昔の盆栽屋のほとんどが水石も扱ったもので
私も若い頃から諸先輩たちの薫陶を受けて育ちました
ですから、今では盆栽や鉢が主力の扱い商品になってはいても
いい水石に出会うと、こりゃいっちょう道楽してみよう、という気になるんです
昨日も小鉢の仕入れに行った先で、多摩川産の
そりゃあ古い持ち込みの、私好みの石に出会いました
多摩川は昔から名石の産出地として
関東では指折りの川なのです
大きさは間口13×奥行7×高さ6cmの手のひらに載る大きさで
真っ黒なまったくのウブ石です
正面より
真上より
山のてっぺんが理想的な位置にあります
裏面
凄い時代感でしょ
石裏は多摩川石独特のソゲで、手が入っていません
台座だって、これ、この通り,宙に浮かしたって外れませんよ、ピッタリです
それに、このアップ画像からも質のよさがわかりますね
気に入った石には銘をつけてやりたくなるのが常です
家に帰って晩酌をやりながら、撫で回して、ひとりでニヤニヤしながら、どんな銘が似合うかな?
今までの持ち主は、この尖った山の景から「槍」の文字を連想していたらいいんですが
それではありきたりで平凡です
この石の最大の特徴が、向かって左側の鋭角に切り立った断崖とその鋭い稜線にある、と見ていた私は
光線の角度により、山の表情が微妙に変化する様を、なんとか銘に結び付けたい考えていたのです
この山形石は右方向に向かってせり出しています
このような場合、向かって右方向からの光は、朝日と連想するのが普通です
逆に、ひと回りした日の光が、山の背(左方向)から差す頃は、夕日を連想します
この画像では、今まさに沈まんとした夕日が、切り立った断崖に照り映え
稜線はなおくっきりと鋭さを増し、さえぎられた光は山ひだに微かな明るさを与えています
更に時間が経過すると、切り立った断崖と稜線の作る影が山肌を包み
山には幽玄の闇が今まさに訪れんとしている一瞬の景色です
まあ、そんな勝手な連想から
この山形石の銘は「残照」と決めたのです
石の命名のコツは「一番美しく見える角度から何度も何度も眺めること」
それでは、勝手な自慢話、終わります
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