数十年前、姫しゃらが盆栽界で一大ブームになったことがありました
自生地(箱根や天城地方)では、それまでも盆栽として楽しまれていたのかもしれませんが
そのころの全国盆栽ファンの心をあっという間に魅了してしまったのです
同じ仲間の夏椿は、その瀟洒な枝振りや木肌の美しさや
あっさりした花の風情が一部の数寄者に愛され、茶庭風の庭園などによく植えられていました
ところが、その夏椿よりも枝が繊細で、葉も花も小さい
木肌の美しさはたとえようもなく、盆栽人たちは姫しゃらに飛びつきました
ブームが続き流行りにはやったその姫しゃらにも、約10年ほどしたころから人気に陰りがでてきました
というのは、かなりのベテランが手にかけても、夏が蒸し暑い平野部ではどうも培養がうまくいかないのです
ちょっとしたことで樹勢を損なうと、たちまち枝枯れする
自生地のような木肌の美しさを盆上では再現できない
などなど
最初は理由がはっきりとせず、個々の培養の巧拙によると思っていた盆栽人達も
やっとのことで、姫しゃらの自生地が夏も涼しい高地であることに気がついたのです
けやきなどに代表されるように、おもに平野部に自生し、また夏の蒸し暑さにも強い樹種と違って
姫しゃらやブナなどは、夏も涼しい避暑地のような高原(たとえば箱根や軽井沢)の気候が好きなんですね
つまり樹種的な人気だけが先行して
培養法がついて行けなかったというわけです
そんな経過をたどりながら、一時的なブームははるか昔のことになりましたが、やはり姫しゃらの魅力を盆栽人が忘れたわけではありません
培養法が確立されて今では、平野部の都会でも国風点に入選した名木がりっぱに育っているのが見られるようになりました
以上から、姫しゃらの培養法の要点は
寒冷紗などで保護し、真夏の直射を必ず防ぐ
1年おきの植替えを励行し、樹勢の旺盛を心がける
過湿をさけ、やや辛めの水やりを実行する
冬の乾燥した風を避ける
芽摘みは葉透かしなど枝先の新陳代謝を常に心がける
などです
スクールの最年長、ツカさんの姫しゃら中品(樹髙約30㎝)
直幹体に近い木姿が多い姫しゃらのなかで、めずらしく自然風な模様木は貴重
現在、一の枝に力をつけるためにその部分の芽摘みや葉透かしは控えています
足元に力強さも感じられるようになってきましたので、もう一息
幹肌に姫しゃら独特の滑らかさが足りませんが、樹勢も好調なのでこれから一皮むけるごとに、瀟洒な感じも出てくるでしょう
蒸し暑い関東平野の町中の環境で、ここまで培養できればりっぱなものです
がんばれ、ツカさん!
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