2002年9月19日木曜日

隠れたお洒落


カリンの地板(左右44cm×奥行34cm×厚1.6cm)
(この地板はよく出来ていますが、それほど昔に作られたものではありません)

カリンの地板(じいた)は板目や柾目でなく
材料を横挽き(輪切り状)したものが多いようです

普通材木を横挽きしたものは年輪が数えられますが
樹齢何百年を経た根元に近い部分では年輪は見えません

そのかわりに、舞葡萄(まいぶどう)といって
渦巻状の模様が無数に散っています
きれいですよ



さて地板の話です
地板は、足の付いた卓台(しょくだい)と用途がやや異なります

代表的な使い方は、軽い感じの文人調の盆栽や、草物盆栽に使いますね
このような曲線で構成された地板に、長方形の鉢は似合いません
やはり丸鉢もしくは楕円形です

この地板は周囲を自然風に見立て、すべて(ノミ)で細工したものです
驚くほどの業ですね


地板や卓台の良し悪しは

第一は材料で決まります

質のよい材料を何十年も寝かせたものでないと狂ってしまいます
昔から腕のよい職人は、自分の住まいより材料小屋の心配をした、といわれるほどです

第二にデザインと細工です

この地板を例に取ると、大きさと厚さのバランス、調和のよい形などです

昔の名人といわれる指物師(さしものし)の作品を見ると
精緻、精巧であるとともに、(ノミ)で削った線がくっきりと残っています

ようするに、もたもたとなぞったし仕事でなく、さっと一発で仕上げた感じがするのです
熟練の技に身震いすることさえあります


裏を見てみましょう
周囲を残して底をさらっれあります
なぜこんな手間をかけてあるんでしょう

1つは、隠れたお洒落(職人はシャイな人が多いんです、見えないところにそれとなく、です)

2つは、狂い止め(部分的に厚みが違っていると狂いにくいのです)

以上地板のお話でした
展示会などで、卓台(しょくだい)や地板(じいた)にも関心をもって見学してください

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