2011年3月25日金曜日

真柏の彫刻・続

真柏のシャリやジンの彫刻
これはいちどハマッタラやめられないほど熱中する作業です

とくに男子の盆栽人に好きな人が多いようですが
きっと子供時代の工作の時間の楽しさが、よみがえってくるのだと思っています
 
さて、今日の教材は樹形を整えつつある真柏で、すでにジンやシャリ幹や水吸いの基本は、ある程度出来上がっていますが
見せ場をさらに強調するとともに細部まで刃物を入れ、完成度を高めようとの魂胆です

この段階での彫刻は、ヘタをすると現在の樹格を損なう恐れがあるので
かなり勇気がいることですが、より高いところを目指すには冒険も必要ですね

なお、過去のつれづれ草の真柏のシャリ彫刻の項も参考にして下さい

  2


おそらく、挿し木苗3年生のころから激しい模様をつけ、その時に水吸いも削り込んで今日の原形を作り上げ
さらに10年以上の肥培管理により作り込んだもボディー

その素材を数年前に入手して、枝に数度の針金かけを施し
現在の形まで作り込みました

各所の水吸いはかなり旺盛に太って、力強いウネリを見せ
シャリやジンにも古色感がにじんできました

この段階で、強調するところはさらに強調し
粗さが残る細部にも手を入れます


使用する道具類

右から2番目は、高速回転式の彫刻用の先端工具を装填
細かいところまで手が届き便利です

この他に彫刻刀など
ご自分の身の回りにある道具が案外に役に立ちます


ちなみに、高速回転式の彫刻用先端工具の拡大図


周囲から水吸いが盛り上がってきています
水吸いのつながり具合を確かめて、水道を寸断させないよう慎重に計画を建てます

特に左の利き枝については、上の赤矢印で示した箇所から下の赤矢印まで
シャリと水吸いがおもしろく絡むように工夫します

水吸いにいきない刃物を入れるのは無謀
あらかじめ、水性のマジックやポスターカラーで刃物を彫刻する箇所の設計図を描いておく(重要・必須)


幹の部分の荒削り
まだまだ慎重です


左の利き枝の部分の荒削り
シャリと水吸いが絡みながら捻転するように彫刻します


後ろ部分の設計図を引きます


後ろの利き枝

上の赤矢印の箇所

素材からの荒仕上げの段階で、赤矢印で切り込み、その手前の芽で現在の枝棚を作っていますから
先端の部分のシャリはまだ未処理です

表皮を少しずつ削りながら、切り口付近から生きている水吸いをさぐります
左右の赤矢印(白い線)の箇所が生きている水吸いの境目です


上で確かめた生きている水吸いの境目に沿って
自然味を演出しながら、枝の先端をえぐるように削り取りました


一応の荒削りが終了した真柏の正面図

この項、続きます

2011年3月24日木曜日

紅千鳥もみじ挿し木(続編)

大震災発生から13日目

死亡された方や安否不明の方の人数は日をますごとに増え
改めて地震と津波の脅威を知らされています

一方では被災地においても、救援物資が徐々に届き始め
一部の地域では復旧の足音もきこえはじめているようです

しかし、福島原発の問題はまだまだ厳しい状況にあり
余談をゆるさない状態が続いていることにまちがいありません

そんな中での、今日は大震災から3回目のつれづれ草です

先日お知らせした「紅千鳥の挿し木」で、ひとつ大切なことを忘れてしまっていたので
その後の経過とともにぜひとも大読み下さい


挿し木の発根促進剤「オキシベロン」は非常に微細な粒子で粉状になっています
この促進剤を切り口にたっぷり塗ってから挿し木すると、かなりの効果があります(今回の紅千鳥にも塗りました)

使用法は、挿し穂を濡らして切り口に塗ってもよし
また少量の水で練ってから塗ってもいいでしょう

市販されている発根促進剤は他にもあります
手に入るものを適宜にご使用下さい

これらは取り木の発根促進にも有効です
小品盆栽愛好家としては常備しておくことをお勧めいたします

私たちが盆栽の道に入った数十年前から、ぼちぼち使われるようになってきたこの手の薬品ですが
当時はまだそれらに対する盆栽人の信頼感は薄く、も昔ながらの経験による技法が主流でした

しかし、科学の進歩とともに改良されたこれら薬品の効能は
今や折り紙付となっていますから、ぜひお使い下さい

これが忘れていた大切なことでした!


3月23日の状態

心なしか、数日前よりも芽が大きくなっているような気がします
いずれにしても鮮やかな赤みを帯びた挿し穂とその芽がみずみずしく見えますね


拡大した部分です
いい感じですね、このまま芽が大きくなってほころびはじめればシメたものです


こちらも拡大した部分
まるで今にも芽がほぐれそうな気がしますね

楽しみですね!

2011年3月22日火曜日

安部性もみじ・正面の交換と根さばき

大震災発生から今日で11日目

被災地への官民あげての支援が懸命に行われていますが
まだ被害状況の全容は掌握しきれていません

福島原発も、わずかに光明が見えはじめましたが
依然として予断を許さない状況は続いているようです

テレビの画面を通してそれらの情報に接しても
私たちにはせいぜい節電に協力するなど、ささやかな行動しかできませんが

ともかく、日本がんばれ、と言いたいですね
みなさん、戦後最大の国難ですが、元気を出しましょう

それでは、今日は大震災から2回目のつれづれ草です
教材は安部性もみじで、一昨年に取り木をかけ、昨年に親木から取り外し、1年間根作りをした種木です

ちなみに、安部性もみじとは、かって盆栽研究家として名を知られた安部(あんべ)氏が発見した小葉性の山もみじで
昔、安部氏の薫陶をうけた愛好家が大切に受け継ぎ培養していたものです

優れた枝性と端正な葉形に非常に優秀な特性が見られます

今では実物ににはめったにお目にかかれなくなりましたが
ぜひとも後世に伝えたいと思っています


今までの正面に100%満足していたわけではありませんが、根さばき作業をしているうちに
少々疑問の疑問と大きな欲が芽生えてきました(笑)

この正面が正解なのかなー?
もっといい正面があるような気がしてきたんです


手の平であちこち転がして見ます
赤矢印方向が従来の正面(この画面は側面からの画像です)

鉢内で見ているのと、このように根をさばいている素材状態で見るのとは
またひと味違った感覚が芽生えるときもあるのです


ありました、ありました!
ここに正解の正面が見え始めましたよ

根作りのために、徒長させていた3本の枝に隠れて見えなかった幹の筋が
素材状態になったため、先入観に惑わされるもなくなったせいで、よく見えるようになったようです

おまけに赤矢印で示した、ちょうどピッタンコの位置に、芯となるべき芽当たりが存在
なんと、この新しい正面は、従来の正面の真裏、つまり180度の回転ということになりました


新しい正面が決まったので心うきうき、根さばきにもいっそうの張り合いが出てきましたよ
赤矢印と白矢印の2本は大切な根張りですが、上下に重なっていますから、上の根を切ります


左の赤矢印は上の画像で示した不要の重なり根の側面
右の赤矢印は、方向が悪い真っ直ぐ根なので、これも切ります


思い切った根さばき作業が続いています


根の底はきっちりと処理されており、取り外した切り口の周りは肉巻きが順調に進行中です
切り口には改めて癒合剤を塗っておきました


幹筋を通すため、左の肩にあたる部分の徒長枝を切りました
やはり同じく徒長させていた裏枝も落としました

芯のある幹筋だけは残します

理由は、希少な安部性の繁殖のために
上部を取り木して新たな種木とするためです


さて、根さばきを終えて植え込みました

白線で示した下枝は不要なので、入梅までには切ります
先ほども言ったように、芯のある幹筋の上部は今年の入梅ごろに取り木をかけて種木にします


後ろ姿

従来の書面であったため裏枝がありませんね
適当な箇所に芽が吹かない場合は、呼接ぎすれば簡単ですから、ご心配はありません

この姿からはまだまだ時間がかかりますが
この逞しいボディーを活かして是非とも安部性もみじの逸品を目指したいと思っています

では!

2011年3月19日土曜日

紅千鳥もみじ挿し木

東北関東大震災の被災地の皆様に心よりお見舞い申し上げます

まさに国難と云える大災害が起きてしまいました

地震と津波のもの凄さは言葉では尽くせないほどですが
同時に発生した福島原発の問題も、現在非常に厳しい状況が続いて、まことに心配です

気がつくと、既に大震災発生から9日目になりますが
春の大切な手入れの季節なのに、ちっとも仕事がてについていません

これじゃいかん、元気をださなきゃ
こんな時こそ各人が自らの職分に励むことが、日本の復活に寄与することだ

この数日、自らをそう鼓吹しつづけて
やっとのことで放心状態から立ち上がって、このつれづれ草を書きはじめました

さて、そこで、今日の話題は将来への夢がふくらむように
初心者からベテランまでが楽しめる、挿し木についての話題です

素材は私の大好きな紅千鳥もみじです
ここ何年も紅千鳥の挿し木苗を探しているのですが、まったく手に入らないので

とうとう自分で挿し木する気になったのです
それで、冬中に挿し穂がたくさん採取できる種木を仕入れておきました

一般に、もみじの挿し木は初心者には難しいとされ
業界でも、挿し木専門のプロの領域に入っているので

みなさんが実行して、活着率は数%くらいでも悲観することはないし
もし、50%くらい活着したならば、大成功と喜ぶべきでしょう

挿し木の時期は、2月ごろに前年枝を使う方法と
入梅時期に当歳枝(春の新梢)を挿す方法があります

入梅挿しは昔から行われている方法で、活着率もいいのですが
過湿に陥って病気が蔓延し、全滅なんてこともありますから、その点に気をつけましょう

今回の挿し木は、前年枝の3芽(3節)をつけた8~10㎝くらいの挿し穂を用い
2月26日に作業しました

ちなみに、用土は赤玉土の極小と鹿沼土のやはり極小を半々に混ぜたものですが
その他にも市販されている挿し木用土がありますから、それらを使ってください

それと、これらの用土を使っても鉢内の水はけのいいように
底にはゴロ土を敷いて水はけのいい環境を忘れないように


挿し穂作りのポイント

切り口はなるべく面積が大きい方がいいので、節のやや下方を斜めに鋭利な刃物で切る
反対面をわずかに切り返す


反対面をわずかに切り返す
挿し穂が完成しました

用土にやや湿り気を与える
棒や千枚通しであらかじめ小さな穴を開けてから穂を挿す

この場合、斜めの切り口の上の節は必ず用土の中に埋まるようにする
その節の近辺から発根する可能性があるからです


穂はやや斜めに挿す
挿し終えたらたっぷり水をやり、農業用のビニールドーム(大きなホームセンターにある)などで乾燥を防ぐ

以上が2月26日に行った作業です

さて、それから約20日間が経過したの観察してみましょう


8号仕立鉢に受け皿をつけて、ビニールハウスの棚の下でご覧のようです
棚下に置く理由は、日中に日光が当ってドーム内の温度が上がりすぎないようにするため

水やりは20日の間に、この日をふくめてたった2回です
くれぐれも過湿を避けること、ですから、受け皿には絶対水を入れないようにする


挿し穂の乾燥するために空気中の湿度は保ちますが
用土の過湿は、病気の入るもとになりますから水のやり過ぎは厳禁です


挿し穂がみずみずしい感じなのがわかりますね
順調に水を吸い上げている証拠です

挿したときには固い感じだった冬芽がややふくらみかけ
鮮やかな色合いに変化してきました


紅千鳥特有の赤みがかった軸が
心なしか、なお赤みを増しているようです

希望が持てますね
やっと元気が出てきました

それでは
次の報告を楽しみに

2011年3月8日火曜日

けやき根張り作り・手抜き作業

前回の盆栽つれづれ草でご紹介した、けやきの根張り作りと矯正法
その中で、根ほぐしに自信のない方には手抜きの方法もある、と申し上げました

しかし、言葉だけでは情報が正しく伝わらない感じなので
画像をたくさん載せて詳しくお伝えしなおすことにしました


作業前


鉢土の表面の土をていねいに取り除いて
矯正すべき根を指摘します

この根は強すぎで方向もよくない
元の数ミリを残して切ります

この根は方向はいいのですが、強すぎます
切りました


この根もかなり太いですね
切りましょう

このように、前回でご説明したように
好ましくない根は勇気を出し、思い切り取り除きます


万が一根張りの欠けている箇所があったら
木質部にとどくよう、キリなどでやや深めに穴をあけます

その穴に発根剤を塗り込みます


その箇所を水苔で覆っておく
この処置は部分的な取り木と思って下さい


次は植替えです

固まった根の下を、三分の一から二分の一くらい輪切りにします
周囲の根はほぐさずに、ひとまわり大きめの仕立て鉢に植えます

この場合、決して大きすぎる鉢を選んではいけません
根の周囲にやっと用土が入るくらいの大きさで十分です


植え込み終了

※ この作業だけでも、根張りの矯正と根の勢いの制御となり
かなりの効果があります

ただし、毎年この方法だけですませていはいけません
この手抜き法は、あくまで1回おきの応急処理ですよ

それでは!