不思議な落款を印した東福寺に出会いましたので、ご紹介します
平安東福寺作 緑釉窯変切立楕円樹盆(りょくゆう・きったち・だえんじゅぼん)
まちないなく東福寺初期(戦前)の作品であると鑑定されます
本来の釉薬である緑釉が窯変により飴色の発色をみせていいて
長い年月の使い込みにより渋さも加わり、落ち着いた深みのある雰囲気です
内側の深くまで釉薬が溶けて流れています
この釉薬の色艶や模様が楽しめるのも東福寺鉢の特徴でしょう
足はW形のやさしい感じで、切立の平凡な姿に奥ゆかしいアクセントを与えています
この辺りの細部も見逃さないように
鉢裏の落款は定番の「東福寺」、小さなハンコウ落款
画像では不鮮明ですが、実物ではハッキリと見えます
ここからがこの鉢の謎めいたところです
鉢の内側に、画像のような左右2.5cmほどのかなり大きな落款があります
東福寺鉢には複数の落款を押した鉢が多く存在しますが
このような文様じみた落款は見たことがありません
同業のこの道40年のベテランと何時間も眺めました
拡大してみると、鳥の象形文字のように見えますね
右がクチバシで左が尾のようです
魚の姿を印した東福寺鉢を見たことがあるという同好の友人はいますが
その人も、このような鳥らしい文様は見たことがないといっています
東福寺は生来の遊び心から様々な実験的試みをしたり
多様な落款を使用したりしていて、その面からも興味が持てる作家ですね
この謎めいた印しのある小鉢に対する検証は、今後の宿題になりそうです
それにしても、面白い鉢です
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