2020年12月15日火曜日

名人の水石台座


人に秀でた技や審美眼や見識などを有する先輩や同僚友人と、「死」という厳然たる事実によって決別せねばならない機会が年々歳々多くなってきているのが、実感として身に沁みる年頃になりました。自分勝手に申し上げれば、最近での決別で台座名人の鈴木広寿師とのお別れは、正直もう少し後々のこととして欲しかったですね。


師が重篤な病気で大手術をしなければならないと宣告を受けた頃にお会いしたときに、「みやちゃんよ、おれっちも好きなことさんざんやってきたんで、死ぬのはそんなに怖いわけじゃないけれど、もーちっと仕事がしてーよなー」としみじみとおっしゃった。


その言葉と穏やかな顔つきには間違いなく真実が篭っていたし、十分に共感させられるものがありました。師のように水石界において高い評価を得て功なり名を遂げた人でさえ、我が仕事をやり終えた完全燃焼の達成感に浸ることは難しいのだと思った瞬間でした。


茅舎石(佐賀県産)間口9.4×奥行き×3.8高さ6.1cm



亡くなる1年ほど前に製作依頼して作ってもらったもの。


後姿。


頼んだわけではないのに「逆さまのも作っといたぜ」と言ってプレゼントしてくれた、思い出の台座。


さすが名人の目の利き所はたいしたものです。

 

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