2021年3月14日日曜日

京焼雲足長方





京焼窯変外縁雲足長方

間口23.5×奥行き20.5×高さ15cm


一見平安東福寺を思わせる堅牢なボディーの構図と色彩。だかよく観察すると外縁
と縁の反り具合などに、東福寺とは異なる個性が微妙に感じられる気がします。


そっくりとはいえ、あのほとばしるような東福寺の荒々しさに比べると、こちらの方が
京焼と呼ぶに相応しい雅た趣にくるまれているような感じがします。


間口と奥行きは僅かな差がありますから、かろうじて正方でなく長方形となっています。




縁より垂れている釉薬は辰砂釉のようですが、長年の使い込みによって、釉薬の種類が判然としません。


光線のコントラストが強く見難いですが、縁の時代感はいわゆる本時代といわれるもので、人工的な付け時代とは異なります。


微妙に複雑に釉薬が変化しています。まさに登り窯の醍醐味といえるでしょう。


鉢底の時代感も申し分なく詫び寂びの極致といえるでしょう。




平安東福寺や平安香山も京焼きです。おそらくこれらの作風が初期の東福寺作品に強い影響を与えていることは間違いないであろう。



京焼の最大特色は、その多様な作風にあります。それを如実に物語るのは用いられる胎土の多彩さです。


この角度から眺めた雰囲気が平安東福寺そっくりですね。緑色の釉薬は東福寺の場合は広東釉(かんとんゆう)と表現されていますが、緑釉(りょくゆう)とも呼ばれています。



側面の角に沿った縦に黒づんだ部分があります。にわかに断定はできませんが、何分にも古いものなので釉(うわぐすり)の荒れを修繕しているかもしれません。
しかし例え何らかの手が加えられているとしても、決して鑑賞上の価値を損なうようなことのない高度な技術に支えられています。


幻想的で不可思議な発色がさらに魅力を増幅させるようです。


側面。


釉薬の変色や時代感からして平安東福寺よりも古い時代の作品とおもわれます。

 

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