2004年6月17日木曜日

東福寺鉢の鑑定

平安東福寺二代目・水野勇が本格的な創作活動に入ったのは
初代の死後の昭和45年ごろといわれているが、それ以前の作品とおもわれるものも世に存在します

初代東福寺は、自らの作品に息子に落款を押させ、それを息子の作品として世に出した一時期があった、いわれ
子を思う親の姿の典型として盆栽界に伝えられています(合作とみることのできますが)

たしかに、二代目作品には判定に迷うほどに初代の作風が色濃くみえるものがあるのですが
おそらくそれらは、本格的創作活動に入る前に、父の手伝いをしていた時期の二代目の作品であろうと推測します

その時期と推測される二代目の作品は、初代作品との識別が不可能なほどで
かなりレベルの高いものが多いのです

たまたま二代目の作品と思われる高水準の鉢が手に入りました
初代作品を頭に思い浮かべながら比較検討してみましょう


広東釉(かんとんゆう)と呼ばる緑釉(りょくゆう)の対鼓胴の丸型作品です
外見ではかなりの専門家でも初代と判定するでしょう

まず釉薬を見てみましょう

初代の釉薬の特徴が出ています
透明感のある鮮やかな緑色、そっくりで識別不能

胴の下部の釉薬が濃い部分、つまり釉溜まり(くすりだまり)も部分にも
初代作品らしい雰囲気が濃厚です

次に形

安定感がありゆったりとした温もり感が初代の特徴
この鉢も初代作品ならではの温かみに加え、造形の美しさが感じられます、外見でも識別不能

胴に打ち込まれた鋲

他の二代作品に比べると手作りの温かみが感じられますが
よくよく見ると初代に比べ、やや尖り気味

初代と二代の識別の手がかりをやっと一点だけみつけました


上部からの検証です

縁の形も硬質ではなく、柔らか味のある美しい円形を描いています
この線の柔らか味が大切です

水穴の開け方も初代との識別は不能です

白っぽい柔らか味のある土も初代が好んで用いたもの
この土は戦前の作品に多く用いられ、傑作が多いのです

この画像からは手がかりは見つかりません


足と鉢裏のようす

緑釉がきれいですね
鉢裏の時代感もかなりのものがあります

この画像からも手がかりは見つかりません


落款を見てみましょう

有名な楓落款です
うーん、ここに問題がありました

初代東福寺は落款の押し方がうまかった
どの作品を見ても乱れた落款は見たことがないというくらいにうまかった、浅目でしかもピシっと決まっていました

この落款はやや深めで形が乱れていますね
ここが最大の決め手です

初代にはこのように乱れた落款は皆無といっていいでしょう
よってこの作品は、二代目の作です


最後にもう一度勉強、鋲の形と打ち方です
↓の写真は初代作品の鋲の拡大図です


違いがわかりますか?

一つずつ鋲を付けた痕跡がはっきりと釉薬の下に見えますね
これでなくてはなりません

このように、手作りの味を消さない一発仕上げが初代作品の特徴なのです

以上二代目作品とする決め手が二点ありました
勉強になりましたか?

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