2017年8月21日月曜日

雄山鉢真贋

最近手に入れた藤掛雄山鉢が
贋作であったというお話しをいたします

つい一ヵ月ほど前、しばらくぶりに立ち寄った親しい同業者から
分けてもらったものです

お店の床の間に置いてあったこの雄山鉢にお目にかかった当初は
かなり絵がまずいなあ、雄山としたら下位の作柄だなあ、と思ったくらいで大して関心は湧かなかったのですが

その後で何気なく聞いた値段がバカに安かったので
急に興味が湧いたのでした

商売人というのは卑しい生き物で(笑)、当たり前のものが当たり前の値段で売っていても
正直、ちっとも面白くは感じませんが、それが破格の値段となるとたちまち興味津々です

「安けりゃ絶対値切れ!」とばかりに
一生懸命に値切りにかかり

そして最後には
市価の三分の一まで値切り倒してしまいました

ところが、後になって振り返ってみると
この場合、普通取引の際に感じられる高揚感がまるでなしなんですね

そうなんです

盆栽屋が一番の幸せ感を感じるのは
自分の好みの商品を格安で仕入れられた時なんですが

金額にばかり目が向いている私は
一番に拘るべき品質には全く目を留めてはいなかったのですね

だから普段は感じられる喜びが
感じられるわけがありません

家に帰って冷静になった私の目には
この雄山鉢は、できの悪い偽物にしか見えなくなっていました

もちろん、これを売った同業者が悪いのではありません
彼ははっきりと、贋物だよねと言いながら安値を提示し、値切りにも応じた訳です

それを私が勝手に希望的な印象のもとで
自らの気に入った価格まで値切って商談したのは明らかです

だから皆様にここで私が言いたいのは、ものに安い高いはつきものだけど
もっとも大切なのは品質ですから、とにかく感動を伴ったいい買い物を心がけましょう、ということです


藤掛雄山・五彩外縁撫角長方  間口11×奥行き9.6×高さ3.8㎝

一見よくある雄山の五彩長方
ボディーの感じなどはまるで本物だ



正面の拡大図

アップで絵柄を見ると

1 真作に比べて描写力や筆致力などの不足が感じられる
2 青、赤、黄色など釉薬の鮮明さが物足りない
3 特に動物(馬)の描写に躍動感が感じられない


馬の描写が物足りないですね
雄山はこんな狐みたいな馬の顔描くかな?


反対正面

人物の配列にリズム感が感じられない


ボディーや土目からは贋作の匂いは希薄です


鉢裏と足の様子
落款からの決定的な判定も難しいと思われます

ですから、この鉢の場合は、雄山の通常作品における総合的な絵画力に重点を置いて鑑定した結果
真作とするには力量不足であると言わざるを得ないのです

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