れの景色となります


台座は名人に依頼した紫檀の高級品ですよ


台座の側面より見ると(左が正面方向)底の削り込みの深さの按配がわかりますね
(正面の方が浅く、後ろ側を深く削り込んでいます))
こうやって僅かに正面から見ての石の傾きを訂正しているのです
なかなかデリケートなものですよ

さあ、みなさん、ご自分の身辺を見回して下さい
「水石」らしきものはありますか?
それとも「石っころ」かな?

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