2018年11月4日日曜日

五葉松(銀八つ)

銀八つ(ぎんやつ)と呼ばれる性質の五葉松の種類が、戦前から広く盆栽界に普及しています。四国の鬼無地区が江戸時代からの伝統に支えられた主な産地です。

江戸時代に接木の技術が確立されて以来、台木には黒松苗そ用いているため生育もよく樹勢は非常に強壮です。葉の針が太くて強靭で、いわゆる葉性(はしょう)が銀色に輝き豪華で荘厳なイメージです。さらにかなりの肥培をしても徒長しにくい性質のため、樹形の乱れも少なく樹形を整えやすいのも大きな特徴です。

幼苗の時代に、足元から幹筋にかけて鉄針金で強く螺旋状に模様をつけるのが独特の作り方です。そのために足元が癒着して田螺(たにし)のようにトグロを巻いているのが一種のゴテモノとみなされて、評価を下げる原因となっていた時代もありました。

しかし、短所は長所なりという言葉があるように、短所は個性でもあります。長い年月を経ると、人の手でつけた模様がまるで天然のものとの区別がつかないほどに味わいを深めます。

このように、作者の意図をこえて劇的な魅力に出会えるのも盆栽趣味ならではの予期せぬ幸せな瞬間のようです。

螺旋状に捻転した幹筋は、台木である黒松の部分であると思われますが、すでに数十年の長い年月を経た皮肌の荒れ模様を簡単に観察しただけでは、この部分が黒松なのか五葉松なのかは簡単に識別はつきません。

反対方向から視た五葉松。

足元では倒れ込んだ根とその上からの覆いかぶさった根とが、癒着したような奇観を呈しています。この部分が黒松であるかあ五葉松であるかはすでにこの盆栽の魅力には関係のないことです。あるがままの侘び寂びと自然美を我々は素直に受け入れるべきでしょう。

みなさんも銀八つの古びた素材を見つけ、その魅力を再生させてみませんか。案外身近にいいものが転がっているかもしれませんよ。

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